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第36話 セキュリティについて

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 ポーションパン屋と言っても……売り方は、僕とかが知っている普通のパン屋と同じ売り方だ。

 専用のトレーに載せたパンを戸棚に置き、値札には値段とポーションパンの効能を書いてある。それをトングとトレーを使って欲しい商品を取って、レジへ持って行く。

 希少価値の高い、回復薬であるポーションのパンを売り買いするのに随分と大雑把な仕組みかもしれないが……それは、創始の大精霊であるラティストがいるから大丈夫。

 彼がいるだけで、店内であれば自動的にセキュリティみたいなのが働くので……注意はしても、万引きや盗難はすぐに見つかる仕組みなんだ。本人が言うには、結界で探知出来るからだとか。

 だから、


「離せ!?」


 今も、万引きしようとしていたガラの悪いお兄さんが宙に浮かされて逃げられない状態に。

 もちろん、その人はギルアさんとかの舎弟でも何でもない。


「……盗難しようとしたのだから、当然の処置だ」


 静かに……けど、めちゃくちゃ怒っているラティストの威圧はすんごい。僕はちょっとずつ慣れていたけど、さすがは大精霊でもトップクラスだなあとは思っちゃう。


「お、俺は何もしてねぇぞ!?」

「嘘をつけ。盗難しようとしていた思念が俺の結界に触れた」

「な、なにぃ!?」

「はいはーい。連行お願いしまーす」


 僕は、外で待機していた冒険者さん達に声をかけると、恰幅の良いお兄さん達が『おう』と言って入って来てくれた。


「白昼堂々と盗難とはなあ?」

「店長にも言われただろう? 二度と来れなくなるってのに」

「ひ、ひぃい!?」


 ラティストが魔法を解除したら、お兄さん達に泥棒未遂のお兄さんは連れて行かれ……店内は、ちょっとだけ『ぽっかーん』と言う空気が漂った。


「……ああなりますので、気をつけてくださいね?」

「「「「「は、はい!!」」」」」


 と言うことがあり、今日も今日とてお客さん達は礼儀正しく(?)パン達を購入していかれ……品数が減ってから、ひと休みしようと外の看板を『休憩中』にした。

 閉店するのは、この世界だと一日の終わりの時にした方がいいとロイズさん談。なので、今は休憩中って札を立てたわけである。


「いや~……盛況だねぇ」


 味については、皆のお墨付きがあるとは言え……ここまで繁盛するとは思ってもみなかった。

 珍しい、効果もあるって言うのもあるだろうけど……未熟でも日本のパン製造をそこそこ学んだ身としては、売れているのがとっても嬉しい。

 ラティストもちょっと疲れたのか、レジ後ろにある椅子に腰掛けていた。


「……売れるのはいいが、罪を犯しかけた人間がいくつかいるな」

「わかってはいるけど、無理ないよ?」


 味もよくて……けど、ポーションの効能がある食べ物だなんて、日本でもイレギュラーな物だからね。僕がいた日本でも普通にあった薬ですらそう言うのはなかったから。

 ひとまず、お茶休憩しようとすると……扉の方からノックが聞こえてきた。覗き窓を見れば、知っている相手だったからすぐに開けてあげた。


「繁盛してるそうじゃない?」


 入ってきたのは、エリーちゃんもだけど……後ろには、他にも何名かお客さんがいたのだった。
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