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第138話 ケントの特技①

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(んもぉ、陛下・・ったら~?)


 ケントちゃんとお友達になったって言うのは……レイザーちゃんからなんとなく聞いてはいたけど。

 まさか……久しぶりにここでお会いするとは思わなかったわん?

 突然、訓練所を貸してだなんて……なんの冗談かと思ったけど、ケントちゃんのためねぇ?


(ケントちゃんは非力ではないと思うけど……)


 ついこの前、あたしは知ったばかりだけど……ケントちゃんも、あたしの古馴染みの……ヴィンクス=エヴァンス。ヴィーもまさか、異世界からの転生者だなんて思わなかったわん?

 だからこそ……神から特別に加護などを付与されている。ケントちゃんは、神に頼み込まれた結果……ポーションパンだなんて、特別な回復薬を作れるのだけれど。

 その子が、普段の肉体労働以外で……武の心得があるとは、あたしとしてはあまり思っていない。

 けど、陛下がおっしゃる通り……ちょっと腕が不思議に太い部分が服の上からでもわかるのよねん?

 何か、前世とかでやっていたのかしらん?


「えっと……ちょっとした運動?」

「……運動?」

「ボールを使った……遊びみたいなものかな?」

「ほー? ボールか」


 冒険者ギルドの訓練所には……個室化させたそれぞれの部屋の中に、いろんな道具などが置かれているわ。

 文字通り、訓練のための場所だもの?

 冒険者達が、己の鍛錬向上のために……サポート出来るところはしたいもの?

 陛下は、木剣ではなく……布を固めて作った、的当て用の大きめのボールを取りに行って、ケントちゃんのところに戻ったわ~。


「あ、そうそう。そんな感じ」

「蹴ったり、的当て以外どう遊ぶんだ?」

「色々あるけど……落とさないように、複数で連携して……相手方の陣営に叩き込んだら、得点が貰える。それを一定のところまで競ったら勝ち、かな?」

「面白そう!!」


 あたしもやってみたくなったわん!

 異世界の運動でしょうけど……パン以外にも色々あるのねん?

 ヴィーも出来るのかしらん?


「で、最初は相手方に攻撃の意味も兼ねて……サーブって言うのをするんだけど」

「うんうん」

「やり方は色々あるけど……僕、ちょっと変なやり方なんだよね?」

「やってみてくれよ!」

「……ルゥさーん、ちょっと壁強く打ち付けますけど。大丈夫ですかー?」

「いいわよーん?」


 訓練所には、強化の魔法陣か刻まれているもの?

 ちょっとやそっとの衝撃や魔法では壊れることはないわん?

 あたしが許可を出せば……ケントちゃんは、何故か腰を低くして軽くしゃがみ。ボールと手を構えたんだけど……。



 ヒュッ!




「へ?」

「は?」


 あたしと陛下が同時に間抜けた声を出してしまうくらい……ボールは飛んだけど、全然見えなくて。

 気がついたら……あたしの後ろにある、土壁にめり込んでいたわん!!?
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