412 / 603
第412話 本望からのキス
しおりを挟む
やはり。
俺の心は……間違っていなかった。
俺は、やはり。
この人間の少女を……欲していたのだ。人間で言う本能と同じように。
己の手で、消滅させた闇の精霊の事を言えないではないか。
想いを自覚した期間は、奴よりは短いが。
甘い香り。
優しいその匂いも。
柔らかな身体も。
芯の強いようで、実は控えめなその心と魂も。
その全てが……愛おしい。
ようやく出会えた……俺の番。
だが、ルカリア自身が受けてくれるかどうか。
その答えが……まだ、俺を想ってくれている心が残っているかどうか。
聞くのが怖くて、俺は彼女を強く抱きしめたままでいた。
「ら……ラティスト、様?」
困らせているのはわかる。
しかし……離したくはない。
俺と番えば、人間でなくなることも告げていない。
だけど。
どうしても。
俺は……この腕の中の存在を手放したくなかった。
さらに力を込めてしまうと、さすがにルカリアも苦しくなったのかくぐもった声を上げたので……致し方ないが、緩めた。
少し顔を覗いてみたところ、ルカリアは顔をトマトのように真っ赤にさせて……泣きそうな表情にさせていた。
その扇状的な顔つきに、俺はもう……耐えきれず。
「……好きだ。ルカリア」
端的な言葉で告げ、思うがままに彼女の唇を奪った。意識体を飛ばす時は緊急だったために、感触を味わう余裕はなかったが……今度は違った。
涙に濡れていたのか、塩気があっても柔らかな唇。
ずっと啄んでいたくなるが、まだ彼女からの言葉をもらっていない。
それに思い至って、すぐに離してやれば。
彼女は大粒の涙をポロポロとこぼしていた。嫌だったか……と小さな声で問いかけてしまったが、ルカリアは強く首を横に振って。
「お……お慕いしておりましたの。う、嬉しゅうございます!」
その答えが……胸に染み込んでいくようで。
俺まで少し涙が出てしまったが、気にせずにもう一度……ルカリアの唇に自分のを重ねたのだった。
俺の心は……間違っていなかった。
俺は、やはり。
この人間の少女を……欲していたのだ。人間で言う本能と同じように。
己の手で、消滅させた闇の精霊の事を言えないではないか。
想いを自覚した期間は、奴よりは短いが。
甘い香り。
優しいその匂いも。
柔らかな身体も。
芯の強いようで、実は控えめなその心と魂も。
その全てが……愛おしい。
ようやく出会えた……俺の番。
だが、ルカリア自身が受けてくれるかどうか。
その答えが……まだ、俺を想ってくれている心が残っているかどうか。
聞くのが怖くて、俺は彼女を強く抱きしめたままでいた。
「ら……ラティスト、様?」
困らせているのはわかる。
しかし……離したくはない。
俺と番えば、人間でなくなることも告げていない。
だけど。
どうしても。
俺は……この腕の中の存在を手放したくなかった。
さらに力を込めてしまうと、さすがにルカリアも苦しくなったのかくぐもった声を上げたので……致し方ないが、緩めた。
少し顔を覗いてみたところ、ルカリアは顔をトマトのように真っ赤にさせて……泣きそうな表情にさせていた。
その扇状的な顔つきに、俺はもう……耐えきれず。
「……好きだ。ルカリア」
端的な言葉で告げ、思うがままに彼女の唇を奪った。意識体を飛ばす時は緊急だったために、感触を味わう余裕はなかったが……今度は違った。
涙に濡れていたのか、塩気があっても柔らかな唇。
ずっと啄んでいたくなるが、まだ彼女からの言葉をもらっていない。
それに思い至って、すぐに離してやれば。
彼女は大粒の涙をポロポロとこぼしていた。嫌だったか……と小さな声で問いかけてしまったが、ルカリアは強く首を横に振って。
「お……お慕いしておりましたの。う、嬉しゅうございます!」
その答えが……胸に染み込んでいくようで。
俺まで少し涙が出てしまったが、気にせずにもう一度……ルカリアの唇に自分のを重ねたのだった。
20
お気に入りに追加
498
あなたにおすすめの小説
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
魔境に捨てられたけどめげずに生きていきます
ツバキ
ファンタジー
貴族の子供として産まれた主人公、五歳の時の魔力属性検査で魔力属性が無属性だと判明したそれを知った父親は主人公を魔境へ捨ててしまう
どんどん更新していきます。
ちょっと、恨み描写などがあるので、R15にしました。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~
Lunaire
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。
辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。
しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。
他作品の詳細はこちら:
『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』
【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】
『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】
『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』
【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】
女神様から同情された結果こうなった
回復師
ファンタジー
どうやら女神の大ミスで学園ごと異世界に召喚されたらしい。本来は勇者になる人物を一人召喚するはずだったのを女神がミスったのだ。しかも召喚した場所がオークの巣の近く、年頃の少女が目の前にいきなり大量に現れ色めき立つオーク達。俺は妹を守る為に、女神様から貰ったスキルで生き残るべく思考した。
魔境暮らしの転生予言者 ~開発に携わったゲーム世界に転生した俺、前世の知識で災いを先読みしていたら「奇跡の予言者」として英雄扱いをうける~
鈴木竜一
ファンタジー
「前世の知識で楽しく暮らそう! ……えっ? 俺が予言者? 千里眼?」
未来を見通す千里眼を持つエルカ・マクフェイルはその能力を生かして国の発展のため、長きにわたり尽力してきた。その成果は人々に認められ、エルカは「奇跡の予言者」として絶大な支持を得ることになる。だが、ある日突然、エルカは聖女カタリナから神託により追放すると告げられてしまう。それは王家をこえるほどの支持を得始めたエルカの存在を危険視する王国側の陰謀であった。
国から追いだされたエルカだったが、その心は浮かれていた。実は彼の持つ予言の力の正体は前世の記憶であった。この世界の元ネタになっているゲームの開発メンバーだった頃の記憶がよみがえったことで、これから起こる出来事=イベントが分かり、それによって生じる被害を最小限に抑える方法を伝えていたのである。
追放先である魔境には強大なモンスターも生息しているが、同時にとんでもないお宝アイテムが眠っている場所でもあった。それを知るエルカはアイテムを回収しつつ、知性のあるモンスターたちと友好関係を築いてのんびりとした生活を送ろうと思っていたのだが、なんと彼の追放を受け入れられない王国の有力者たちが続々と魔境へとやってきて――果たして、エルカは自身が望むようなのんびりスローライフを送れるのか!?
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
前世の記憶で異世界を発展させます!~のんびり開発で世界最強~
櫻木零
ファンタジー
20XX年。特にこれといった長所もない主人公『朝比奈陽翔』は二人の幼なじみと充実した毎日をおくっていた。しかしある日、朝起きてみるとそこは異世界だった!?異世界アリストタパスでは陽翔はグランと名付けられ、生活をおくっていた。陽翔として住んでいた日本より生活水準が低く、人々は充実した生活をおくっていたが元の日本の暮らしを知っている陽翔は耐えられなかった。「生活水準が低いなら前世の知識で発展させよう!」グランは異世界にはなかったものをチートともいえる能力をつかい世に送り出していく。そんなこの物語はまあまあ地頭のいい少年グランの異世界建国?冒険譚である。小説家になろう様、カクヨム様、ノベマ様、ツギクル様でも掲載させていただいております。そちらもよろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる