スライムからパンを作ろう!〜そのパンは全てポーションだけど、絶品!!〜

櫛田こころ

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第493話 城では

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 実物のシリカゲル。

 マーベラスを主軸に作らせたそれは、砂よりも大粒の丸っこい結晶体だった。当然食えないし、宝石のような輝きはない。

 だが、こいつが一大事業に変わる大層な代物だとは……初見だけでは誰でも思わないだろう。


「陛下。シリカゲルを使用したものとそうでないポーションパンをご用意致しました」


 爺のギルハーツが、リオーネで調達してきたケントのポーションパン。

 それを使い、こちらでも実験してみることにした。昨日ロイズからも報告は受けたが……マジでやべぇ代物になったそうだ。だから、俺も今から見るわけだが……どんな仕上がりになっているか。

 確かめるために、袋もスバルのもんに入れたままのを開けてみることにした。右はシリカゲルの無しバージョン。

 取り出してみれば、食えなくはないがカピカピとなってしまったパンがあったぜ。爺に鑑定眼鏡を用意させ、鑑定したところ味もだがポーションとしての効能は無くなっていた。

 ここまでは、ロイズの報告にもあった通りだ。


「……こっちか」


 左の袋の中身を取り出したが、明らかに違いはわかった。

 変に潰れてもいないし、乾燥されていない。多少の劣化も覚悟していたが、数日前に確認したそのままのポーションパンがあったのだ。袋の底を確認すると、小さな麻袋に封入されているシリカゲル以外特に違いはない。

 これだけで……ポーションパンとしての維持も出来るのか。

 眼鏡で鑑定すれば、きちんと効能も維持出来ていたんだ。


「……素晴らしいですな」


 爺も見比べていたからな? その仕上がりを見て、いかにケントらが提案した異世界の産物が素晴らしいかをよく理解していた。


「だな。これが食材全部とまではいかんらしいが……革製品にも使用出来りゃ、ポーションパン以来の大革命が起きるぞ」

「そうですな。此度のレシピですが、マーベラス氏は特許をケント様とエヴァンス氏に譲りたいとのこととなっております」

「……あいつらしいな」


 二人が異世界の転生者であることは知らずとも……並々ならぬ知識の宝庫そのものだからな? 実現したのはマーベラスでも、ケントらの提案だったから譲ってもおかしくはない。

 ケント自ら、神に提案を持ちかけた一件だ。その事実を知ったら、作ることも拒否しただろうが……それは避けられてよかった。あいつ以上の鍛治師がホイホイいるわけないからなあ?


「……このシリカゲルですが、一定の使用回数を越えたら火で炒り……また使えるとのことです」

「どれくらいで、その処置が必要だ?」

「対象にもよりますが、一個のポーションパンですと五回ですな」

「なるほど。……試しに、ポーションじゃない普通のパンでもやらせてみろ。宮廷料理人らがびっくらこくぞ?」

「……かしこまりました」


 ポーションパンの流通もだが、他の貿易での食材輸送にも革命が起きれば。

 ケント……君にまた新たな勲章を贈らなきゃいけないのは、避けれないぞ?
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