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第256話 マブダチの決意

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(いやぁ……納得納得、スッキリした!)


 ずーっと、疑問に思っていたことが……ケント自身が打ち明けてくれたことで、全部受け入れることが出来た。

 そりゃぁな?

『神』から転生を成されたことでの……常識知らずな部分もだが、ポーションパン製造の実現化をなんなくこなすとは。

 ケント自身の人柄もだが、魂の清廉さもあってこそだろう。でなければ、創始の大精霊と契約を結べるわけがない。

 俺は、空になったグラスを手に……ケントらに与えた部屋から出た。

 色々忙しくなるからなあ? 『明日』から。

 なら、今晩くらい……ちょいとでもマブダチと語り合いたい。爺やに頼んで、少しばかりその時間を作ってもらったんだ。


「……ギル、聞いてた通りだ」


 俺が廊下の途中で呟けば、爺やであるギルハーツが暗部の服装で上から降りてきた。


「……誠でしたか」


 ラティストあたりは気づいていただろうが……念のため、護衛として天井裏とかに忍ばせていた。だから、後付けの理由として……ギルに言っていいかと提案したのだ。


「お前も感じてた疑問、全部吹っ飛んだだろう?」

「……ええ、はい。ラティスト様がいらっしゃる時点で、虚偽の心配はいりませぬから」

「だから、ケントの必死の言い分も真実。俺は、マブダチの言うことを信じる」

「……はっ」


 俺を信じて……打ち明けてくれたんだ。

 その勇気を踏みにじるようなことはしない。

 王としてもだが……ケントのマブダチとしても。

 裏切りたくない。

 王になってもだが、それ以前でも……初めてじゃないか?

 誰かを……ひとりの人間を、ここまで信じようと思ったのは、ギル達はともかく……初対面の相手にはなかった。

 なんだかんだ……ほとんどの連中は、『俺』に媚を売ろうとする鬱陶しい奴らばかり。ディルと娘のルカは例外だが……ほとんどと言っていいくらい、信頼出来んかった。

 そんな疑り深い俺を……ケントが変えてくれたんだ。ふざけた態度の『風魔のエディ』としても……俺をただの人間として見てくれる。

 国王と知っても……ほとんど態度を変えてこなかった。

 だからこそ……俺も応えよう。

 王として。

 友として。


「リオーネだけじゃねぇ……世界を変えてやる!」


 神が成せないでいる、回復薬の正しい流通。

 ケントのポーションパンをきっかけに、錬金術も変わるのであれば。

 俺と……ケントの力で変えていこうじゃないか?

 それくらい……王としての権限をフル活用するのは、苦じゃない!!

 爺やと打ち合わせをしている途中、また奇襲はあったが……全部、雷と風の魔法で捕縛したぜ!!
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