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第510話 今の感謝
しおりを挟む「レイア、また少し城に参上しなくてはいけなくなった」
家の仕事が終わってから、ヴィンクスさんのお家にお邪魔するようになってしばらく経つけど。
どこかへ出かける時は、きちんと私に伝えてくれる。
少し遠出の場合だけど、お城に呼ばれるだなんて……本当にこの人は凄いランクの錬金術師様なんだって改めて思ってしまう。
でも、今は近くにいる事を許されているから……以前の憧れで終わってはいない。
「お仕事ですか?」
「……半分な。君のところにも売り出したい素材開発がうまくいってな。あれの提案などで、陛下から色々聞きたいと呼ばれたんだ。あと、ケントがその功績でランクがSになる」
「ケントさんが? 凄いです!」
私よりちょっと年下なのは聞いていたけど、あの若さでS? とても凄い事だ。それなら、師匠さんであるヴィンクスさんがいっしょにお城に召喚されるのも納得だわ。
「けどー、ロイズがランク認定忘れてたんでしょう? その時点でSだってあり得たのに」
奥から次の料理を持ってきてくれたのは、大精霊のジェイドさん。ヴィンクスさんと永久契約を結んでいるから……雑用は出来るけど、ほとんど完璧。
ケントさんのところにいらっしゃる、ラティストさんの弟さんだけど……創始の大精霊様同士なのに顔とか性格は全然似てない。食いしん坊さんのところは似ているけど。
「? ランクをつけ忘れてたんですか?」
「ああ。君も聞いたことはあるだろう? スバルの店自体はレイスの滞在場所になっていた。それをケントが取り込まれてたラティストを救出したことで……二人は永久契約を結んだし、ポーションパン屋も開くことが出来た。だが、営業許可証とかの事務手続きはしてたのに……ロイズは肝心の職業側のランク付けを忘れていたらしい」
「……そんなことが」
消されてしまった精霊から受けた、半分呪いのせいで目があまり見えていなかった私は……レイスの噂はぼんやりとしか知らなかった。だけど、ケントさんが来てくれたことで全部解決出来て……スバルが開業された。そして、リオーネの街だけじゃなくヒーディアの国内外にとっても有名で、美味しいポーションのパンが広まっていったのに……ギルドマスターって意外にお茶目さんだったのね?
「だから、功績に関わった私も同行することになった。数日かかるから……すまないな、デート出来る日はもう少し先になる」
「……いいえ。こうして会えるだけでも嬉しいですから」
目の見えなかった私を治してくれただけでなく、恋心を実らせてくれただけでも今は幸せだ。
近いうちに、改めてうちの両親に挨拶に行きたいと言ってくださったから……多分、その……そういうことなのだろう。
嫁の行き遅れの年代でもある私を気遣ってくれてかどうかは聞いていないが、『結婚』を考えてくれるだけでもすっごく嬉しいから。
生涯、目のことで誰もお嫁さんにしてもらえないと思ってたんだもの。
あの精霊は……私をそうしようとずっと動いてたようだけど、あの精霊には申し訳なさとかはもう感じない。
けど、ヴィンクスさんと結ばれるきっかけをくれたのだけは感謝していた。
とりあえず、功績の関係の『フィルム』と言うのはもう少ししたら出来上がるのでサイズが整ってからうちの店に卸してくれることは決まった。
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