83 / 94
29-4.捕物合戦③(イクス視点)
しおりを挟む★・☆・★(イクス視点)
あーあ、あーあ。
生産ギルドが、まるで冒険者ギルドの騒動のように様変わりしてしまっている。
俺は、一応ガイウス殿下の護衛として影からお守りするのが役割……ではない。実際、洗脳にかかった職員や冒険者、商人達の解除組だ。
他にも数名潜んではいるが、あの美貌に磨きがかかったクローム=アルケイディスが婚約宣言した途端、ディスケットの洗脳が本質的に垣間見えるのは非常にいただけない。
ただでさえ、ルーイス殿下に不正のエーテル生成液を依頼するあたりで重罪扱いだ。そこに、王族を関わらせたということも。ルーイス殿下がいくらクローム=アルケイディスを憎んでいるからって、ダメなものはダメだ。
(それに、今回の件でルーイス殿下は下手したら死罪だ)
ガイウス殿下なら、肉親とは言え王太子としてならそれくらいの処罰をなされる方だ。陛下も、おそらく頷くだろう。
これだけの人間を洗脳し、かつクローム=アルケイディスだけを処分するのに利用とは。王族とは言え、やっていいことと悪いことがある。
俺は、洗脳されてないので連中に襲い掛かられそうだったが、ただの文官兼宮廷錬金術師ではないので、手刀で可能なやつにはおねんねしてもらうことにした。
あとは、室内で出来るだけ大きな魔法は使用しにくいので、小手先の技で対応したり、と。
だいぶ集まったら、俺の錬成で作った秘薬で、あら元どおり?
というのを繰り返してたら、ガイウス殿下、クローム=アルケイディスに……ルーイス殿下が対峙しているとこを発見!
(うわー、こっわ!)
こっちからはルーイス殿下のお顔しか見れないけど。あの不正のエーテル生成液の製造最中に聞いた声のまんまの表情だ。
「貴様……よくもおめおめと俺の前に出たな」
「…………いや」
「悪いね、ルーイス? こいつ、お前のことなんも憶えてなかったんだよ?」
「ガイウス!?」
「……んだと、貴様ぁああああ!?」
ガイウス殿下、腹黒さが全面に出ていますよ!
今後目にすることはない弟だからって、やっていいことと悪いことがありませんか?
あと、なんかひょうきんに見えるのは気のせいですか!?
「……その。謝罪ですまないとは思っているが。……殿下のことは存じていなかった」
「…………ふん。知ってたさ」
「は?」
「あの時の、貴様の目は。俺を王子と知らずとも、無知な男を貶す目だった」
「! そこまでは……」
「いいや! 俺はあの時の屈辱を忘れはしない。でなければ、兄上のトレーニングに付き合ったりもしなかった」
「けど、お前は王子としてでなく、ヒトとして間違った方向に向いてしまったが?」
「ふ……後悔はしていない!」
「「!!?」」
殿下やクローム=アルケイディスが何かを察知した通り。
ルーイス殿下の魔力が、いきなり視認出来るほど膨らみ始め、破裂かと思いきや、あの方の体を包み込んでいくような……。
「ガイウス殿下!?」
「イクス! 無事な職員を出来るだけ遠ざけて! 私達はこれから強制転移する!」
「殿下!?」
そして、クローム=アルケイディスの手と無理矢理ルーイス殿下の手を掴んだガイウス殿下は。
ご自慢の転移魔法で、フロアから消え失せてしまったのだった。
「なに、今の轟音!?」
「クローム!」
たしか、王女殿下と結ばれる予定のチェスト=ポディロンとクローム=アルケイディスのホムンクルス。
今の轟音には気付いたが、何が起きたかはわかっていなかったらしい。
俺が告げようとしたら、カウンターの方で対処していたギルドマスターが彼らの前に立った。
「今、ガイウス殿下がクローム君と一緒にルーイス殿下と強制転移されました」
「く、クロームは無事なんですか!?」
「わかりません。ですが、ルーイス殿下がおそらく暴走しかけたので、ガイウス殿下はクローム君を一緒に連れて行ったのでしょう」
「……クローム」
「ところで、チェスト君。ディスケット君の方は?」
「はいはーい! 引きずってきましたー」
元凶の一人である、ディスケット=ライツ。
気を失っているのか、ぐるぐる巻きにされた奴は泡まで噴いて縄一本で引きずられていたのだった。
0
お気に入りに追加
65
あなたにおすすめの小説
やり直し令嬢の備忘録
西藤島 みや
ファンタジー
レイノルズの悪魔、アイリス・マリアンナ・レイノルズは、皇太子クロードの婚約者レミを拐かし、暴漢に襲わせた罪で塔に幽閉され、呪詛を吐いて死んだ……しかし、その呪詛が余りに強かったのか、10年前へと再び蘇ってしまう。
これを好機に、今度こそレミを追い落とそうと誓うアイリスだが、前とはずいぶん違ってしまい……
王道悪役令嬢もの、どこかで見たようなテンプレ展開です。ちょこちょこ過去アイリスの残酷描写があります。
また、外伝は、ざまあされたレミ嬢視点となりますので、お好みにならないかたは、ご注意のほど、お願いします。
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。
克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位
11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位
11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位
11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位
そうだ、逃走しよう。
アリス・ホームズ
恋愛
公爵令嬢のアナスタシア・リーヴェルは、三段腹ならぬ六段腹。
しかし、麗しの王弟殿下の運命の番であることが発覚して、
王弟殿下にふさわしくなるため、隣国に留学(逃走)する!?
アナスタシアは、ダイエットなどの自分磨きをしつつ、
王弟殿下かから「運命の番」だとバレずに逃げきることができるのか!?
(小説家になろうさん・エブリスタさんにも投稿しています)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる