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第62話 天神様と遠い城

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「……わかった。それを見せられちゃ、嘘じゃねぇな」


 ギルドマスターに納得してもらえたようなので……私達はひとまず、尋問から解放された。

 外に出たら、派遣隊に連行された時には気づかなかったが。


「……あれは」


 社で宮司らが『テレビ』を観ていた時に、私も霊体でちらりと覗き観たもののひとつ。

 日本の『館』でも、『居城』でもない……そびえ立つ山のような。

 しかしながら……美しい『西洋城』が街の奥に見えたのだ。灯りがあるのか、ライトアップのように照らされてよく見えていた。


『あ……れ?』

「……あそこかもしれませぬな」

「……うん」


 第三の、聖樹石があるかもしれない……場所。

 この、ラファエロはシトゥリとは違う国の管轄のようだし……ケインらが言っていた場所で間違いないはず。

 とは言え、いきなり忍び込んで……『探しにきました』などと告げて、すんなり入らせてもらえるわけではないだろう。


『? マスター、行か……ない、の?』

「うーん。正面から行っても、追い出されそうだしね?」

「……たしかに、一筋縄ではいかないでしょうな?」

「ああ言うところには、王族だけじゃないはず。色んな人とかがいるだろうから……慎重に進めていこう」


 魔法とかの種類が増えれば……何かしらの方法はあるだろうが。

 私とトビトは、まだ転生して半月程度。

 飛翔を覚えたとて……他にめくらましの魔法とかがあれば別だろうが。何も出来ないに等しい。戦闘などをあの場所でしてしまえば……聖樹石からさらに引き離されるだけ。

 であれば……別の方法で、あの城に行くしかない。

 と言うことで、とりあえず時間も遅いので宿屋を探すことにしたよ。


「いらっしゃい!」


 ギルドを通じて、紹介してもらった宿屋は……シトゥリと比較しても見劣りしない場所だった。

 食事も悪くなく、軽く済ませてから寝ようとしたのだが。


「お兄さん達! うち名物の温泉はどうだい?」

「温泉!」


 宿屋の青年に勧められた言葉は……とても魅力的だった。

 シトゥリでは、お湯の桶と布で体を清める程度だったので……風呂は有り難い!!

 特に、天神となった以降は……眺めているだけしか出来なかった湯事情。

 しかしながら……今は人間のフリをした精霊だ!

 食事なども出来るし、ここはひとつ……行くしかないではないか!!


『い……いもの?』

「うん! フータもトビトも行こうよ!」

「……ミザネ殿が言うのであれば」


 と言うことで、聖樹石への悩みは一旦忘れて……リフレッシュするために、青年のあとをついて行くこととなった。
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