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第230話 居心地の良さ

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 いや、俺の提案ってのもあったけど。

 ケントは……どんどん俺の知らないパンを作っていく。

 ただでさえ、美味そうなパンを……カレーパンとは違って、出来上がっているものをさらに揚げてしまう?

 そんなパン……おそらく、どこの同盟国や友好国でも知る者はいないだろう。

 なのに、ケントはいとも簡単に実現していくんだ!!

 出来上がった……『メンチカツバーガー』の揚げたものを切り分け、ヴィンクスらと口にするんだが。

 多少冷めていても、まだ温もりのあるそれを……俺は、迷わずに口に入れた!!


(……うっま!?)


 サクっともしてるけど、噛むとザクザクもしてて。

 生産ギルドから、出来るだけ質の良い油を購入してるだろうから油の質も良いが。

 噛んだ瞬間、パンのふわっと加減も残っているのに……少ないが、メンチカツにもまだ肉汁がきちんとあって……口に広がっていく!!

 独特なソースもいいが、マヨネーズがしっかりあるのも良い!!

 ひと口じゃ足りねぇ……もっと食いたい!!

 けど、今回が試作だからなあ?

 俺との謁見があるまで……ケントなら、何回も試作を繰り返しそうだ。マブダチだから、ケントの妥協の無さは理解しているつもりだ。


「「美味い!!」」

「美味しー!」

「でやんす!!」

「……これはいいな」

「揚げ加減が難しいところだけど」


 ポーションパンとしても成立してんのに、やっぱりケントはまだ満足していないときた。

 ヴィンクスと効能をステータスで確認してるようだが、俺も一瞬身体が光って……ちょっと眠かったのがスッキリした。相変わらず、効能がユニークだよなあ?


「腱鞘炎と……酒飲み過ぎで注意せねばならん臓器への改善? 相変わらず凄いな?」

「決まった効能ってないですよねぇ?」


 作るものは同じなようで違うが。

 こう言う光景を見ていると……やっぱ、ヴィンクスの方が師匠にきちんと見える。

 出不精に、外見を気にしなかった野郎の……随分とした様変わりだ。俺にですら、見た目を直そうとしなかったのに……どこでケントと出会って、師弟関係まで結んだんだ?

 気になるが……多分答えてくんねーだろうなあ?


(ま、いっか? ケントはケントだ)


 俺と謁見することで……『エディ』を『エリシオン』と気づくかもしんねーが。

 ケントのような人間なら……多分、そこまで態度を変えないと信じている。

 まだ出会って数ヶ月だが、俺なりにケントの人と成りを信頼しているのは本当だ。

 爺とかに、ケントの素性を調べさせようと提案もしかけたが……それだと、国王としちゃダメだが…… 『エディ』としては嫌だった。

 マブダチの信用を失いたくなかった。

 とりあえず……多分創始の大精霊であるラティストも居るし。

 なんでか、いつのまにかヴィンクスにも……大精霊ぽいのが契約精霊になってるけど。

 この楽しくて落ち着く場を壊したくはないんだよな?

 俺も……『エディ』でいられるし!!
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