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第182話 女の子の悩み
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最近……なかなかケントと出会えない。
理由はわかり切っている。あたしの方で……用事がめちゃくちゃあるからだ。
冒険者稼業の本業に加えて……友人であるシェリーのランク昇格試験への訓練の手伝いとか。
これが意外と忙しいのだ。
「……エリー? 元気ないね?」
その日の訓練が終わったところで……シェリーから心配そうに声をかけられた。ちょっとそっちを向くと……さらに彼女を驚かせてしまったのか、ぎょっと目を丸くされた。
「だ、大丈夫!? 顔色悪いよ!?」
「……平気。体調が悪いわけじゃないし」
「……悩み?」
「…………まあ」
この子になら……話していいわよね?
口固いし……パーティーメンバーの男達にも、簡単に言うこともないだろうし。
なので、彼女が借りてる宿の部屋に移動してから……ぽつぽつと伝えることにしたわ。
「あ、やっぱり。ケントさんのこと好きだったんだ?」
どうやら……シェリーにはバレバレだったみたい。
絶対、あたしの顔は真っ赤だろうけど……シェリーはくすくす笑っても、バカにする様子じゃなかった。
「……そんな、わかりやすい?」
「だって。エリー、ケントさんと話す時良い顔してるもん」
「…………うん。胸があったかくなる」
「それが滲み出ているんだよ。……告白しないの?」
「…………友達はともかく、女として見られてないかも」
「それはわかんないじゃない?」
シェリーも、自分が恋人のジェフにそう思われていたかわからないって悩んでたから……似た状況のあたしには痛い言葉だ。
実際は違うようだったし……今では、周囲が砂糖吐くくらいの甘々カップルだものね?
「……ケントは、パン屋で忙しい……し」
「けど、会いに行かない理由にはならないわよ?」
「……うぅ」
これじゃあ、ケントに顔を合わせ辛くて逃げているだけだ。
けど……言ったら、せっかく築いた『友達』の関係が壊れてしまうのが、怖い。
シェリーには言っていないが……神の導きで異世界から転生して、回復薬の流通の改革を促している……実は凄い人物。
ほんの少しずつ……このリオーネを中心に、変わりつつあるのだ。生産ギルドでのオークションの内容も変わるくらい。
ケントは……凄い男なのだ。
あたしなんかが……隣に立っていいわけがない、とシェリーに話すまでは思っていたけど。
(…………ケントの笑顔、近くで見ていたい)
あの年末の宴会で、再確認した気持ち。
それを経て、膨らんでいく気持ちを……破裂しないようにするのが日々大変で。
ケントに言えば……解決しそうでも。
やっぱり、『女』として見てないと言われるかもしれないのが……怖いのだ。
「大丈夫よ、エリー? ケントさんは他人を蔑ろにしようとする人じゃないの……あなたが一番知っているでしょう?」
「……うん」
けど……片想い歴が長かったシェリーに言われると、説得力があった。
冒険者としては、あたしの方がランクが上でも……人の中身をそれで決めつけてはいけない。
やっぱり……同性の友達、いいものね?
シェリーのお陰で……少しだけ、気分が良くなってきたわ。
理由はわかり切っている。あたしの方で……用事がめちゃくちゃあるからだ。
冒険者稼業の本業に加えて……友人であるシェリーのランク昇格試験への訓練の手伝いとか。
これが意外と忙しいのだ。
「……エリー? 元気ないね?」
その日の訓練が終わったところで……シェリーから心配そうに声をかけられた。ちょっとそっちを向くと……さらに彼女を驚かせてしまったのか、ぎょっと目を丸くされた。
「だ、大丈夫!? 顔色悪いよ!?」
「……平気。体調が悪いわけじゃないし」
「……悩み?」
「…………まあ」
この子になら……話していいわよね?
口固いし……パーティーメンバーの男達にも、簡単に言うこともないだろうし。
なので、彼女が借りてる宿の部屋に移動してから……ぽつぽつと伝えることにしたわ。
「あ、やっぱり。ケントさんのこと好きだったんだ?」
どうやら……シェリーにはバレバレだったみたい。
絶対、あたしの顔は真っ赤だろうけど……シェリーはくすくす笑っても、バカにする様子じゃなかった。
「……そんな、わかりやすい?」
「だって。エリー、ケントさんと話す時良い顔してるもん」
「…………うん。胸があったかくなる」
「それが滲み出ているんだよ。……告白しないの?」
「…………友達はともかく、女として見られてないかも」
「それはわかんないじゃない?」
シェリーも、自分が恋人のジェフにそう思われていたかわからないって悩んでたから……似た状況のあたしには痛い言葉だ。
実際は違うようだったし……今では、周囲が砂糖吐くくらいの甘々カップルだものね?
「……ケントは、パン屋で忙しい……し」
「けど、会いに行かない理由にはならないわよ?」
「……うぅ」
これじゃあ、ケントに顔を合わせ辛くて逃げているだけだ。
けど……言ったら、せっかく築いた『友達』の関係が壊れてしまうのが、怖い。
シェリーには言っていないが……神の導きで異世界から転生して、回復薬の流通の改革を促している……実は凄い人物。
ほんの少しずつ……このリオーネを中心に、変わりつつあるのだ。生産ギルドでのオークションの内容も変わるくらい。
ケントは……凄い男なのだ。
あたしなんかが……隣に立っていいわけがない、とシェリーに話すまでは思っていたけど。
(…………ケントの笑顔、近くで見ていたい)
あの年末の宴会で、再確認した気持ち。
それを経て、膨らんでいく気持ちを……破裂しないようにするのが日々大変で。
ケントに言えば……解決しそうでも。
やっぱり、『女』として見てないと言われるかもしれないのが……怖いのだ。
「大丈夫よ、エリー? ケントさんは他人を蔑ろにしようとする人じゃないの……あなたが一番知っているでしょう?」
「……うん」
けど……片想い歴が長かったシェリーに言われると、説得力があった。
冒険者としては、あたしの方がランクが上でも……人の中身をそれで決めつけてはいけない。
やっぱり……同性の友達、いいものね?
シェリーのお陰で……少しだけ、気分が良くなってきたわ。
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