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第242話 王の決め事

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 陛下は、実に楽しそうでいらっしゃいますな?


「……ケントのパンが食える~!!」


 書簡などの整理を、意欲的にしていらっしゃいます。先日……リオーネに私めでもなく、使者を派遣されるのでもなく……ご自身・・・で召集の手紙をお持ちになられ、ケント様にお渡しされた。

 そのお帰りから……執務をかなりこなしていらっしゃるのです。お顔が緩んでいらっしゃいますが……実に嬉しそうですな?

 ケント様のポーションパンが食べられると言うこともありますが。


「……陛下。ケント様には……打ち明けられるのですかな?」


 次の書簡を置きますと、陛下は緩みきっていたお顔を整えられました。


「いい機会だ。ケントなら……俺を受け入れてくれるだろうってな!」


 実に良い笑顔ですな。

 たしかに……ケント様は素晴らしいお方です。市民……ではありますが、物怖じせずにどのような客の前でも堂々としていらっしゃる。

 陛下が『エディ様』に変装されても……全く、陛下とはお思いになられないようですが。もしくは……陛下の御顔をご存知ないか?

 陛下がお調べされても……辺境の出と言うことしかわかっておりませぬ。

 そのような人間が、ヴィンクス殿の一番弟子。

 さらには、美味なるポーションパンの製造を可能とされた。

 懸念事項は多いですが……あのように、人当たりの良い笑顔を見ますとつい受け入れてしまいます。詮索が馬鹿馬鹿しくなるくらいに。陛下も……おそらく同じでしょう。


「……そうですな。ケント様でしたら、大丈夫だと私めも思います」

「爺も会ってわかってんだろ? ケントは……ほとんど裏表のない男だ。いくらか優し過ぎる部分はあるが」

「……ええ」


 分け隔てなく……お優しい笑顔を向けてくださるのですから。

 それが……腐った貴族連中を押し除け、陛下を改革の道へと歩ませて下さった、きっかけをお与えになられた方です。

 まだ完全ではありませぬが……そのような貴族の差し金も燻っているでしょう。

 召集の際には、警備を万全にせねば!!


「あ、爺。警護にはイシュラリアの令嬢を招き入れる」

「!? 何故ですか!?」

「……情報仕入れられて、自分から志願してきた」

「ご令嬢ですぞ!?」

「ラティストが来るとなれば、自分を使えって……脅されたぜ」

「……なんと」


 ひょっとしたら、創始の大精霊かもしれない……美貌のパン屋の店員。

 ケント様の契約精霊かもしれない、そのような方に懸想されるとは……無理もないと言いますか。とりあえず……玉座が破壊されないと良いですが。あの方はお父上の伯爵よりもお強いですから。

 ああ……私めの胃痛が、再び起こりそうですな。
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