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第310話 大精霊の感心

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 ヴィンクスが恋。

 僕が焚き付けちゃったんだけど……自覚したら、ヒトの子って凄いね?

 自覚させてから、仕事は仕事でがんばってはいるんだけど。寝る間を惜しんで、あのレイアって女の子のために……呪いを解除するポーションの製造に勤しんでいるんだ。

 身なりをそこそこ気にしていたのも、どうでもいいと思うくらい。浮浪者一歩手前までなってたけど、ケントから『うすかわあんぱん』を譲ってもらってからは、また整えた。

 湯を浴びて、髭を整え。髪は自分じゃ出来ないから、僕が切り揃えてあげて。

 人間にしては、なかなかに男前が出来上がったよ。あのレイアもどっちのヴィンクスが好きになったかはわかんないけど……見た目もだけど、内側も大事だからね。多分、両方だと僕は思う。

 とにかく、今日もヴィンクスはうすかわあんぱんを鑑定のスキルで調べていたんだけど。


「……小豆。厄災を祓う……魔を祓うか」

「なーにそれ?」


 僕がご飯の支度でもしよっかなと思っていたら、ヴィンクスが不思議なことを言い出したんだ。で、僕に小豆を少し出してもらえないかと言うから……亜空間収納から数粒出してやった。


「私とケントのいた世界の……まあ、宗教のようなものだが。小豆には、魔を追い払うものだと謂れがあるんだ。となれば、神の都合でそのようなポーションが出来ても不思議じゃない」

「へー? 面白いー」


 まるで、異世界のポーションだと言ったら、ヴィンクスは違うと首を振った。


「まじないのようなものだ。確実性はない。だが……こちらではそれが実証されている」

「……なら、小豆を使ったポーションでも?」

「味も考慮して……小豆ミルクがいいだろうな」

「美味しいの?」

「癖はあるが美味い」

「へー?」


 とりあえず、一個の可能性が出来ただけでも良かったよかった。

 その後に、ご飯も食べてくれたし寝てくれたんだけど。

 兄さんから、途中念話でレイアのことを聞かれた時はびっくりしたね? なんでも、ケント達がヴィンクスとは別に動いて……レイアの呪いの根源を何とかしたいんだって。

 ヴィンクスは……愛されてるなあ?

 ひとりぼっちのように見えて、ちゃんと他にも助けをしてくれる存在がいるんだもん。

 僕は偶然、永久契約した相手だったけど……面白いし、一緒にいて飽きない。

 だから……僕も手助けはしよう。

 創始の大精霊の……一角として!


「僕の主を困らせるやつは……少しお仕置きしなくちゃだね?」


 諸悪の根源を……僕なりにも探そう。

 意識体を切り離して……僕は、まずレイアの店に転送させたのだった。
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