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第206話 哀しい夢

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 お見舞いに来ていただき……なんだかんだ、エリーちゃんとのデート計画も進行してしまいましたが。

 頭痛と咳が、ひどくなってきたので……ラティストの判断でエディ達には帰っていただき。

 僕は咳をコンコンではなく、ゲホゲホ言いながら……お布団に篭りました。

 めちゃくちゃしんどい!!


「ゲッホゲホ!!」

「に、兄さん! 大丈夫でやんすか!?」

「だ……じょぶ。せ……きだけ、ゲホゲホ!」

「……エリーのことは一旦忘れて休め」

「……う、ん」


 ラティストに氷枕とかは変えてもらって……一旦寝ることにしたんだけど。

 夢を……見たと思う。

 リオーネの街並みの中に、僕は歩いていたんだ。

 その先に見えたのが。

 エリーちゃんが、誰かかっこいい男の人の腕を組んで……楽しそうにしているところだった。

 それを見て僕は……思った以上に、心にぽっかりと穴が空いた感覚になり。

 目からは、これでもかと涙が溢れてきたんだ!!


『……や、だ。嫌だ!』


 エリーちゃんとは、たしかに……友達だけど。

 僕の、ポーションパンを……最初に食べてくれた女の子だけど。

 明るくて元気で、僕をいつも笑顔にしてくれる……大切な人だ。

 その隣に立つのは……僕以外嫌だ!

 知らない人の隣で……あんな笑顔をして欲しくない!!

 僕は走って走って……エリーちゃんに追いつこうとしたんだけど。

 遠ざかっていくばかりで、追いつけない。

 僕は……大切な人の隣に立っちゃいけないの?

 ダメなの?

 泣いて泣いて……辛い気持ちだけが体を蝕んでいくと。意識が……違うところに行った。

 目を開けたら……カウルが泣いていたんだ。


「大丈夫でやんすか! ケン兄さん!!」

「……カウル?」

「寝ながら泣いていたでやんすよ!!」

「……ぼ、く」


 何か……とても、哀しい夢を見た。

 それしか覚えていない。

 夢って……忘れやすい事だから。

 そう言って、涙のようなものを流しているカウルを撫でて、落ち着かせてあげた。


「……びっくりしたでやんす」

「……ありがとう。大丈夫」


 ちょっと、氷枕がぬるくなってきたので……カウルに交換をお願いしようとしたら。

 扉が開いて、ラティストがお盆を持って入ってきた。

 パン粥かな? と思ったら……熱々のトマトシチューだった。


「……食べられそうか?」

「うん! ちょっとだけ咳も落ち着いたみたい」

「……泣き痕が凄いな」

「うーん。夢だったんだろうけど、あんまり覚えてなくて」


 あの哀しさは……なんだったんだろう?

 とりあえず、ラティストが作ってくれたシチューはとっても美味しかった!!
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