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第27話 天神様と防具①
しおりを挟む「……えっと、大丈夫ですか?」
沈んでいた時とは違い、随分と明るくなったとは言え。
本調子に戻ったかと言うと、私とて心配になった。
「ん? おぅ、悪かったな! いや~……ここんとこ、俺の作ったもんにいちゃもんつける連中が多過ぎてな。ちょいとばっかし……疲れてただけだ」
「……それは」
なんと言うか。私も元は人間ではあったが……自分勝手過ぎやしないだろうか? せっかく作ってくれたものに、理由はあれど製作者にここまで落ち込むくらい文句を言うなどと。
しかし……その理由に、この店主の技術も関係しているかもしれないが。
(……悪くないとは思うが)
壁に立てかけてある武器や防具を少し見ただけでも……そこまで粗悪な品がかかっているとは思えない。
トビトに振り返っても、首を縦に振ってくれたから……彼から見ても問題ないと言うことだろう。であれば、考えられるのは。
「素材次第だが……高いとか色々文句言うんだよな? わけぇ連中はよ?」
「……それですね?」
職人が手掛けるものには……それ相応の素材が必要となってくる。加えて、金もそれなりに。
なら、これまでの冒険者らは……その価値を理解せずにこの店主に文句を言うのか。実に、稚拙な輩達だ。
「…………店主よ。我らは金に心配はない。しかしながら、防具などはひとつもないのだ。どのようなものが良い?」
私の言葉のあとに、トビトが店主に頼み事をしてくれた。自発的に動いてくれるのは、主人として嬉しく思う。
少しばかり、親が子の成長を嬉しく感じる気持ちに似ているが。
「……あんたらは、今までの連中とは違げぇな?」
店主はトビトの態度を気に入ったのか、とても良い笑顔になったよ。
「……先ほども言いましたが、僕らは駆け出しの新人です。討伐はこのままでも出来なくないですが……防具とかは何もないので」
「ほう? なのに金には困ってねぇのか?」
『さい……しゅ、がんば……った!』
「ふぅむ? そうか、精霊とかがいるから……触れたもんの質もいいせいか?」
「職員さんにはそう言われました」
私とトビトも精霊だと言うのは、言えないけどね?
フータの得意気な言葉に、店主はさらに上機嫌になったのか……何度か強く頷いてくれた。
「そーかそーか! んじゃ、どんな防具がいい? お前さんらの適正職業はなんだ?」
「僕が、精霊術師。こっちのトビトがアサシンです。あ……名乗り遅れてました。僕はミザネと言います」
『フータ!』
「……精霊術師、だと?」
店主の口がひくっとなったのは、敢えて気にしないでおこう。
やはり、こう言う場でも珍しい職業のようなので……私は頷くだけにしておいた。
「はい。その縁でフータとも契約出来ました」
「……そーか。んじゃ、最高に良いもん作らねぇとなあ? 手持ちの金の額、聞いてもいいか? 素材は今んとこまあまああるしよ?」
「えーと」
財布を持っているトビトに金額を聞くと、店主は何故かその場でひっくり返ったのだった。
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