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第158話 変わる日常②
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『スバル』に向かえば、少しだけ列が出来ていた。
シェリーと一緒に走ったお陰で、一巡目には間に合ったみたいね?
警護担当をしているギルアには、目が合うと軽く手を振られた。あいつも、だいぶ警護が板についてきたって感じだわ。
「おはよ。だいぶ、傷も消えたじゃない?」
「ああ、おはよ。ほんと、ケントのお陰だ」
最初は少し強引にケントへパンを譲ってくれないかって、わざわざ聞き出そうとしていたくらいだもの。今じゃ、ギルマスにも認められるくらいの信頼を得ている。
異名にもなってた顔に以外にも走ってた傷だけど……少しずつ、ケントのポーションパンのお陰で消えつつある状態。
いきなり出来た傷とかは、すぐに完治するけど……時間が経ったものや、もともとの体質とかはそうはいかないらしい。
これも、ラティストが神に抗議した結果かもしれないが……万能過ぎたら、ケントがもっと狙われるかもしれないわ。
万引きはしょっちゅうだけど……糞貴族どもが、いつケントを囲おうと狙う機会があるか。あたしも出来るだけ気をつけているけど……あの一件以来。
特に、イシュラリア伯爵が来てからは……ぜーんぜん、そんな事件も無くなったわ。さすがは……陛下直属の部下であるあの伯爵の影響ね。『来訪』だけで、これだけ穏やかな日常があるんだもの。
そうこうしている間に、ケントが出てきて……開店の合図を出してくれたわ。
あたしはエリーと頷き合い、ケントに手を振った。彼からも見えていたのか、すぐに笑顔で振り返してくれた。その笑顔に……心がくすぐったくなった。なんでかしら?
「エリー? 行こうよ」
「あ、うん」
シェリーに声をかけられたので、すぐに我に返り……順番になったら、店に入ることにした。
中は、焼きたてなどのパンの匂いに満ちて……幸せな空間となっている。しょっちゅう来るけど、この瞬間はいつもうっとりしてしまいそうになるわ。
「あ、エリー! 新作あるよ!」
「ほんと?」
トレーとトングを取りに行っている間に、シェリーが見つけてくれたようだ。
その棚に行くと……あったのは、『キノコのシチューパン』と言うのだったわ。
「効能……裂傷・擦り傷完治。腰痛・腹痛にも即効性有り。……買ってみる?」
「そうね。相変わらず凄い効能だわ」
師匠になった、ヴィンクスさんのポーションよりもはるかに凄い効能ばかり。
薬品じゃないから、亜空間収納とかに入れておかないと効能の味も劣化しちゃう欠点はあるけど……それでも凄いわ。
ポーションを『食事』にしちゃうんだもの。
シェリーと一個ずつトレーに乗せてからは、それぞれ欲しいものを選んで行き。
会計のカウンターに行けば、今日もラティストが他の女冒険者達に囲まれていたわ……。
「ね、ね? 今日こそいいでしょー?」
「あたしが先よ!」
「私もいるわ!!」
毎度毎度、飽きないことで。
あの朴念仁ぽい創始の大精霊が、見た目とかで靡くわけなんてないのになあ? と言うか、会計したい客の邪魔してるだけって、いい加減自覚しないのかしら?
「……………………邪魔だ。失せろ」
ほぉら、こっわい威圧来たわよ~?
あたしは慣れてきたけど、隣に居るシェリーや他の客とかはビビっちゃうくらいに肩を震わせたわ。
女達も背筋を伸ばして……さっさと帰っちゃった。ああ言われるのに……毎度毎度言い寄るのは、懲りてない証拠ね? 逆に感心しちゃうけど。
「……ラティスト、いいかしら?」
あたしは、この大精霊については……今は見慣れてきてるから、美しいとは思うけど一定以上の好意はないのよね?
中身が大食いだからって、知っているから?
彼は、あたしが声を掛けると……何故か、待つように言って裏に居るケントを呼びに行ったのよね?
シェリーと一緒に走ったお陰で、一巡目には間に合ったみたいね?
警護担当をしているギルアには、目が合うと軽く手を振られた。あいつも、だいぶ警護が板についてきたって感じだわ。
「おはよ。だいぶ、傷も消えたじゃない?」
「ああ、おはよ。ほんと、ケントのお陰だ」
最初は少し強引にケントへパンを譲ってくれないかって、わざわざ聞き出そうとしていたくらいだもの。今じゃ、ギルマスにも認められるくらいの信頼を得ている。
異名にもなってた顔に以外にも走ってた傷だけど……少しずつ、ケントのポーションパンのお陰で消えつつある状態。
いきなり出来た傷とかは、すぐに完治するけど……時間が経ったものや、もともとの体質とかはそうはいかないらしい。
これも、ラティストが神に抗議した結果かもしれないが……万能過ぎたら、ケントがもっと狙われるかもしれないわ。
万引きはしょっちゅうだけど……糞貴族どもが、いつケントを囲おうと狙う機会があるか。あたしも出来るだけ気をつけているけど……あの一件以来。
特に、イシュラリア伯爵が来てからは……ぜーんぜん、そんな事件も無くなったわ。さすがは……陛下直属の部下であるあの伯爵の影響ね。『来訪』だけで、これだけ穏やかな日常があるんだもの。
そうこうしている間に、ケントが出てきて……開店の合図を出してくれたわ。
あたしはエリーと頷き合い、ケントに手を振った。彼からも見えていたのか、すぐに笑顔で振り返してくれた。その笑顔に……心がくすぐったくなった。なんでかしら?
「エリー? 行こうよ」
「あ、うん」
シェリーに声をかけられたので、すぐに我に返り……順番になったら、店に入ることにした。
中は、焼きたてなどのパンの匂いに満ちて……幸せな空間となっている。しょっちゅう来るけど、この瞬間はいつもうっとりしてしまいそうになるわ。
「あ、エリー! 新作あるよ!」
「ほんと?」
トレーとトングを取りに行っている間に、シェリーが見つけてくれたようだ。
その棚に行くと……あったのは、『キノコのシチューパン』と言うのだったわ。
「効能……裂傷・擦り傷完治。腰痛・腹痛にも即効性有り。……買ってみる?」
「そうね。相変わらず凄い効能だわ」
師匠になった、ヴィンクスさんのポーションよりもはるかに凄い効能ばかり。
薬品じゃないから、亜空間収納とかに入れておかないと効能の味も劣化しちゃう欠点はあるけど……それでも凄いわ。
ポーションを『食事』にしちゃうんだもの。
シェリーと一個ずつトレーに乗せてからは、それぞれ欲しいものを選んで行き。
会計のカウンターに行けば、今日もラティストが他の女冒険者達に囲まれていたわ……。
「ね、ね? 今日こそいいでしょー?」
「あたしが先よ!」
「私もいるわ!!」
毎度毎度、飽きないことで。
あの朴念仁ぽい創始の大精霊が、見た目とかで靡くわけなんてないのになあ? と言うか、会計したい客の邪魔してるだけって、いい加減自覚しないのかしら?
「……………………邪魔だ。失せろ」
ほぉら、こっわい威圧来たわよ~?
あたしは慣れてきたけど、隣に居るシェリーや他の客とかはビビっちゃうくらいに肩を震わせたわ。
女達も背筋を伸ばして……さっさと帰っちゃった。ああ言われるのに……毎度毎度言い寄るのは、懲りてない証拠ね? 逆に感心しちゃうけど。
「……ラティスト、いいかしら?」
あたしは、この大精霊については……今は見慣れてきてるから、美しいとは思うけど一定以上の好意はないのよね?
中身が大食いだからって、知っているから?
彼は、あたしが声を掛けると……何故か、待つように言って裏に居るケントを呼びに行ったのよね?
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