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第143話 いつか……言えたら

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 俺も手を加えたからって……まさかのまさか。


(ポーションのパンが……出来た?)


 ケントがいるから、薄々そんな気がしていたが……まさか、本当に作れるとは思わなかった。

 でも、食べないという選択肢はないので、ヴィンクスと意見が合って、食べることが出来たんだが。

 マジで、ケントの指導もあったからめちゃくちゃ美味いパンが出来た!!

 りんごを煮たものが……パンと合うだなんて予想外過ぎて。

 ケントに注意されなきゃ……危うくヴィンクスと全部平らげてしまうところだった。それくらい美味かったしな!!

 ポーションとしての効能も……疲労の回復があるらしく、かなり回復することが出来たぜ!

 明日からの……辛い執務もめちゃくちゃこなせそうだ!!


「……陛下」


 俺が紅茶を飲んでほけっとしてると……ヴィンクスがこっそり声をかけてきた。ケントはカウルにおかわりのパンをラティストと焼いているんで、こっちには気づいていない。


「……それ・・で呼ぶなよ」

「とは言え、今は少し。……いつのまに、我が弟子と友達になどと」

「ディルックがここのパン持ち帰ってきてくれてな? 美味かったし、ケント自身にも興味持った!!」

「……わかりました。いずれ、告げるのですか?」

「いつかはなあ? ケントのことだから、驚きはするだろうけど……『俺』を見てくれる気はしてる」


 俺はエディ。

 ケントのマブダチ。

 その事実は変えようがない。

 今日一日、リオーネの街を回ったことで……そう確信出来るくらい、ますますケントを信頼できる人間だと認知出来た。

 そんな意味を込めてヴィンクスに告げれば……思いっきりため息を吐かれたが。


「……国王と友達。ケントが知ったら、目をひん剥きますよ」

「それくらいは驚くだろうな? だが、俺は俺だ!」

「……わかりました。しかるべき日が来るまでは内密にしておきます」

「そうしてくれ」


 今日は忘れられない一日を送ることが出来た。

 飲み食いして、買い物をして。

 ギルドの訓練所とは言え、適度に運動して……ここでパンを作ることも出来た。

『エリシオン』としては……かつての旧友らとも、気の抜いた態度を見せなかった。

『エディ』として……この街で、ひと時を過ごすと言うだけだったのに。

 ケントは……俺をひとりの人間として扱ってくれるんだ。

 隠していることは多いが……ケントにもきっとあるだろう。

 じゃなきゃ、ヴィンクスの弟子と言う事実も……創始の大精霊であるラティストの契約者って真実を、俺に教えようとしないから。

 いつか……お互いに打ち明けたい。

 その上で、ちゃんとマブダチになりたいんだ。

 とりあえず……今日は満足出来たんで城に帰ることにした。
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