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第282話 子どもの心配

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 おこづかい。

 を持って、きたんだけど。


(……買えるかな)


 パン、だけど。

 ポーションの、パン。

 王様にも……すごいって認められて、おっきな紋章がつけられた……パン屋さん。

 前は、お化けの出る場所だったけど……いつのまにか、そのパン屋さんが出来て。

 みんな助けてもらってる。

 みんな買いに来てる。

 ぼくも、お母さんと一緒に来たことはあるんだけど。

 不思議な……不思議なパン屋さん。

 きれいなお兄さんも居て、きれいなお姉さん達がちょっとうるさいけど……ぼくらでも買えるパンを売ってくれている。

 けど、今日は……お母さんがいない。

 お母さんが風邪を引いちゃって。

 お父さんはぼくにいい子にしててって言いながら、仕事に行っちゃったんだけど。

 ぼくが出来ることと言えば……あのパンを買いに行くことくらいだ。

 たしか……ぼくが冬に風邪を引いた時に、買ってくれたパンがあった。

 あの……甘くて、とっても美味しいパン。

 すっごく前だから……どんなパンだったか、覚えてないけど。

 お店に行けば……お兄さん教えてくれるかな?

 きれいなお兄さんは、笑ってなくて……ちょっと怖いけど。

 でも……お母さんのためだもん!!

 ぼく、がんばる!!

 だから……パンがなくなる前に、ぼくはお店に向かって走った!!

 走って走って……転ばないように気をつけて。

 あのパン屋さんに行ったんだけど。


「……お、やすみ?」


 お店の前に、誰もいない。

 あったのは……『ごぜんおわりました』って看板があって。カーテンで中が見えない。

 ぼく……来ても、ダメだったの?!


「ふ……ふぇ……」


 お母さんの役に立てないことがわかって。

 涙が出てきた。

 とまんない……止まんないよぉ!?

 お母さんの風邪……治らないの?!

 悲しくなって……泣いていたら。

 後ろから、誰かに肩をとんとんされた。


「僕、どうしたの?」


 呼ばれたから、そっちを見たら。

 かわいいお姉さんがいたんだ。あと、かっこいいお兄さんも。


「……ふぇ」

「おつかいに来たの?」


 びっくりしたけど、涙が止まって。

 お姉さんの言ったことに……うんって言うと。


「親とかが怪我したんじゃねぇか? んで、ここに来たのか?」


 お兄さんがそう言ったから……ぼくはもう一回うんってした。


「……お母さん、風邪なの」

「そのために、ここに来たの? ひとりでえらいわ」


 お姉さんが今度は頭を撫でてくれて……うれしくなって、もう一回うんってした。


「今日は定休日じゃねぇし、作業はしてるだろ? シェリー、そいつと一緒に裏口行こうぜ」

「そうね、ジェフ」

「……シェリー、 にジェフ」

「ん?」

「お?」

「……シリウスの……風?」


 お父さんに何回か聞いた、冒険者のパーティーの人達。

 すっごい人達に会えた!?

 パン屋さんとも……知り合い?

 ケントって人は……よく知らないけど。
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