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25-1.幼い出会い(ガイウス視点)
しおりを挟む★・☆・★(ガイウス視点)
十五年前。
まだ、七歳の王子だった頃。
当時父上にしか転生者であることを告げてはいなかったが、お陰で気に入られてしまい、将来の王太子としての英才教育を強いられていたが。
ずっとは息が詰まるし、転生前は成人男性だったもんで幾らかは遊んでいたかった。
だから、早々にテレポートである転移の魔法を覚えて、短い休憩時間をお忍びに当てて城下に遊びに出かけたりしていた。
一応王家の証である金髪をかつらで隠して、冒険者ギルドに赴き、子供でも出来るクエストを受けに……名前もガイと簡易的な名前にして孤児の出自と偽った。
「あー、ガイ。今日はペアで受けれるクエストしか残っていないんだけど」
「えー、そうなんだー?」
いつもならソロで受けられるクエストは適度に残っているのだが。どうやら、今世代は子供が多く、お使いの駄賃代わりのクエストを受ける年齢に達したのが、随分とやってきたそうだ。
だが、ペアや複数で行われるクエストであれば、受けられると言う。
「……なんだ。ペアなどで受けれるクエストしかないのか?」
どうしようかな、と思っていたら後ろから声が聞こえてきた。同じくらいの男の子かな? なんて振り返れば。
(……わーお)
不機嫌丸出しだけど、今の僕以上に綺麗な男の子が立っていた。七歳くらいだけど、髪は漆黒でも艶々で。まつげも長く、目も切れ長。
王家の縁戚には不釣り合いな髪色だから貴族の子? とも思ったけど。今の僕のように、庶民の服を着てるからそこまではわからない。
「やあ、クローム。今聞こえてたかもしれないが、あいにくとペア以外のクエストはほとんど埋まってしまってな?」
「……そうか」
「あ、じゃあじゃあ。僕とペアになろうよ~?」
「……は?」
うん、いきなり言い出すのは無理あったかもしれないけど……僕はこのクロームって言う男の子に興味を持った。
外面の美しさだけでなく、変に大人びた内面について。
もう少し、知ってみたいと思ったからだ。
「たしかに、人数は合うが……ガイ、いいのか? クロームは少し厳しいぞ?」
「僕はいいよー?」
「……わかった。受けよう。クエストは何が残っているんだ?」
「初回だからな? 二人にはかえる取り二十匹が妥当だな?」
「いいよー。僕かえる取り得意だし~?」
「構わない。……俺はクローム=アルケイディスだ」
「僕はただのガイ。家名とかはないよー?」
「……何?」
「けど、クローム。ガイの腕はいいぜ? 組んで損はしない」
「……わかった」
まだ俺様と自分を偽っていない、クロームとの出会いはこれが初めてだった。
そして、ペアを組んですぐに。この子は出来る力量を持っているなと理解できた。動作に無駄がないのだ。
かえると呼ばれている、ヌメヌメがすっごいエレクトフロッグの背後から的確に捕獲する素早さ。袋に詰め込む手際の良さ。
同じ転生者かとも思ってたけど、どうやら家庭環境に理由があった。
「クローム君はなんでも出来るんだねー?」
「……家の事を自分で出来るようになれば、なんてことない。お前は孤児だから、孤児院でもそうではないか?」
「あ、うん。まあ」
孤児どころか、この国の王家だってバラしてもいいかなとは思ったが。まだクロームを観察していたかった。
僕も適当にかえるを袋に入れて、二人で合計二十匹捕まえるのに一時間もかからなかったのだった。
「……職員が言っていたように、腕はいいな?」
「えへ~。僕は生活もかかっているし?」
「まあ、俺もだが」
さて、これで帰るのもつまらない。
背を向けたクローム目掛けて、鑑定の技能である鑑定眼を使うことにした。
『クローム=アルケイディス(七歳)
HP1000/10000
MP3000/30000
『ユニーク技能』
異世界召喚……有機体でなければ、なんでも異世界の物質を召喚出来る』
おやおやおやおや!
随分とユニークな技能を持っているじゃないか!
しかし、見たところ使用した経験はない様子。
もったいない! と僕は彼に自分が鑑定眼持ちであることを告げると決めた。それと、
「ねーねー、クローム君!」
「……なんだ?」
終始無愛想な表情がもったいないが、僕は決めたからにはもう止めるつもりはない。
かつらを取って、隠してた金髪を彼の前に晒した。
「おま…………いいや、貴方様は!」
「ふふ。僕の本当の名前は、ガイウス=フォン=ラシャート。偽った姿を見せてごめんね? けど。君にならいいと思ったんだ?」
当然、王家の金髪を披露したら膝をつかせちゃったけど、顔を上げてって言ったら渋々だったけど僕を見てくれた。
なんか顔色最悪だけど、なんか家で問題でもあるのかな?
「殿下……お、いえ、私は」
「無理にかしこまらなくていいよ?」
「ですが」
「僕は君ときちんと友達になりたいから、素姓を明かすことにしたんだ」
「とも……だち?」
「うん。打算も何もないよ? クローム、君と友達になりたいんだ」
「俺と……ですか?」
「うん。あと君の隠れてた技能も無断で鑑定しちゃったし」
「殿下……鑑定眼を?」
「うん、持ってる。とりあえず、転移でギルドに行くから僕の手をつかんで」
「え、は?」
かつらをもう一度かぶってから、急いでギルドの近くまで転移して。まだ放心してたクロームの手を引きながら、さっきの職員がまだいたので二人分のかえるを渡して報酬を得て。
さらにさらに、僕のお気に入りの秘密の洞窟へと転移したのだった。
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