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18-2.若鶏の竜田揚げを作る①(セリカ視点)

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 ★・☆・★(セリカ視点)






 今日のお昼は、マスターがきっと気にいると思うわ。

 マールドゥがら届けてもらってる食材は、基本的に傷みにくいのは貯蔵庫に。他は、魔導具『冷蔵庫』にしまって保管している。

 冷蔵庫は、私がシャインから生まれる前。それこそ、マスターがこの世に生まれる前から存在しているらしい、伝統のある魔導具らしい。出来た経緯とかは、肉や魚が傷みにくいようにさせるため、と昔の錬金術師に依頼したことがきっかけで生み出されたらしい。

 謂れは色々あるが、私にもありがたかった。何せ、取り寄せたりシャインで作り出す食材は割と生物が多い。

 傷みやすく、保存も少々難しい。

 だから、この冷蔵庫が最初からあって助かっている。

 そして、これから作る『揚げ物』の素材も生物だからだ。


「今日のメインは、若鶏の竜田揚げと言うのを作る」

「む。とり……はなんだ? コカトリスとか色々あるが」

「家畜に多いニワトリを使う。その中でも卵を産んでいない、若いものだと肉質が柔らかくて美味しい」

「わかった。俺様はなにを手伝えばいい?」

「ん。揚げ物にかけるソースを作ってほしい。ゆで卵、マヨネーズ、玉ねぎのみじん切りとか、ピクルスを刻んで混ぜるの」

「ん? 要は、マヨネーズの中に刻んだ材料を入れて混ぜるくらいか?」

「そう。あと塩胡椒するくらい」

「ゆで卵は固めがいいのか?」

「うん、お願い」


 ああ、ああ。

 まるで新婚生活のようではあるけど、結局まだマスターに想いを告げてはいない。

 もうだいぶ痩せたからいいかなとは思っても、まだ例のエーテル培養液の件については解決していないし、マールドゥ達から特に連絡も来ない。

 チェストが時々、経過報告をしてくれてはいるが、まだ生産ギルドこちら側に任せてくれ、とだけ言われているので、マスターと私の出る幕がない。

 ひとまず、私達は主にマスターの健康管理と減量生活ダイエットに専念することになり、今日になってやっと標準間近になるくらい痩せた。

 そのお陰か、マスターを直視しにくい。

 あと10キロ近く痩せなくてはいけないとは言え、無駄な贅肉がほとんど落ちてきたせいで……その。

 私の本来の目的の一つである、美しいマスターに猫っ可愛がられたいのはまだ継続中ではあるけれど。

 生成後に刻まれた、クローム=アルケイディス我が創造主の本来の姿が、こんなにも美しいとは思わなかった!

 今、以前に教えたゆで卵の調理に取りかかってるマスターの横顔をチラリと覗き見る。


(……ほとんど、記憶に刻まれているのと同じ。綺麗……)


 私と同じかそれ以上に長く美しいまつげ。

 少し前に散髪してあげた、短くとも艶のある黒い髪は流れるように整えられていて。

 無駄に贅肉でたるんでいた顎の造形は、ほぼシャープ。

 首もほとんどすらっとしていて、思わずすがりつきたいくらいの色気を醸し出しているような気がした。

 そして、シャインに生成してもらった新しい服に身を包んだ体つきも、ほとんどシャープで腕や足の筋肉も綺麗についている。

 これを、元に戻したプロデュースした私やシャイン生成した食材のおかげとは言え、美しい、美し過ぎる!

 今日まで見慣れてきたはずの顔なのに、綺麗になっていくと直視しにくい!

 けど、私は感情が表面に出にくいお陰か、マスターと向き合う時は眉間に視線を向けているので、なんとかバレてはいないと思う。

 それに、見惚れててはいけないから、私も調理に取り掛かろう。


(お肉は筋をとって、血管も綺麗に取り除いて)


 下処理をしたら、大きめのブロックに切り分けて。下味用に塩胡椒を馴染ませてから、卵を肉のボウルに落としてよく揉み込む。

 これが出来たら、粉をまぶす前にマスターのところであとからかけるタルタルソースの下準備を手伝う。


「結構みじん切りにした方がいいのか?」

「好みにもよるけど、細かい方が揚げ物によく絡むと思う」

「そうか」


 そして、ゆで卵も茹で上がったら、黄身と白身を分けてみじん切りにして。タルタルソースのボウルに全部入れて混ぜて、塩胡椒で味を整えてまずは味見。


「美味い! ピクルスは少し苦手だったが、独特の匂いも軽減されてマヨネーズとよく合うな!」

「ん。ニホンだと、他のピクルスとも合うらしい」

「他の?」

「らっきょう、タクアンと言うもの。とても合うらしい。……今度シャインで作ってみる?」

「是非とも頼む!」


 ああ、ああ。

 その笑顔の破壊力をマスター自身知っているのだろうか!?

 本当に、綺麗になってからすんごいんだから!

 主に、私の心臓が保たない意味で!


「ん。じゃあ、今から揚げていく」


 とりあえず、平素を装って、料理の仕上げに向かう。

 今日も美味しい料理を作って、マスターに喜んでもらうんだから!
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