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第343話 再度尋問
しおりを挟む「なんで、そのままなんですか!?」
「……ごめんなさい」
また別のお休みの日に、僕はトラディスさんに呼ばれて喫茶店の個室にいる。
議題はもちろんの事、僕とエリーちゃんの今後のことだ。お師匠さん達のことがあったとは言え、プロポーズの件を停滞させてしまっていた。トラディスさんにもきちんと話したんだけど……まあ、理解はしてくれても動きがないのには納得してもらえなかったわけで。
「……エヴァンスさん達のことが、解決してからそこそこ経っていますよね?」
「……はい」
イケメンさんのドアップは怖いので、正直に頷きましたとも。
トラディスさんは、僕の態度を見て大きくため息を吐いたけど……呆れてはいない感じ? なのかな?
「……まあ、色々あったので仕方ないことは分かりました」
「……はい」
「けど、言うべきことはきちんと言いましょうね?」
「…………はい」
ここで、トラディスさんも~とか、言えたらいいけど。この人にはそういう相手がいないらしいからなあ。ちょっと悔しいけど、現実はそんなことなので頷くしかありましぇん!
「じゃ、話題変えますが」
「はへ?」
今日は僕へのお叱りだけじゃないの? とびっくりしてしまったけど、トラディスさんは僕の反応を見て苦笑いされたのだ。
「そろそろ、この国の祝典日じゃないですか? エリシオン陛下に、ケントさんは個人的に贈り物とか考えていますか?」
「……あー」
色々あって、ここのところすっかり抜け落ちていた事実。
マブダチで、王様のエディの誕生日。日本風に言えば、子どもの日に当てはまるんだけど……その日程がそろそろ近くなってきた。なのに、ラティストのことがあって、ラム酒シロップミニクロワッサンを改良しようかも忘れてた!?
「……その様子だと、やっぱり」
「……完全に忘れてたわけでは」
「大丈夫です。僕も、依頼こなすのに必死だったので」
「……お疲れ様です」
僕以上の、肉体労働が基本の冒険者さんだからなあ。トラディスさんの武器は、一部の人にしか見えないけどフランツさんってフランスパンの魔剣。今も壁に立て掛けてあるけど、柄は立派な装飾でも刃はフランスパンってユニーク過ぎる代物。今は眠っているから話しかけてこないが、ちゃんと生きてもいる不思議武器だ。
「僕も陛下にはお世話になっているので、きちんと用意したいんですよね」
「特に食べ物は何でも好きそうですけど」
「……想像しやすいですね」
「レイザーさんとかは?」
「んー。個人的には考えてそうですけど」
「じゃあ」
せっかくなら皆さんで一緒に作るのはどうだろう?
僕がいるから、ポーションパンとかになっちゃうけど……皆さんで、パン作りをするのは、いいことかもしれない。
と提案したら、トラディスさんがすっごく笑顔になってくださったんだ。
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