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第370話 覚悟は僕も
しおりを挟む「……す、スライムがしゃべった?」
リトくんは、ラティストにはびっくりしてなかったけど……カウルにはやっぱりびっくりしちゃったみたい。カウルは普段お店に出てこないから、見覚えがなくて当然。
おまけに、しゃべるスライムって珍しいからね?
「僕の獣魔だよ。カウルって言うんだ」
「……じゅーま? お兄さんの?」
「そう。僕の大事な家族なんだ」
怖くないよ~って誘導してあげると、リトくんは興味が出てきたのか触ってみたいって顔に出ていた。だけど、すぐに引き締めて、もう一度僕に向かって頭を下げたんだ。
「はじめまして、カウルさん!」
「! 初めましてでやんす。坊ちゃん、お客さんでやんすか?」
「ううん! お兄さんに弟子入りにきました!」
「へ?」
「……ケントに弟子入り?」
「……もうそろそろ、学舎が卒業しなくちゃだから……うちで働きたいんだって」
「はい!」
「「…………」」
まあ、カウル達も反応に困るよね!?
ちょっと予想してた!!
「……ケント、ケント」
ここで、さっきから少し黙ってたエディが手招きしてきたんだ。どうしたんだろう?
「……なに?」
「この坊主が本当に働けるのか、試験してやれば?」
「試験?」
「要は、お試しで仕事させればいいってことだ」
「えぇえ?」
オープンキッチンは見せなくちゃいけない大前提なんだよ!? この世界での普通のキッチンじゃないんだよ!!?
大丈夫かと思ったけど、エディはニヤって口元を緩めていた。
「度胸試しも必要だろ? 秘密を無闇に広めないって覚悟もなきゃな」
「……まだ子どもだよ?」
「ガキだからだ」
「……うーん」
エディは本業が王様だから、出鱈目なことは言わないでくれるけど……せっかくの逸材かもって子をこのままにしておくのも良くない。
幸い、今日はお店が休みだから説明する時間は山ほどあった。
「……お兄さん?」
リトくんの本気がどこまでか。
目では伝わってきても、心の中はどこまで備わっているかわかんないからね!
ここはもう、僕もうじうじしていられないや!
「リトくん。今から案内するとこを見ても……考えが変わらないか、僕に教えてほしいんだ」
だから、カウル達が不安がっていても、僕はリトくんをオープンキッチンの中へ案内することにしたんだ!!
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