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第183話 好評だが

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 新しいクロワッサンは……めちゃくちゃ大好評だった。


「「「「「追加、ない!?」」」」」


 と、常連のお客さんが……年齢関係なくお問い合わせしてくるくらいには。


「ちょ、ちょっと……材料がないので」


 余り生地のギリギリの使い方をしているので……カウルに頑張ってもらえれば、生地自体は新しく作れなくもないし……出来立ても出来る。

 けどけど、僕は荒稼ぎするつもりは毛頭ない。

 ポーションパンを、この世界に広く伝えていくのが……僕の、イケメン神様の願い。

 その真意は伝えられないけど……良いこと悪いことくらいの区別はつけなきゃ。


「「「「「……えぇ~……」」」」」


 お客さん達も、僕の性格を少しでも知ってもらっているからか……僕の『難しい』をよくわかってもらえそうだった。


「あんなサックリして」

「しっとりもしてて」

「濃厚な味わいで」

「中身が蕩けるのもあって」

「レパートリー多くて」


 などと、絶賛してくださるのは嬉しいけど……無理は良くない。

 あくせく働くのは嫌いじゃないけど……転生した僕は、未熟でも『経営者』だ。

 ラティストやカウルの体調を崩してしまうくらい……働かせるのは、良くないからね?

 だけど……午後の仕込みで多めにしようとは決めたよ?

 告知すると、予約殺到になるから……あえて言わないでおくが。午後に来店するお客さんも多いからね?

 気合いを入れて、作らなきゃ!


「ケント!! ちょっと教えて!!」


 仕込み途中に、ちょっとぶりにエリーちゃんと会えた!?

 気持ちを自覚してから……ちゃんと会ったんだけど、やっぱり綺麗で可愛い。

 目も大きいし、口はちっちゃいし。

 まつ毛長いし、顔はきつめだけど……綺麗で可愛い。

 やっぱり……僕、好きになっちゃってたんだ。


「久しぶり。どうしたの?」


 とは言え、いきなり告白するような勢いは……僕にはないけどね。

 僕が質問すると、エリーちゃんは両手をぶんぶんと振ったんだ。


「街中で騒ぎになってるわよ!! 今までの中でもとびきり美味しいんだって!! なに? 新作また作ったの!?」


 興奮冷めやらない彼女を、僕はまあまあと落ち着かせるために。

 収納魔法に入れっぱなしになっていた、エリーちゃんの分のクロワッサンを出すことにしたんだ。


「エリーちゃんの分の、新作達だよ」


 調理台の上に並べると、エリーちゃんの表情はどんどん明るくなっていく。


「いっぱい! 可愛い形もあるわ!! これ……全部、ポーションパン?!」

「普通のパンじゃなくて……クロワッサン生地で作ったから、サクサクしたのが多いよ?」

「た、食べていいの?」

「もちろん、エリーちゃんの分だから」


 試食がちょっと遅くなったけど……喜んでもらえてなによりだ。
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