スライムからパンを作ろう！〜そのパンは全てポーションだけど、絶品！！〜

第349話 サイドでは

　ケン兄さんは、表向きはのほほんとしているでやんすけど。

　あっしの隣にいる、ラティスト兄さんは違うでやんす。


(……無言が怖いでやんすよ)


　さっきから目を閉じ、壁にもたれている兄さんは……多分でやんすけど、『神の領域』に行っているらしいでやんす。

　前にも何度か……今回のように、ケン兄さんが生み出したポーションパンの効能が高過ぎた場合。『文句』を言いに意識体だけで行かれているようでやんすよ。創始の大精霊様だからこそ、出来る芸当でやんす。


(……エディはんへの贈り物とは言え、効能が高すぎるでやんすからねぇ？)


　あっしは、なーんも出来やせん。見守るだけしか出来んでやんす。今回は、補助に入っただけでやんすから……なーんも出来やせんのです。

　そうして、少し待つと、ラティスト兄さんのまぶたが開きやした。んで、思いっきり大きなため息を吐いたでやんす。


「……どうでした？」


　ケン兄さんらは向こうで話しているので、あっしが代わりに質問しやした。


「……うっかり、だそうだ」


　答えてくれたでやんすが、もの凄く息を吐くのが長いでやんすねぇ。よっぽど、神は兄さんを怒らせてしまったんでやんす。


「前もそんな言葉を聞いた気が？」

「あれは十分に美味いが、味をさらに改良したことで……我慢出来なかったらしい」

「……怒っただけでやんす？」

「……炎舞ははなった」

「……おおう」


『炎舞』言うんは、ラティスト兄さんの得意技でやんす。攻撃はもちろんでやんすが、『スバル』では種類によってパンの表面とかを炙るのに最適……と、ラティスト兄さんが提案してから使っていやす。大精霊の攻撃技を料理になど、はじめはあっしはたまげやしたが……慣れれば日常風景に溶け込んだでやんす。

　けんど、異常な火力なもんで……ケン兄さんにはいつも結界がお供でやんすよ。あっしは、特に溶けたりしやせん。不思議でやんすけど。

　ともかく、遠慮無しに神にお見舞いしたとなれば……哀れむしか出来やせん。ラティスト兄さんを怒らせたら、いかんのでやんすから。


「……次あったら、軽く炙る程度で済まさないとは告げておいた」

「……あい」


　ケン兄さんを第一に考えていらっしゃるからですねぇ。もちろん、獣魔であるあっしもでやんすけど。あっしは変身能力をいただく以来のアナウンスは聞いていやせんが……これ以上を望んでも、貰い過ぎでやんす。

　見放されたあの家族と違い、今は毎日が楽しいでやんすから！！