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27-5.気の迷いと思いたくない(チェスト視点)
しおりを挟む★・☆・★(チェスト視点)
あの時は、ただ綺麗な女の子が危ない目に合いそうなのを助けただけだったのに。
その助けた女の子……いや、女性が。なんで、変装していたミリアム王女殿下な訳~~!?
ガイウス殿下の実妹で、美貌の華だよ?
たおやかな姫君と噂高い姫君だよ?
それが実は武の心得があって、下手すると兄君のガイウス殿下ですら勝てないかもしれない相手だからって。
マールとは別に、僕にまで王族の標的にされてしまった。
断りたいけど、一国の王女の願いをただの臣下以下の国民が断ることだなんて出来ない。
結婚適齢期じゃないにしたって、国の華を娶る??
(無理無理絶対無理ぃいいいいいい!!?)
いやだって、綺麗な女の子を助けただけだよ?
惚れられる要素ってあった?
し、知らなかった僕の方が、むしろ可愛い女の子だな~お近づきになりたいな~って、下心はあったけども!
なんで、実は正体が国の王女様だったんだ!?
マール以上に厄介な案件じゃないかぁあああ!?
「……おーい。チェスト。考え込むのはいいが、お前は断る気か?」
あ、そう言えば今はクロの屋敷じゃん……っと、抱え込んでた頭を上げて、彼の方に向き直った。
殿下も一緒だけど、いくらなんだって。
「その……僕には」
「しょーじき言っちゃうけど。チェスト、君は逃れられないよ?」
「へ?」
僕が言おうとしたら、殿下がかぶさるようにして否定の言葉を並べられた。
全員の注目が殿下に集まると、殿下はコーヒーのカップを軽く傾けてから大きく息を吐いた。
「ミア……ミリアムは、一度決めたことはたとえ魔法弾を打ったとしても聞く耳持たない性格してるんだよ。君への想いもそう。受け入れてくれるまで、どんな手段を使っても頷かせると思うよ?」
「意外と豪胆な性格なんだな?」
「うん。誰に似たんだか~?」
「お前じゃないのか?」
「えー、一応猫かぶってるし? バレてないバレてない」
「……はあ」
だ、だけど。
王女殿下が本気で僕なんかに嫁ぎたいだなんて、お願いを。
一端のギルド職員でしかない僕なんかが、受け入れていいものか。家族になるかもしれない大それた願い、マールも特殊だったけど……僕は、僕は。
「……殿下」
「うん?」
「一度、正式に、ミリアム王女殿下とお話出来る席を設けていただきませんか?」
「「チェスト??」」
「一時の気の迷いなどを疑うわけではありません。ですが、ただの国民である僕のところにもし嫁いでこられたとしても。王族でいらっしゃる王女殿下には、メリットがほとんどないからです」
「……君自身を好いてるだけじゃ足りない?」
「僕が仮に婿入りするなど恐れ多いですし、そちらにも僕にとってはメリットがありません」
「……なるほど。それならわかった、一度話し合いしてくるよ」
帰りは送る? と殿下に聞かれたが、のんびり歩きながら帰るときっぱり告げてから殿下は転移で帰られた。
クロからは、アイスでも食べてけと言われたので、話し合いしながら席についたが。
「あれ? 俺様じゃなくなってるね?」
「……虚勢を張るのはもう終いだ。俺にとってもメリットではなかったしな?」
「ディスケット以外にも目の敵にされてた奴らいたしねー?」
「セリカがいる。もう迷わない」
「そっか」
僕も、身分とかが釣り合ってたとしても。
あの時助けた綺麗な女の子をお嫁さんに迎えられただろうか?
いや、きっと無理だ。クロのお母さんの時以上に、王女の身分は絶対的に強い。
それをただの国民に降嫁するだなんて、やっぱり恐れ多いよ。
たとえ、陛下や王妃様方が、御許可をくださっていたとしても。
きちんと、話し合いたいと僕は決めたのだった。
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