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第47話 従者のもんもん

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 我が主、『菅原すがわらの道真みちざね』様は素晴らしい御方だ。

 かつては、日の本で学者を務められ……愚かな貴族らの策略により、京から左遷させられてしまったが。不遇な死を迎えられ……怨霊と化し、陰陽師らに鎮められたのだが、現世にまで讃えられるほどの『神』として祀りあげられたのだ。

 その方が……異なる世界の神に見出され、名と姿を変えられたが。存在自体を、我と同じ『精霊』にさせられてしまったのだ。

 我としては……ずっとずっとお近づき出来なかったゆえ、身に余る事態ではあったのに。

 道真様……ミザネ殿は、『よろしく!』と笑顔でおっしゃるのだ。

 我は……命を奪うのにためらいがある、あの方の手足となり。魔物の討伐には積極的に前へ出ることにしたのだ!!

 途中で加わった、大福のような精霊であるフータとも共に力を合わせている。あれの氷の魔法とやらで、砕くだけの作業もそれなりに気に入っているのだ。

 それはともかく。


(……主は、ご自分を過小評価し過ぎである!!)


 ご自分がか弱いほどでなくとも、『力量不足』であることとか。

 ご自分の風貌が、幼くとも……我以上の美貌の身体であることを。

 あの方は……全く、ご自覚されていらっしゃらないようなのだ!!

 シトゥリでも……我の耳の届く範囲で攫おうと狙っておった輩がどれほど居たか。

 道真様は……お若い今の身体が『普通』であると思われているのだ。そんなことは、全くもってないのに!?


「んじゃ、その弓は!」

「はい! シトゥリで購入しました!」


 魔の森で出会った、ケインとやらと……今は楽しそうに談笑しているが。

 あのように、輝かしい笑顔で……女とかを惚れさせてしまうなどと、ご自覚がまったくない!!

 今も、ディアナを軽く惚けさせているのに気づいていらっしゃらない!!


「……ちっちゃいのに、ミザネって……綺麗」

「…………ミザネ殿は、小さくない」


 たしかに、日の本の小柄な体型に転身させられてはいるが……小さ過ぎではない、とは思う。我はいささか大きいようだが。


「そーね? トビトも綺麗だけど……二人とも、どっかの貴族出身?」

「……でも、おかしく……ない」

「いいや、違う」


 人間どころか、精霊であるのを口にするのは出来ないが。

 主曰く、聖樹石を探すのに……無闇に正体をバラすのは面倒なことになるからと。

 我はともかく……主に面倒がかかるのはよくない。だから、話は適当に受け流すしかないのだ。


『ト……ビ、ト……大丈夫?』


 フータは、今主の方ではなく……我の隣で酒を飲んでいる。別に嫌ってはいないが……大丈夫だと触ってやるとふよふよと身体を震わせて、喜んでいた。気持ちが……何故か和むのを我は覚えた。

 とりあえず……次の目的に向かうまで、このようなのどかな時を主が望むなら、我も付き合うまで。

 試練のひとつを突破したのであれば、この森の中の聖樹石には……認められているからな? 主はよくおっしゃるように……急ぎ過ぎてもいかぬだろう。
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