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30-3.後始末
しおりを挟む洗脳していた連中の大半は、俺とセリカの婚約発表で本能を揺さぶられる程の憎しみを植え付けられていたらしく。
今はもう城の牢獄にぶち込まれるために、護送中のディスケットが洗脳に上書きをしたらしい。俺が生産ギルドに来る情報をわざと漏洩させた方向で、そうなったんだと。
まったく、錬金術師の技術より傀儡師の才能を開花させても、方向性がよくない。
が、そうさせた元凶は俺なのでとやかくは言えないが。
とりあえず、洗脳を解くのにガイウスのお抱え錬金術師であるイクスから、専用の薬液を借り受けてそれぞれ手分けして気絶させられた職員やら冒険者やらを手当てしたが。
「……嘘だろう?」
「え……えと、えと……………………ほんと、です」
俺が真っ先に手当てした途端、目を覚ましたビーツなのだが。
どうやら、家庭事情のせいで性別を偽っていたらしい。つまりは、男じゃなく女だったと。
と言うことは、だが。
(……おそらく、俺に惚れた上で慕ってくれていたのだろうな?)
そこを、ディスケットにつけ込まれて、最初に覚醒させられた受付嬢のミリアナも今は大反省してしまっている。
二人は、秘密を共有していた良き仲間だったらしい。が、以前の俺には執着していた、と。
「まあ。此度の件は、我が弟が大いに関わってはいた。洗脳を受けていた者達には、なんらかの処罰を受けないよう私が陛下にお伝えしておこう。実質、不正のエーテル生成液をクロームに売り渡しただけの被害だ。生産ギルドが、今回については悪いわけではないからね?」
「「「「「「「は!」」」」」」」
たしかに、悪いのは死んだルーイス王子と護送させられているディスケットだしな?
俺は被害者だ。恨まれる原因を作ったのは、俺自身であるが俺だって被害者だ!
今回のためにもきちんと動いたし、悪くはない!
「「クロームさん、本当に申し訳ありませんでした!!」」
謝罪のために前に出てきてくれたのは、ビーツとミリアナで。二人して大袈裟なくらいに腰を折って俺に謝罪してきた。
「いや……まあ、操られていたのなら、仕様がない。二度目のエーテル生成液はガ……殿下が回収されたそうだからな?」
「! ありがとう、ございます!」
「その……セリカさんと、お幸せに!」
そう言えば、今日ここに来たもう一つの目的。
セリカとの婚約誓約書を書かねばな?
と言っても、受付は酷い有様なのでここでは書けない。
「じゃ、クローム」
まだルーイス王子だった遺体を包んだマントを抱えながら、ガイウスは俺の肩を叩いてきた。
「せっかくだから。式は同じ日にしちゃおうか?」
「…………よしてください」
「ふーん。つまらない」
「ご自分の立場を考えてください」
一応公的な場なので、敬語で受け答えしたのだが。つまらない回答だったせいか、ガイウスは少し肩を落としたのだった。
「では。後処理の手配は追って寄越そう。皆はこの件を大っぴらにしないことは頼むよ?」
「「「「「「は!」」」」」」」
「イクス。洗脳されていた人員の処置は?」
「は! すべて完了です!」
「わかった。我らは陛下のもとに行こう」
「は!」
そうして、イクスを連れてガイウスは転移で城へと戻って行ってしまい。
俺とセリカは誓約書を書くのに、ギルマスの執務室に移動することになったのだった。
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