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第268話 精霊の里で

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 じゃじゃーん!!

 じゃじゃじゃ、じゃじゃーん!!


「お待たせ!! 父上達!!」


 僕は今日、ちょっとぶりに精霊の里に帰ってきて。

 ケントから預かっている『あんぱん』を全種類父上達に持ってきたんだ!!

 兄さんから、アズキを譲る時に言われたらしいからね?

 兄さんは、今日はパン屋の仕事があるから……ヴィンクスに頼んで僕が持ってきた。ヴィンクスの仕事はひと段落ついているらしいから。


「……ジェイドか」


 実家に行くと、兄さんそっくりの父上が返事をしてくれたんだけど。

 頬紅が。

 目が。

 そこは兄さんとも一緒だから……やっぱりわかりやすい。

 ケントのパンの美味しさの虜になっちゃったから……僕の帰省は半分お使いだからね?

 美味しいケントのポーションパンが来るとわかって、食べたい気満々なんだろう。


「あら、ジェイド? おかえりなさい」

「ただいま、母上」


 逆に母上は僕のように表情がわかりやすいから、今日もニッコニコだ。僕が逆に似たのかな?


「今日も何か持ってきてくれたの?」

「うん。兄さんにアズキ預けたでしょ? それでケントがたくさんパンを作ってくれたんだ」

「まあ、そうなの? お茶用意するわね?」

「ううん。合わせるのに、いい飲み物も預かっているんだよ」

「あら、そうなの?」

「最適な……?」


 とりあえず……食堂で父上達以外にも、創始の一族の一部が集まって。

 コーヒー牛乳もだけど……ほとんど見たことがない『アズキのパン』に、皆興味津々だった。


「「「これが??」」」

「甘くて美味しいんだよ! 僕らがいる国の王にも献上したし」

「「「豆が甘い??」」」

「まあ、塩じゃないのね?」

「とってもとっても美味しいんだー! 特に、ポーション効果もあの神からの付与はばっちし!!」

「「「おお」」」

「……その一部か」

「ケントは、他にも色々挑戦するらしいよ?」


 まだ試作段階らしいから、僕も食べていないけどね?

 コーヒー牛乳を母上と手分けして、ゴブレットに入れて。

 ひとり一種類ずつ皿に並べて。

 父上の合図で、食べ始めたんだけど。


(……ケントには、ちょっと言いにくいかなあ?)


 神秘的な存在として、人間とかには一応崇められている創始の大精霊達が。

 ケントのポーションパンを知ってからは、神秘性もかけらもない暴食集団になっているのを。

 まあ……本当にケントのパンは美味しいもん!!

 僕も、一個……今日はあんバターサンドから。

 ちょっと柔らかいバターとあんこがパンと一緒で美味しいんだよね?

 似た味わいだと……ヴィンクスと食べた、トーストにアイスを載せたのもだけど。あれも父上達に教えたら、争い起きそうだからやめておいた。

 とにかく、母上は違うけど……見ててやかましいよ!?
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