上 下
60 / 94

23-3.打ち合わせ(チェスト視点)

しおりを挟む





 ★・☆・★(チェスト視点)








「なーんで、連れてってくれなかったのよぉおおおおおおおお!!!!」

「うぉっと!?」

「……ギルマスも、王太子殿下もお人が悪いですね」

「ほんとですよぉおおお!!」


 王太子殿下はとっくに転移の魔法で王宮に帰られたが。僕とギルマスは荷馬車で街に帰ってきて、生産ギルドのマスターの執務室に到着したら……説明を聞き終えたマールに突っかけられたわけである。

 副ギルマスも片眼鏡が壊れんばかりに、艶出しの布で拭きまくっていた。


「まあ、そうは言いますがね? クローム君とセリカさんが結ばれたことは、僕とチェスト君も今日知ったわけですから」

「でもでもでもぉおおおおお!? クロームのやつ……なんで、すぐに! 私に教えないんじゃぁあああああ!!」

「落ち着きなさい、マールドゥ」

「だってだって、副ギルマスぅ!!」

「殿下が行かれたのであれば、私達の出番は必要ありませんから」

「むぅ……」


 暴走するマールの気持ちは分からなくはないけど、今は打ち合わせだ。

 クロとセリカちゃんの協力も得られたんだから、マールや副ギルマスにもちゃんと報告しなきゃ。


「クローム君とセリカさんの協力も得られました。例のエーテル生成液が完成して受け取る際に……ミリアムやビーツ、他に洗脳を受けた職員の暗示を解きます」

「けど、ギルマス~。クロームはどうやって解くんですか? あいつ魔術師でもなんでもないですよ?」

「殿下から提案がありましてね?……おふたりのご関係を、婚約まで引き上げて公表させればよいのかと」

「「はい??」」

「えーつまり、ショック療法ですよ。クローム君の身体もだいぶ元通りにまで戻っていますし。……彼を密かに想っていた女性陣達の目を覚ますのにもいいでしょう?」

「え、よくわかんないですけど?」

「マール君、あなたは違いますが。クローム君の美貌は王家にも匹敵するでしょう? 女性にとって憧れの存在ではありませんか?」

「え、ええ、はい」


 たしかに、マールは綺麗なモノや可愛いモノが大好きではあるけど。クロについては、昔からクロを知り過ぎているからって理由でクロを恋愛対象には見ていなかった。

 一度も? と昔聞いたりはしたが、あの性格だから夢が壊れたと苦笑いしてたのに。……僕はもしや告白して玉砕したんじゃ、と思ったけど。

 今は、気にしていないのかセリカちゃんを応援してたって聞いたし。吹っ切れているならいいけど、とは思っているが。

 それは置いといて、たしかにクロの顔立ちはガイウス殿下に匹敵するんだよね~?


「今、セリカさんのトレーニングメニューによって。それはさらに磨かれています。それに今日、初めて彼に謝罪されたんですよ」

「く、クロームがですか!?」

「ほう、あのクローム=アルケイディスがですか」

「問題児ばりの性格も、セリカさんのお陰でかなり改善されていました。であれば、ふたりの絆は確実なものです。表向きは、僕らがお祝いする形で執務室に案内します」

「で、婚礼の誓約を発行するんですか~?」

「そうですね、チェスト君。けど、それを妨害するのはディスケット並びに洗脳を受けた職員ですから……そこを」


 などと、こしょこしょ話し合っていたら、ドアをノックする音が聞こえたのだった。


「し、失礼……します」


 用件があったのは、洗脳を受けているビーツだった。

 表向きはいつも通りのオドオドした態度のままだけど……。この職員にあんな秘密がねぇ?


「おや、ビーツ。僕にですかな?」

「は、はい! あ、あとチェストさんもですが……」

「僕~?」

「く、クロームさんのポーションが完売してしまったので、ギルマスと担当の職員を……と」

「ああ。冒険者の人達ですか……」

「わかった~。今日納品だったから持ってくね~?」

「お、お願いします……!」


 洗脳は、裏の顔を見せると言うが。

 こうも、表の顔で隠せられるとは。小物だと思ってたディスケットは、自分の技能スキルの使い方を間違っているんじゃ……と思わずにはいられなかった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

アレキサンドライトの憂鬱。

雪月海桜
ファンタジー
桜木愛、二十五歳。王道のトラック事故により転生した先は、剣と魔法のこれまた王道の異世界だった。 アレキサンドライト帝国の公爵令嬢ミア・モルガナイトとして生まれたわたしは、五歳にして自身の属性が限りなく悪役令嬢に近いことを悟ってしまう。 どうせ生まれ変わったなら、悪役令嬢にありがちな処刑や追放バッドエンドは回避したい! 更正生活を送る中、ただひとつ、王道から異なるのが……『悪役令嬢』のライバルポジション『光の聖女』は、わたしの前世のお母さんだった……!? これは双子の皇子や聖女と共に、皇帝陛下の憂鬱を晴らすべく、各地の異変を解決しに向かうことになったわたしたちの、いろんな形の家族や愛の物語。 ★表紙イラスト……rin.rin様より。

男装の皇族姫

shishamo346
ファンタジー
辺境の食糧庫と呼ばれる領地の領主の息子として誕生したアーサーは、実の父、平民の義母、腹違いの義兄と義妹に嫌われていた。 領地では、妖精憑きを嫌う文化があるため、妖精憑きに愛されるアーサーは、領地民からも嫌われていた。 しかし、領地の借金返済のために、アーサーの母は持参金をもって嫁ぎ、アーサーを次期領主とすることを母の生家である男爵家と契約で約束させられていた。 だが、誕生したアーサーは女の子であった。帝国では、跡継ぎは男のみ。そのため、アーサーは男として育てられた。 そして、十年に一度、王都で行われる舞踏会で、アーサーの復讐劇が始まることとなる。 なろうで妖精憑きシリーズの一つとして書いていたものをこちらで投稿しました。

エルティモエルフォ ―最後のエルフ―

ポリ 外丸
ファンタジー
 普通の高校生、松田啓18歳が、夏休みに海で溺れていた少年を救って命を落としてしまう。  海の底に沈んで死んだはずの啓が、次に意識を取り戻した時には小さな少年に転生していた。  その少年の記憶を呼び起こすと、どうやらここは異世界のようだ。  もう一度もらった命。  啓は生き抜くことを第一に考え、今いる地で1人生活を始めた。  前世の知識を持った生き残りエルフの気まぐれ人生物語り。 ※カクヨム、小説家になろう、ノベルバ、ツギクルにも載せています

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

パラノイア・アルケミスト〜逃走ホムンクルスの生存戦略〜

森樹
ファンタジー
元傭兵の青年ブレッドと、禁忌の錬金術で作られたホムンクルスの少年少女・アルフとフィーネが出会った時、運命の歯車が動き出す。 アルフとフィーネを巡る陰謀に巻き込まれたブレッドは、顔見知りの魔女カミラを道連れにアルフとフィーネの面倒をみることになる。 狂気をまとった禁忌の錬金術師イゴールが率いる組織から、ブレッドとカミラは二人を守る事が出来るのか。 蒸気機関車の走る大陸で起こる、若者達が生き残る為に戦いながらも幸せを探して生活をしていく物語。 ※リハビリ作品です。長期連載停止中の『宰相夫人の異世界転移』も近々復活したいです。

異世界着ぐるみ転生

こまちゃも
ファンタジー
旧題:着ぐるみ転生 どこにでもいる、普通のOLだった。 会社と部屋を往復する毎日。趣味と言えば、十年以上続けているRPGオンラインゲーム。 ある日気が付くと、森の中だった。 誘拐?ちょっと待て、何この全身モフモフ! 自分の姿が、ゲームで使っていたアバター・・・二足歩行の巨大猫になっていた。 幸い、ゲームで培ったスキルや能力はそのまま。使っていたアイテムバッグも中身入り! 冒険者?そんな怖い事はしません! 目指せ、自給自足! *小説家になろう様でも掲載中です

百年に一人の落ちこぼれなのに学院一の秀才をうっかり消去しちゃいました

平田加津実
ファンタジー
国立魔術学院の選抜試験ですばらしい成績をおさめ、百年に一人の逸材だと賞賛されていたティルアは、落第を繰り返す永遠の1年生。今では百年に一人の落ちこぼれと呼ばれていた。 ティルアは消去呪文の練習中に起きた誤作動に、学院一の秀才であるユーリウスを巻き込んでしまい、彼自身を消去してしまう。ティルア以外の人の目には見えず、すぐそばにいるのに触れることもできない彼を、元の世界に戻せるのはティルアの出現呪文だけなのに、彼女は相変わらずポンコツで……。

処理中です...