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31-2.罪人は赦される(ガイウス視点)
しおりを挟む★・☆・★(ガイウス視点)
あれから、約一週間。
いつもの城での仕事。
いつもの日常に、戻るだけ。
それでも、違うことは一点だけある。
我が弟だった、ルーイスがいなくなり、僕の抱える仕事が増えていく一方だ!
「…………ああああああ! もう!!」
近侍達が、出来上がった書類を持って行くのを見送り。入れ替わりでイクスが入って来るのを確認してから、声を上げたのだった。
「お、お疲れ様……です」
「疲れた……疲れた、マールに会いたい」
「マールドゥ様は、アスペリア公爵家に入られていらっしゃいますし。行儀作法の毎日でいらっしゃるでしょう?」
「聞いてる。電報で毎日大変だって、聞いている」
「……であれば。殿下が我慢なさらないと」
「……だけど、好きな子に会いたい気持ちは抑えられないよ!」
「……殿下。このやりとりだけで、今日は三回目ですよ?」
「だからって!」
仕事が多過ぎる!
ルーイスと分担していた仕事だったのだが、あれのシワ寄せがこちらに全部流れてきて、結果臣下達に回せない仕事は全部僕と父上で担当している。
が、全部ではない。
「……イクス。あそこに行こう」
「え、今から何故?」
「…………やり過ぎて息が詰まる」
「絶対無理くり作った言い訳ですよね!?」
ぎゃーぎゃー言うイクスを無理矢理に引っ張って。お祖父様達がいらっしゃる離宮の端の端。牢屋にも似た少々大きめの小屋にの鍵を開けて、入ったら、げ、と声を上げられた。
「あ、兄上!?」
そう。
中にいたのは、軽装姿の我が弟。
誰もが死んだと思い込まされている、ルーイス第二王子。
実は殺したんじゃなくて、炎の後に出来る燃えカスで拘束しただけなんだよね!
クロームにもまだ言えてないけど、こいつには一生涯罪を背負う方にさせて、死罪だなんて生温い処置にはしなかったのだ!
「や、判子の進み具合は?」
「…………幾らかは」
で、ただ幽閉するだけでなく。サインが必要じゃない今までの執務は続行させている。何もしないだなんてぐーたらな生活はさせられない。だって、そんなニート生活羨ましい! 僕は将来国王にならなきゃだから、無理だけど!
「そ。……で、反省は?」
「……………………わからないんだ」
「わからない?」
「あれ……クローム=アルケイディスは、以前とは真逆の人間になっていた。この一年で、俺が抱え込んでいた憎悪を打ち消すくらいに」
「んー。きっかけは、結局良くはなくても、お前の作った不正のエーテル生成液に関与しているよ。あれで作ったホムンクルスの出来が、とてつもなくよかったから」
「……クロームの伴侶となった」
「うん。だからさ、お前の生存をいつかクロームにも伝える。その上で、お前はクロームと和解しなさい? でなければ、私がお前を生かした意味がない」
「……ああ」
会話はその程度にさせて、僕はイクスを連れて牢屋の小屋から出た。書類の済んでいるものはイクスに持たせて、僕は外に出てから大きく伸びをする。
「殿下、ルーイス殿下は、以前とお人柄が変わられたように思います」
「そりゃあ、ね? 死ぬ思いをしてまで、私とクロームに立ち向かってきたんだ。毒気が抜けても仕方ないさ?」
「ええ。しかし、ディスケットの方は」
「あれはもう救いようがない。大量に洗脳までしたのだから」
性格も、ルーイスのように変わりばえしたわけではないし、ならいっそ、処罰を下した方がいいかもしれない。
今では、ルーイスとは別の牢屋で、気が狂ったように毎日泣き叫んでいるそうだ。
「ガイウスお兄様!」
「あれ、アイ?」
中庭を歩いていたら、どう言うわけか模造の剣を握って軽装になっている末の妹が手を振ってきた。
「お兄様、アイは決めましたの!」
従者に剣を預けてから、アイは僕のところまでやってきた。
「決めた?」
「はい! ミアお姉様にまで到達するかはわかりませんが、アイも武を極めたいと思いましたの!」
「……その心は?」
「いつかお会い出来る運命の方の気持ちを射止めるためですわ!」
「ちょっとお説教しようか? だいたいね、そう言う出会いは」
ああ、弟のことは色々あったし。好きな子とも結ばれる将来の約束も出来たけど。
何気ない、この日常が転生してから充実出来る、かけがえのないものになったのだった。
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