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第384話 弟子のポーションパン②

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「……心配かけて、ごめんなさい」

「……私達も書き置きを見ずにいたから、おあいこだわ」


 リトくんのポーションパンを食べる前に、きちんと親子間の和解をすることになりました。書き置きはあとで確認するにしても、リトくん無責任(?)な行動をしたわけじゃないからね? お母さん達にもよくわかってもらえたよ。

 お父さんのパーシーさんも入れて、三人で抱き合っていた。


(……家族、か)


 今の僕には、『肉親』はいない。

 前世ではきちんと家族はいたけれど、あの白猫ちゃんを助けたことで……僕は一度死んだ。

 イケメン神様いなかったら、この世界に転生出来なかったし……カウルやラティストに出会えなかった。それに、今は恋人であるエリーちゃんにも。

 だけど、時々……どうしても。

 何気ない家族の温かさを、求めてしまう時があるんだ。それは郷愁と言っていいだろう。求めたところで叶う願いではないけれど。


(……イケメン神様と夢で出会うとかってパターンもないし。あっちの家族が……僕が死んだことでどうなったかも聞けない)


 確認しようがないから、ここは仕方ないと受け止めておこう。

 それよりも、今をしっかり生きなくちゃ!


「皆さん。せっかくですから、リトくんの初ポーションパンを食べませんか?」


 ハグタイムが終わる頃合いを見て、僕はそう提案しました。


「え! ししょー、おかね出さなくていいんですか?」

「え?」


 なんでそんな方向に? と思ったけど、リトくんらの生活基準を考えたら、まだまだ日本人部分が多い僕の考えとは違う。

 なら、と僕は首を横に振ってやった。

 それにも、リトくんは目を丸くした。


「……いいんですか?」

「今回は体験教室……お試しだからね。無料でいいよ? 仕事とかについては、ロイズさんと相談してから決めるんだ。ちょっと難しいお話だから、リトくんは待ってて」

「はい!」


 元気な返事は素直な証拠だ。

 一番最初の弟子としては、頼もしい限りだ。初回でポーションパンを作れたのは、イケメン神様に与えられた【写しの指先】って特典のおかげもあるだろうけど。

 それでも、きちんと出来ていたからね。ここはせっかくだから皆さんで食べたい。

 僕が食べやすいように切り分け、ミニフォークも用意してから食べることになった。


「うんま!」


 エディが真っ先に食べて、すぐに声を上げた。ポーションの効能は出なかったけれど、このパンの効能には疲労回復とかがなかったからね。代わりに、ロイズさんがシュバって光ったけど。


「お? 腰の痛みが取れた」

「お疲れですか?」

「最近お前さんのパンが……オークションでも殊更盛り上がっているからな。ほとんど立ちっぱなしだ」

「……お疲れ様です」


 効能が高過ぎるのはオークション行きだからね。そっちから回ってくるお金のおかげで、材料の原価も気にせず、いい商品が作れていると思う。

 僕も、フレンチトーストを食べてみて……文句なしに美味しく感じた。だから、リトくんをいっぱいいっぱい褒めて……新しい一員を改めて迎えてあげたんだ。

 家族じゃないけど、新しい仲間が増えたんだから、それはとっても嬉しいから!
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