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第20話 身分証明書を作ろう②

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「こっちが身分証の正式な申請書。んで、獣魔登録証明書。こっちが営業許可証だ」


 生産ギルドの正面から堂々と中に入った僕らは……というか、正確には僕とカウルと……霊体化してるラティスト。

 その三名を招くべく、ギルドマスターさんであるロイズさんが……僕らとエリーちゃんを改めて執務室に招いてくださったわけです。

 申請書類とかは、もちろんあのパン屋で営業するために……店長となる僕が書いていく!!


(衛生管理責任者とかの講習は、学校で受けたけど……!)


 日本のそういう資格管理とかが必要じゃないので、ずっともっと楽ちん。

 言語チート特典については、ロイズさんに説明済みなので……注意点だけ教えてもらいながら、サクサクサクッと書類は書いていく。仮身分証明の書類の時も思ったけど、こっちの羽根ペンって見た目以外はボールペンとほとんど変わりない使い心地だ。

 楽だから、変なアクションしなくて済むしいいけど。


「出来ました」

「……ん。上出来だ。じゃ、次に……頼みがある」

「はい?」

「あのパン……あとどんなけあるんだ?」

「えーっと」


 何に使うかは……なんとなく予想は出来たが、とりあえず収納魔法の中を、ステータスを確認して個数を伝えると……パンっと、ロイズさんは僕の目の前で『お願い』のポーズになった。


「頼む! 開店誘導も兼ねて……そのポーションパン、うちのオークションで使わせてくれ!! それで、改装費用とか工面するつもりだ!!」

「え……えぇ?」

『オークション……競売か?』


 あ、後ろにいるラティストが少し不機嫌になったぞ?


「俺んとこのオークションは……聴こえようによっちゃ、悪くとらわれるだろうが。だが、俺のじいさんの代から続けてきた正規のやつだ! 転売と盗難防止の魔法もしっかりしたのを施しているし……被害も特に報告がない!! それに、うちが贔屓にするとくれば……店の方でも安心して使える方向性になるだろう?」

「……それが、取り組みですか?」

「その表立ってする方だな? ケントには……ラティストって大精霊と契約したんなら、防犯面は確実性が高い。下手な用心棒雇うより良い……ラティストがいなきゃ、エリーをとも考えたが」

「あたしは用済みでしょ?」

「その代わりに、周辺の警備とかは頼んだ」

「了解」

「え、えぇ?」


 ラティストはともかく……僕にそんな価値があるんだろうか?


(ううん。僕より、僕とカウルが作ったパンだ)


 ポーションにもなる食べ物が存在すると……イケメン神様が色々渋る意味がよーくわかる。まだ接触してないにしても、この世界で悪どい人間は山ほどいる……彼らに、彼らを何とかしないと……この世界の回復薬の浸透とかがどうにもならない。

 今はたまたま良い人達と出会えたんだから……そこをなんとかしないと、この世界から悪循環を取り除けない。

 せっかく転生してもらえたんだから、そこもしっかり頑張らなきゃ!!


『……それは、ケントのためか?』

「転生したっつーケントの使命を考慮してのことだ」

『……転生?』

「そう。僕、一度前の世界で死んじゃってるんだ」


 きっぱり言うと、何故かラティストがいきなり実体化しちゃって、カウルを抱っこしたままの僕をぎゅーっと抱きしめてきた!?


「が、ガージェン様!!?」

「……俺の主が、一度死んでる? 神は何をしたんだ!!」

「いやいやいや!? 僕がちょっとドジしちゃって……けど、ちゃんとこうして転生させてもらったし」

「……一度、神に問い合わせる!! あの阿呆がああ!!」

「落ち着いて、ラティスト!!?」


 とりあえず……大精霊っていうか、ラティストは恩人の僕を信頼してくれているようだ。

 全員で宥めてから、先に作ったポーションパンはロイズさんに預けてオークションで取り扱ってくれることになり。

 その日のお宿とかは、ロイズさん経由であのレイスを退治した報酬をいただいたことで何とかなり。

 明日からは、パン屋の改装工事とかをどうするか話し合うことに決まった。


「…………俺のことはラティストで良い」

「……ラティスト、様?」

「敬称は良い。お前がケントの家族なら、俺も似たようなものだ」

「…………ラティスト兄さん?」

「…………まあ、いい」


 あと、カウルとラティストの関係も対等なものになりました。
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