51 / 94
20.とうとう?(セリカ視点)
しおりを挟む★・☆・★(セリカ視点)
……本人以外とは言え、色んな人に自分の気持ちがバレていたとは。
(なんでよぉおおおおおお!!!!)
常日頃は、無愛想無表情(自分で言ってて哀しい)の私だから、表に感情が表れていないからシャイン以外知られていないと思ったのにぃいい!!
なんで、マールドゥにもだけどチェストにもバレバレなのよ!?
これじゃ、マスターに知られるのも時間の問題……けど、何故か彼らには応援されているし。
いいのか? と思っても二人には反対されるどころか『くっついちゃえ!』な勢いで応援してくるのだ。
嬉しいと言えば嬉しいが、マールドゥはまだしも挨拶以外そんなに多く言葉を交わしていないチェストにまで言われるとは。
私ってば、シャインの前以外でも表情が出るようになった?
いいことかもしれないけど、マスターの前ではほとんど出ていないから複雑だ!
「……シャインぅ」
困った時は、お母さんならぬ【恵の豊穣】に相談に乗ってもらうべし。
今日は稼働しているけど、管の片方はマスターの衣類。もう片方はまだまだ続けている糖質OFFの食材生成。ちなみに、今日はゼロ麺でもパスタタイプを作ってもらっている。
シャインは私が情けない声で呼びかけても、間を置いて声を発してくれた。
【……情けない声を出すな、セリカ】
「だって……だって、マスターにはまだ言ってないのに。マールドゥやチェストには、私の気持ちがバレたんだもーん」
【ほう? 反対されたのか?】
「ううん。……逆に応援された」
【なら、良いことではないか?】
「けどぉ。私シャイン以外には顔に出にくいのに、どこでバレちゃったんだろ~……」
【そうか? あなたは意外な部分で表情が出ていると思う。我の前だけだと思いがちだが、ヒトと言うのは意識していない部分でも表情は出るものだ】
「……それは、シャインに組み込まれた知識?」
【諾】
わずか三ヶ月の差とは言え、シャインには様々な人間の知識が組み込まれている。
それをうまく学習して、人間のように人格を持つ魔導具として稼働しているが。娘? である私が生まれてからは、特にお母さんのような世話焼きさんが出てる気がする。
まだ、私の錬成が完了していない、エーテル培養液の管の中にいた時はもうちょっと若々しかったような。これ以上言うのは、シャインを傷つけちゃうのでよしておこう。
「けど、マスターだいぶ痩せたね~? 記憶には組み込まれているけど、本当にあんなにも綺麗だなんて思わなかったよ~」
【ヒトの美醜については、我はあまりよくわかってはいないが。創造主の姿については、あなたのお陰であのように変貌したのだろう?】
「……私は自分に組み込まれた異世界のレシピを伝えただけだもん」
たしかに、自分のためでもあったが。今のマスターなら寿命はほぼ元通りだし、細胞がわずかでも組み込まれてリンクさせられている私も生き長らえる。
けど、最終目標の猫っ可愛いがられる方法も、素直になれていない性格じゃ、いきなりマスターに飛びついても驚かせるだけだ。
もうちょっと……もうちょっと、素直に今シャインに見せているような性格が出せればな……と思うけど。なんだか恥ずかしくて出来ない! 私のばか。
【しかし、以前にも言っていたが。創造主には笑顔を見せろと言われたのだろう? であれば、やはり自分の感情を表に出す練習をしておけと我は言ったが?】
「う……だけど、あなた以外の前では。こわばっちゃうの……」
【……であれば。親愛の情を見せるべく。やはり髪か頬に口づ】
「わーわー! あれはもう無理ぃいいいい!!」
【……だから、勢いが大切と言ったでしょうに】
「だってだって!!」
あれは本当に勢いからだったけど。次やれと言われてもできない!
私も出来過ぎた真似だったと思うし、もう一回やれと言われても恥ずかしくて無理!!
髪を撫でる程度は、まだ出来るけど……キス……キスは無理ぃいい!!
いずれは口に……って、馬鹿馬鹿絶対絶対無理ぃいいい!!
とりあえず、シャインには無理!! ともう一度言うと、ため息を吐いたかと思うくらい長い間を置かれた。
【あなたは創造主に恋をしているのでしょう? 好いている相手に親愛の情を見せなくては、気持ちも伝わらないのでは?】
「け、けど……可愛くないとこばっかり見せているし。見た目は置いとくにしても、マスターは私に振り向いてもらえないよぉ……」
【……その素直さを創造主にも見せればいいのに】
「だってぇ……」
【…………で、どうします? 創造主?】
「…………………………え?」
シャインが呼びかけた、と言うことは……と、入り口の方に振り替えってみると。
これまで以上に、湯気が立つんじゃないかってくらいに、顔を赤くさせていたマスターが立っていたのだった。
「……………………ま、マスター?」
「……八つ時の時間になってもいないから、探し、たのだが」
もしか、しなくとも、聞かれていた?
私の素の性格や、他諸々。
さらには、私がマスターを想っていることも……?
「…………い、いやああああああ!!!! 穴があったら入りたいぃいいいいい!!!!」
「お、おおお、落ち着け、セリカ!?」
【許容範囲、の限界値。創造主、セリカを止められるのはあなただけです】
「は、俺様!?」
「いやあああああああああ!!!! もう嫌!! マスターに知られたぁああああああ!!!!」
「と、とにかく落ち着け、セリカ!!?」
「ふぇ!?」
ごろごろ転がりながら、身悶えていた私の体を。
マスターは抱きとめて、子供をあやすような感じで髪を撫でてくれた。……これは、夢?
「ちゃんと、俺様にも言わせろ! お前が実はここまで感情の起伏が激しいホムンクルスだとは思わなかったが」
「……ごめんなさい」
「誰も悪いとは言っていないぞ?」
すると、髪を撫でてた手で顎に手を添えられた。
なんで? と思っていると上向きにさせられて、マスターの綺麗なドアップが間近に見えた。すっごくすっごく綺麗な笑顔!! じゃなくて!?
「え、え?」
「まさか……と昨日思ってたことが当たってはいたとはな?」
「当たって、た?」
「お前が、一昨日の夕飯で俺様に向けてきた微笑み……あれでなんとなく勘付いた」
「ふぇ!?」
「まさか。お前の素がこんなにも愛らしいとは思わなかったぞ?」
そして、額に……まさかまさか口づけられてしまった。
そのまま、私は感情が追いつかずに、気絶してしまい、マスターを大いに慌てさせることになってしまったが。
気がついた時は、私は自分の部屋のベッドで寝かしつけられていて、マスターは椅子に座りながら私の顔を覗き込んでいた。
おまけに手を握ってて!?
「ま、マスター!?」
「起きたか。まだ告げてもいないのに、気を失うとはな?」
けど、マスターは言葉と裏腹にとても楽しそうな表情でいた。
空いている方の手を私に伸ばすと、髪を梳いてくれた。
「つ、げてない……?」
「俺様が、お前を好いていることだ」
「す!?」
う、嘘だ嘘だ!? と口にしても、マスターは首を軽く横に振った。
「いいや、本当だ。セリカ、俺様はお前が好きだ」
「ふぇ……!?」
もう昇天してもいいんじゃ……と思いかけたが、マスターが無理に布団ごと私を抱きしめてきて返事を催促してきたのだった。
「直接聞きたい。それに、なぜその愛らしい性格を隠していた?」
「わ、わかん、ない!……シャインの前だと、素直になれてただけで!?」
「今後は出来るだけそうしてくれ。返事は?」
「ほ、ホムンクルスだけ、どいいの?」
「問題ない。国から禁止されてるわけではないからな?」
「……わ、私……も、マスターが…………す、き!」
「よし!」
そうして限界ギリギリの力まで抱きしめられて。
キスはなかったが、マスターではなく『クローム』と呼ぶように許可されたのだった。
0
お気に入りに追加
64
あなたにおすすめの小説
白紙の冒険譚 ~パーティーに裏切られた底辺冒険者は魔界から逃げてきた最弱魔王と共に成り上がる~
草乃葉オウル
ファンタジー
誰もが自分の魔法を記した魔本を持っている世界。
無能の証明である『白紙の魔本』を持つ冒険者エンデは、生活のため報酬の良い魔境調査のパーティーに参加するも、そこで捨て駒のように扱われ命の危機に晒される。
死の直前、彼を助けたのは今にも命が尽きようかという竜だった。
竜は残った命を魔力に変えてエンデの魔本に呪文を記す。
ただ一つ、『白紙の魔本』を持つ魔王の少女を守ることを条件に……。
エンデは竜の魔法と意思を受け継ぎ、覇権を争う他の魔王や迫りくる勇者に立ち向かう。
やがて二人のもとには仲間が集まり、世界にとって見逃せない存在へと成長していく。
これは種族は違えど不遇の人生を送ってきた二人の空白を埋める物語!
※完結済みの自作『PASTEL POISON ~パーティに毒の池に沈められた男、Sランクモンスターに転生し魔王少女とダンジョンで暮らす~』に多くの新要素を加えストーリーを再構成したフルリメイク作品です。本編は最初からすべて新規書き下ろしなので、前作を知ってる人も知らない人も楽しめます!
最強ドラゴンを生贄に召喚された俺。死霊使いで無双する!?
夢・風魔
ファンタジー
生贄となった生物の一部を吸収し、それを能力とする勇者召喚魔法。霊媒体質の御霊霊路(ミタマレイジ)は生贄となった最強のドラゴンの【残り物】を吸収し、鑑定により【死霊使い】となる。
しかし異世界で死霊使いは不吉とされ――厄介者だ――その一言でレイジは追放される。その背後には生贄となったドラゴンが憑りついていた。
ドラゴンを成仏させるべく、途中で出会った女冒険者ソディアと二人旅に出る。
次々と出会う死霊を仲間に加え(させられ)、どんどん増えていくアンデッド軍団。
アンデッド無双。そして規格外の魔力を持ち、魔法禁止令まで発動されるレイジ。
彼らの珍道中はどうなるのやら……。
*小説家になろうでも投稿しております。
*タイトルの「古代竜」というのをわかりやすく「最強ドラゴン」に変更しました。
男装の皇族姫
shishamo346
ファンタジー
辺境の食糧庫と呼ばれる領地の領主の息子として誕生したアーサーは、実の父、平民の義母、腹違いの義兄と義妹に嫌われていた。
領地では、妖精憑きを嫌う文化があるため、妖精憑きに愛されるアーサーは、領地民からも嫌われていた。
しかし、領地の借金返済のために、アーサーの母は持参金をもって嫁ぎ、アーサーを次期領主とすることを母の生家である男爵家と契約で約束させられていた。
だが、誕生したアーサーは女の子であった。帝国では、跡継ぎは男のみ。そのため、アーサーは男として育てられた。
そして、十年に一度、王都で行われる舞踏会で、アーサーの復讐劇が始まることとなる。
なろうで妖精憑きシリーズの一つとして書いていたものをこちらで投稿しました。
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
エルティモエルフォ ―最後のエルフ―
ポリ 外丸
ファンタジー
普通の高校生、松田啓18歳が、夏休みに海で溺れていた少年を救って命を落としてしまう。
海の底に沈んで死んだはずの啓が、次に意識を取り戻した時には小さな少年に転生していた。
その少年の記憶を呼び起こすと、どうやらここは異世界のようだ。
もう一度もらった命。
啓は生き抜くことを第一に考え、今いる地で1人生活を始めた。
前世の知識を持った生き残りエルフの気まぐれ人生物語り。
※カクヨム、小説家になろう、ノベルバ、ツギクルにも載せています
最恐魔女の姉に溺愛されている追放令嬢はどん底から成り上がる
盛平
ファンタジー
幼い頃に、貴族である両親から、魔力が少ないとう理由で捨てられたプリシラ。召喚士養成学校を卒業し、霊獣と契約して晴れて召喚士になった。学業を終えたプリシラにはやらなければいけない事があった。それはひとり立ちだ。自分の手で仕事をし、働かなければいけない。さもないと、プリシラの事を溺愛してやまない姉のエスメラルダが現れてしまうからだ。エスメラルダは優秀な魔女だが、重度のシスコンで、プリシラの周りの人々に多大なる迷惑をかけてしまうのだ。姉のエスメラルダは美しい笑顔でプリシラに言うのだ。「プリシラ、誰かにいじめられたら、お姉ちゃんに言いなさい?そいつを攻撃魔法でギッタギッタにしてあげるから」プリシラは冷や汗をかきながら、決して危険な目にあってはいけないと心に誓うのだ。だがなぜかプリシラの行く先々で厄介ごとがふりかかる。プリシラは平穏な生活を送るため、唯一使える風魔法を駆使して、就職活動に奮闘する。ざまぁもあります。
家庭菜園物語
コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。
その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。
異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。
パラノイア・アルケミスト〜逃走ホムンクルスの生存戦略〜
森樹
ファンタジー
元傭兵の青年ブレッドと、禁忌の錬金術で作られたホムンクルスの少年少女・アルフとフィーネが出会った時、運命の歯車が動き出す。
アルフとフィーネを巡る陰謀に巻き込まれたブレッドは、顔見知りの魔女カミラを道連れにアルフとフィーネの面倒をみることになる。
狂気をまとった禁忌の錬金術師イゴールが率いる組織から、ブレッドとカミラは二人を守る事が出来るのか。
蒸気機関車の走る大陸で起こる、若者達が生き残る為に戦いながらも幸せを探して生活をしていく物語。
※リハビリ作品です。長期連載停止中の『宰相夫人の異世界転移』も近々復活したいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる