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第325話 簡単じゃない

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 お師匠さんとレイアさんが、無事に結ばれたことで事件は一件落着。

 お師匠さんの錬金術師としての、腕前がさらに上がったことも喜ばしいけれど、ひとつ大変なことが判明したのだ。


「ケントのポーションパンを定期的に食べていたせいか、ジェイドの加護以外にも特典が色々増えていたみたいだ」


 というお師匠さんの見解もあって、ますます僕のポーションパンがチートな食べ物だと決定したわけだ。じゃなきゃ、ジェイドの加護があってもお師匠さんが足止めだけであの精霊を止められるわけがなかったんだって。

 事件の事後処理のようなものも、ロイズさん達のおかげもあって穏便に終わりました……僕らの日常が戻ったところでお師匠さんが、スバルに来たのだ。


「……ますますチートですねぇ。ポーションパン」

「回復薬の流通はまだまだ安心は出来んが……今回のことも、陛下には通達済みだ。私もまた仕事が増えるだろうが」

「他の人もポーションパンが作れればいいですけど」

「それは無理だな」

「即答ですかー」


 まあ、たしかに。パン製造の技術はともかく、ポーションとしての効能が簡単の付与しちゃうと……回復薬の流通とかがもっとすごいことになるし、ごたごたで争いが増えてしまっていたかも。

 王様であるエディが頑張ってくれているけど……どこまで友好国や同盟国に協力してもらっているかわからない。忙しいからか、最近魔法蝶の連絡もこないし、お忍びも同じく。

 ちょっとだけ、心配だ。


「神が我々にどこまで期待しているかわからないからな。下手に製造者を増やしても、私利私欲で流通を悪化させたら良くない」

「……たしかに」


 能力を悪用しない存在……それは、絶対ないとは言い切れない。この世界は日本以上に犯罪などは多い。軽犯罪のスリとかはともかく……殺しなどが、平気で起きてしまうところだから。

 僕だって、ラティスト達が居ても……お城で狙われかけたもんね。そこを突いて、自分勝手に儲けようとする誰かが出てきてもおかしくはないんだ。


「ポーションとしてもだが、まずケントの技術が異常だからな」

「へ?」

「専門学生だったとは言え、腕前はほぼプロだ。売れるのは効能だけでないという意味だ」

「ありがとうございます?」

「もっと手放しに喜んでいいんだぞ?」

「いやー、まあ、美味しいのは嬉しいんですけど」


 二年弱とは言え、学校で基礎応用からみっちり仕込まれたから……売れなくないものは作れると自負している。校内の購買にも、安価で販売していたことはあったが……あれは授業の一貫だったし、僕以外の生徒も同じ。

 だったら、いい環境に恵まれていたのだろう。今も。


「ひとまず、リオーネ中心に流通の改善は成されているからな。私達は技術向上をするにしても、いつも通りにしていこう」

「そこが無難ですよね?」


 問題解決がすぐに出来るモノじゃないから……少しずつ頑張っていこう。

 お師匠さんは、取り置きのフィッシュバーガー以外にもジェイドと食べるお昼ご飯を買ってから帰って行ったんだけど……僕とエリーちゃんの事で聞いて欲しいのを思い出したので、慌てて引き留めた!
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