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第16話 出てきたお兄さん

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 全員でぽかーんとしても……その人は起きる感じはなかった。

 もしかして、死んでる? とも思ったけど……ロイズさんがすぐに我に返り、あちこちを見回してから倒れたままのその人に、そーっと近づいていく。


「……おい。おいっ」


 体を揺らしてみても……その人は起き上がる気配がなかった。

 ロイズさんが僕らを見て、一度頷いてから……その人をゆっくり仰向けに転がすと。


「「「「はぁあ!?」」」」


 全員で声を上げるのは無理がなかった。

 だって、その人は……ロイズさんがレイスに投げたはずのオープンサンドをもぐもぐと食べていたんだから!?

 思わず、僕らはひっくり返しそうになったのを我慢した。


「……図太いっていうか」

「……生きてる、んだよね?」

「でやんす」


 僕らが近づいていくと、その人はもうオープンサンドを食べ終えるところだった。


「……起きれるか?」


 食べ終えたところで、ロイズさんが声を掛けると……その人は、ゆっくりと起き上がった。

 遠目だとよくわからなかったけど……背が高い!! ロイズさん以上に背が高いかも!!


「……ここは」


 なんか。

 イケメン神様以上のイケメンボイスなのに、背中がゾワッとしちゃった!!

 腰にもクルって言うか……かすれているのが、色気満載って感じ!!

 暗い部屋の中だけど、起き上がった『お兄さん』はイケメンさんでした。


「末恐ろしいくらい良い声だな?」

「……誰だ?」

「一応、お前にとっちゃ恩人だぞ?」

「……どう言うことだ?」

「あのー、僕らも居ます」

「無視しないでもらえるかしら?」


 僕とエリーちゃんが声を掛けても、お兄さんはまだ状況が飲み込めず……首を少し傾けていた。


「ここは……どこだ?」

「お兄さん……レイスって言うものの中にいたんですよ」

「? レイス? ……ああ。なんとなく、思い出してきた」


 お兄さんの記憶によると。

 ①お兄さんの家? 住居では普通に寝てた

 ②起き抜けに、レイスがやってきて……応戦してたが魔力不足で倒れる

 ③気づいたら、何かを食べていて僕らの前にいた


 以上。


「ざっくりし過ぎだろ!? よく生きてたな!?」


 ロイズさんが、お兄さんを軽く叩いても……お兄さんはちっとも痛くないからかまた首を傾げていた。


「……この兄さん。人間じゃないでやんすね?」

「「「は?」」」


 カウルの言葉に、僕らは一斉にお兄さんの方を向いた。


「……変わったスライムだな」

「あっしは、ケン兄さんのスライムでやんす! 兄さん……精霊族やとお見受けしやすが?」

「…………ああ。部類だと、大精霊とか呼ばれていたが」

「「はぁあああ!?」」

「大精霊?」


 人間じゃなかったから、あのレイスの中で生きていられたんだ? とちょっとだけ納得が出来ちゃった。


「……それと、聞きたいことが。あの美味いものはなんだったんだ? 魔力も回復したんだが?」

「僕とカウルの作ったパンのお陰です!」


 挙手して意思表示すると……お兄さんが、暗くても優しく微笑んでいるのが見えて、ちょっとドキッとしちゃった!!
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