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第367話 志願者の男の子

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 びっくりどころで済まない。

 いきなりやってきた男の子には見覚えがあったけれど。

 以前、ひとりでのお使いチャレンジで……風邪に効くポーションパンを買い来てくれた男の子。それ以降は、お母さんとかと何回も買いに来てくれた顔見知りではある。

 あるんだけど……いきなり、そんなこと言われるだなんて予想外過ぎたよ!?

 リトくん、どうしちゃったの!? 弟子入り志願って何!?

 まだ小学生の低学年くらいの男の子がだよ!?


「あ? なんだ? どーした?」


 エディも来てくれたんだけど、僕とリトくんを見て少し大きめの口笛を吹いたんだ。


「面白いことじゃないからね!?」

「いんや~? 十分に面白いことじゃねぇか?」

「……お兄さん?」

「ああ、ごめんねリトくん」


 謝ったところで、いきなり帰す訳にはいかないけど……オープンキッチンを展開させたままの厨房に入れるわけにはいかないから、外で話を聞くことにした。


「坊主。ケントになんか頼み事か?」

「うん!」

「そーかそーか」


 エディは……絶対面白がっている! さっきのリトくんの大声が聞こえていなかったわけじゃないのに!

 わざともう一度確認させるために誘導しているんだろう。それが良くないわけではないんだけど。


「えーと……リトくん?」

「はい!」


 僕が呼ぶと、エディに声をかけられた時より元気過ぎる反応だ。これは、さっき言った言葉の本気具合が衰えていないことだ。


「……僕に、弟子入りしたいって言ったけど。本当?」

「はい! ぼくをでしにしてください!!」

「……えーと……お母さんたちには?」

「まだ言ってません! お兄さんから、ごーかくをもらいたくて!」

「……うーん」


 単純なパン職人ならまだしも、僕が作るのは薬にもなるポーションパンを商品にしてるんだ。それに、秘密は色々ある。好奇心旺盛なこの年頃の男の子を、いきなり受け入れようにも……正直言って、荷が重い。

 だけど、いきなり突き返すのはよくないので……鑑定を使ってみることにした。



【『名前:リト=ラファート(八歳)』
『能力:軽業』
『特典:写しの指先(*)』

 *他の者が持つ能力をコピーして再現することが出来ます。


 →鑑定者の能力をそっくり真似が出来るということです】



 簡単なステータスではあったけど……とんでもない結果が出てきた!?

 慌ててエディに耳打ちすると、指を鳴らして喜び出したんだ……。


「ちょうどいいじゃねぇか?」

「……そうかもしれないけど」


 僕と少し縁が出来たから、イケメン神様が何かしたとも思っちゃうよ……。
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