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第117話 テンションハイ
しおりを挟む(ああ……ああ!!)
ああ、ラティスト様!!
麗しき、我が君!!
店主しかいらっしゃらない時は諦めかけましたが。
滅多にこちらへ来れませんので……たくさんポーションパンを購入したい気持ちは本当でしたが!!
まさか……まさか、間近でラティスト様とお会い出来るだなんて!!
(感無量……ですわ)
わたくしが愛の視線を向けても、全く動じませんでしたが。
そこが、素晴らしい!!
痺れるような喜びだったわ!!
無理に、営業の合間に行って正解でした!!
間近でお会い出来るとは思っていませんでしたもの!!
「……ですが、今回のポーションパンも素晴らしいわ」
お父様が……視察ついでに来訪したとおっしゃっていたのも。
おそらく……陛下がいらっしゃった時とも。
わたくしが単独で、最初にこちらへ来訪した時とも。
すべてではありませんが、変わったものばかり。
少し遠くに止めさせた馬車に乗り込み……すぐに出立させてから、わたくしは自分の亜空間収納のステータスを開いた。
全員が全員では無いが、亜空間収納に入っているものをステータスで見れることが出来る存在は貴重。
わたくしもそのひとりだ。
「……甘いものも、食事のものも……どれも、素晴らしい効能」
普通の薬品である回復薬とは違い……食べ物ですのに。
師となっているヴィンクス=エヴァンスよりも……付与されている効能が桁違いですわ。
ただ、このパンにも欠点がある。
わたくしのように亜空間収納の魔法を会得しているものか……魔法鞄を所持しているものでなければ、そのままだと数日で効果を失い……食べ物としても成立しなくなる。
やはり、何もかもが万能と言うことでは無い様子。
しかし……それでも購入する冒険者や市民は後をたたない。
だからこそ、あのパン屋は成り立っているわけです。
「…………ひとつだけ、食べようかしら?」
そろそろ、おやつの時間。
八つ時には帰宅すると……お父様にはお伝えしてあるけれど。
どうしても……あそこのパンを久しぶりに買えたので、正直なところ……お腹が空いて空いて仕方がなかった。
もちろん、ラティスト様がいらっしゃる手前……試食も店主には勧められたけど、断ってしまった。
そのためか、今とてもお腹が空いてしまっている。
だって、はしたない女だと思われたくないから!!
「…………いいわよね? どれにしようかしら?」
ポーションパンは、ポーションとしてもだが普通に食べることも出来る。
店主に聞きながら選んだ……とても美味しそうなパンばかりだけれど。
わたくしは、『揚げてあるパン』にすることにした。
貴族ゆえか、庶民と違い……料理の格差はとても大きい。
『揚げ物』と言うのも、よくわからなかったのだ。わたくしよりも……よくお忍びで城下街に繰り出す陛下は違うでしょうけれど。
ひとつしかなかったので……きっと人気のパン。
見た目だけだと……少し不恰好にも見えたが。包み紙を手にしっかりと持てば、香辛料の香りが……たしかにした。
そしてさらに、お腹を刺激させる食欲の香りもしてくる。
簡単に、神への祈りを口にしてから……少し、かじった。
そのひと口が呼び水になり、淑女らしくないくらいがっついてしまいましたが!?
だって……すっごく美味しかったんですものぉ!!?
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