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第173話 レシピ帳の魔導具

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 カウルが選んだ、ロイズさんのプレゼントは……燻製肉や野菜の詰め合わせだったので、カウルは手放しに喜んでいた。

 僕のは分厚い本だけど……開いてみると、ページじゃなくて少し凹みのある箱のようだった。


「……エリーちゃん、これなーに?」

「魔導具の一種よ」

「魔導具?」


 聞き返すと、エリーちゃんはロイズさんにお願いして紙とペンを借りた。


「たとえば……適当な紙に文字を書いて」


 それを適当に折って、凹みの部分に入れて……閉じる。

 一瞬光ったら……エリーちゃんは蓋を開けたはずなのに。箱は分厚い本になっていたんだ! ページには、エリーちゃんが書いた文字だけしか記入されていなかったけれど。


「自分の記憶だけじゃ、必要な時に思い出しにくいでしょう? でも……ずっと書くのも疲れるし、引き出すのも大変。それがこの『引き出し辞書』を使えば、楽に出来るのよ!!」

「……日記に使うの?」

「そう言う場合もあるけど、ケントの場合じゃ『レシピ』じゃない?」

「おお!」


 携帯やパソコンがないから……スムーズに取り出し可能な電子ツールみたいなものかな!?

 エリーちゃんの説明によると……ページ数はほぼ無限らしい。

 こんな便利アイテムがあっただなんて!!

 すぐに、僕も何枚かレシピを書き出し……エリーちゃんに教わりながら辞書に入れていくと!!

 ちゃんとレシピがページに記されていたんだ!!


「……気に入ってくれた?」

「もちろん!!」


 こんな素敵なプレゼント、嬉しくないわけがないもん!!


「……よかった。今回はケントもいるし、こう言うのが良いかなって思ったのよね」

「素敵なプレゼントだよ、エリーちゃん!」

「……ケントもありがとう」


 本当に……お互いがお互いのプレゼントをたまたま交換出来たとは言え、いいプレゼントとの出会いになったね。

 そこからは、ロイズさんが選んだお師匠さんのプレゼントであるお酒を皆で酔わない程度に飲み。

 料理も……あらかた無くなったところで、忘年会は一度終わりを迎えることになった。

 エリーちゃんもだけど、カウルやラティストまで眠っちゃったんだよね?

 エリーちゃんはご実家住まいらしいけど、今日はここで飲み明かすつもりだったようだから……ロイズさんが仮眠室のエリーちゃんを寝かせに行きました。

 ラティスト達は、その辺でごろ寝だったけど。


「ねぇねぇ、ケントちゃん?」


 僕がラティスト達に毛布をかけると……ルゥさんが意味深な笑顔で僕に声をかけてきた。


「はい?」

「ケントちゃんは~、『恋』してるんじゃないかしらん?」

「え?」

「エリーちゃんによん!」


 いきなり何を……と、僕は顔が熱くなったんだけど。

 エリーちゃんの名前を出されると……さらに、心臓がバクバク鳴り始めたのだ!?


「なんだ。ケント、今まで自覚無しか?」


 お師匠さんにもそう言われちゃったぁ!?
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