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26-3.どうしたものか(セリカ視点)
しおりを挟む★・☆・★(セリカ視点)
マールドゥが、過去にクロームに告白していた。
その事実は、予想してなかったわけじゃないけども、少しばかり心が痛んだが、今は違う。
私がクロームのことを好いてることについては応援しれくれてたし、結ばれた後も強烈なハグをお見舞いされたが。あれは心からの祝福だったのはホムンクルスとして日の浅い私でもわかった。
だから、彼女の私への好意は嘘じゃない。
けど、今は逆に彼女が追い詰められていた。クローム以上に、この国の将来の王様になる位置に存在している、転生者のガイウス王子。
彼が、クロームと出会った頃から、ある意味ずっとマールドゥさんのことを好きでいただなんて。ちょっと、いやだいぶ驚いた。
チェストとは違うが、ちょっとちゃらんぽらんな性格ではあった彼が本当にクロームの友人であるかどうかは、今日の話で理解は出来たけど。
ご自分の弟君を捕縛すると言うのに、この時期に婚約者を決めるだなんて。いくらホムンクルスの私でも意味がわからないと思えた。
思い出話と、理由を話してくださったガイウス王子の目は、きちんとマールドゥを想っているからか、とても慈しんでいるものではあっても。
クローム同様に、私も今回の目的を知りたかった。
「……で。何故この時期に、王太子妃の候補としてマールを選んだ? お前の場合は、個人の感情だけでは動けないのだろう?」
「うん。それなんだけどさ?」
と、クロームが言う言葉に対して、王子はあっけらかんと真意を語ってくださった。
「…………女っ気のないお前に、陛下が良い加減妃に思う女を呼べ、だと?」
「うん。ルーイスのこともあるけど、いい加減孫の顔を見せる気もないのか、って。想う女性がいるんなら僕の場合、平民の可能性もあるのバレちゃってたみたい」
「それで、マールをか?」
「再会はこの間だったけど、定期的に調べていたし。なかなか有能な女性になってたしね? なら、将来の王妃にも教育さえ受けさせれば支障はないかなって?」
「……本音は?」
「ふふ。マールドゥじゃなきゃ、いやだったから!」
「……はぁ」
本当に王子様? と今回も思うけど。チェストに似てるのであれば、クロームとも意気投合するというのか。いくらか、クロームは呆れたため息を吐いたが、最後に王子を軽く小突いた。
「ちゃんと、マールの意思を聞いた上で娶れ!」
「まあ。そのつもり。昔の時は、むしろ睨まれてたけどー?」
「あの時は王子じゃないと偽っていたしな?」
「そうだね?」
今は王子には見えない普通の人間。
これが、将来の国王になる人間なのだろうか?
けど、王とて一人の人間だ。息抜きする時間くらいあってもおかしくはない。だから、この方はクロームの前ではいつもどおりでいるのだろう。
この性格を、マールドゥが受け入れるのかはわからないけど。
「ん、んん……?」
そうこうしているうちに、気絶していた彼女が目を覚ました。
「大丈夫ですか? マールドゥさん」
「う、うん? あれ……あたし、殿下に告られ?」
「うん! 告ったよ、マールドゥ!」
「ひゃい!?」
マールドゥが起きたとわかれば、王子はまた全開の笑顔で彼女に詰め寄っていった。
たしかに、クロームには劣る(私個人では)けど、なかなかの美貌の持ち主で、将来の国王になる存在の王子様に詰め寄られれば。
裏若き乙女? なマールドゥでも驚くだけですまないだろう。そして、また気絶する前くらいに顔どころか首や耳まで真っ赤になってしまった。
「まだあくまで、婚約者候補だけど。僕個人としては、君のことが好きなんだ。君はあんまり覚えてないだろうけど、クロームとクエストの時に組んでいたただのガイとして出会った頃からね!」
「ガ……ガイって、あの?」
「覚えててくれたんだね!?」
「ひゃい!?」
「……あんなガキの頃から、こいつはお前に惚れてたらしいんだ。マール」
「え、え、え!?」
男二人が畳みがけに言っていく言葉に、マールドゥはまたもや脳内の許容範囲を越えてしまったのか。
またまた気絶してしまい。けど、王子は今日は帰ると席を立ってしまったのだ。
「決意は変わらないけど、他に候補はいないわけじゃないからさ?」
「お前の場合、取り潰すつもりだろう?」
「もち!」
「……陛下の心労を増やすなよ?」
「ふふ」
と言ったのを最後に。転移の魔法で消え去ってしまい、クロームはポーションの生成をすると部屋から出て行き、私にはマールドゥの介護を頼むと言い残した。
(……大丈夫かな、マールドゥさん)
まだ目が覚めない、囚われ? のお姫様のようになってしまった彼女に、起きたらなんと声をかけていいのか私でも流石に悩んだ。
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