47 / 94
18-2.若鶏の竜田揚げを作る①(セリカ視点)
しおりを挟む★・☆・★(セリカ視点)
今日のお昼は、マスターがきっと気にいると思うわ。
マールドゥがら届けてもらってる食材は、基本的に傷みにくいのは貯蔵庫に。他は、魔導具『冷蔵庫』にしまって保管している。
冷蔵庫は、私がシャインから生まれる前。それこそ、マスターがこの世に生まれる前から存在しているらしい、伝統のある魔導具らしい。出来た経緯とかは、肉や魚が傷みにくいようにさせるため、と昔の錬金術師に依頼したことがきっかけで生み出されたらしい。
謂れは色々あるが、私にもありがたかった。何せ、取り寄せたりシャインで作り出す食材は割と生物が多い。
傷みやすく、保存も少々難しい。
だから、この冷蔵庫が最初からあって助かっている。
そして、これから作る『揚げ物』の素材も生物だからだ。
「今日のメインは、若鶏の竜田揚げと言うのを作る」
「む。とり……はなんだ? コカトリスとか色々あるが」
「家畜に多いニワトリを使う。その中でも卵を産んでいない、若いものだと肉質が柔らかくて美味しい」
「わかった。俺様はなにを手伝えばいい?」
「ん。揚げ物にかけるソースを作ってほしい。ゆで卵、マヨネーズ、玉ねぎのみじん切りとか、ピクルスを刻んで混ぜるの」
「ん? 要は、マヨネーズの中に刻んだ材料を入れて混ぜるくらいか?」
「そう。あと塩胡椒するくらい」
「ゆで卵は固めがいいのか?」
「うん、お願い」
ああ、ああ。
まるで新婚生活のようではあるけど、結局まだマスターに想いを告げてはいない。
もうだいぶ痩せたからいいかなとは思っても、まだ例のエーテル培養液の件については解決していないし、マールドゥ達から特に連絡も来ない。
チェストが時々、経過報告をしてくれてはいるが、まだ生産ギルドに任せてくれ、とだけ言われているので、マスターと私の出る幕がない。
ひとまず、私達は主にマスターの健康管理と減量生活に専念することになり、今日になってやっと標準間近になるくらい痩せた。
そのお陰か、マスターを直視しにくい。
あと10キロ近く痩せなくてはいけないとは言え、無駄な贅肉がほとんど落ちてきたせいで……その。
私の本来の目的の一つである、美しいマスターに猫っ可愛がられたいのはまだ継続中ではあるけれど。
生成後に刻まれた、クローム=アルケイディスの本来の姿が、こんなにも美しいとは思わなかった!
今、以前に教えたゆで卵の調理に取りかかってるマスターの横顔をチラリと覗き見る。
(……ほとんど、記憶に刻まれているのと同じ。綺麗……)
私と同じかそれ以上に長く美しいまつげ。
少し前に散髪してあげた、短くとも艶のある黒い髪は流れるように整えられていて。
無駄に贅肉でたるんでいた顎の造形は、ほぼシャープ。
首もほとんどすらっとしていて、思わずすがりつきたいくらいの色気を醸し出しているような気がした。
そして、シャインに生成してもらった新しい服に身を包んだ体つきも、ほとんどシャープで腕や足の筋肉も綺麗についている。
これを、元に戻した私やシャイン生成した食材のおかげとは言え、美しい、美し過ぎる!
今日まで見慣れてきたはずの顔なのに、綺麗になっていくと直視しにくい!
けど、私は感情が表面に出にくいお陰か、マスターと向き合う時は眉間に視線を向けているので、なんとかバレてはいないと思う。
それに、見惚れててはいけないから、私も調理に取り掛かろう。
(お肉は筋をとって、血管も綺麗に取り除いて)
下処理をしたら、大きめのブロックに切り分けて。下味用に塩胡椒を馴染ませてから、卵を肉のボウルに落としてよく揉み込む。
これが出来たら、粉をまぶす前にマスターのところであとからかけるタルタルソースの下準備を手伝う。
「結構みじん切りにした方がいいのか?」
「好みにもよるけど、細かい方が揚げ物によく絡むと思う」
「そうか」
そして、ゆで卵も茹で上がったら、黄身と白身を分けてみじん切りにして。タルタルソースのボウルに全部入れて混ぜて、塩胡椒で味を整えてまずは味見。
「美味い! ピクルスは少し苦手だったが、独特の匂いも軽減されてマヨネーズとよく合うな!」
「ん。ニホンだと、他のピクルスとも合うらしい」
「他の?」
「らっきょう、タクアンと言うもの。とても合うらしい。……今度シャインで作ってみる?」
「是非とも頼む!」
ああ、ああ。
その笑顔の破壊力をマスター自身知っているのだろうか!?
本当に、綺麗になってからすんごいんだから!
主に、私の心臓が保たない意味で!
「ん。じゃあ、今から揚げていく」
とりあえず、平素を装って、料理の仕上げに向かう。
今日も美味しい料理を作って、マスターに喜んでもらうんだから!
0
お気に入りに追加
64
あなたにおすすめの小説
どうぞ二人の愛を貫いてください。悪役令嬢の私は一抜けしますね。
kana
恋愛
私の目の前でブルブルと震えている、愛らく庇護欲をそそる令嬢の名前を呼んだ瞬間、頭の中でパチパチと火花が散ったかと思えば、突然前世の記憶が流れ込んできた。
前世で読んだ小説の登場人物に転生しちゃっていることに気付いたメイジェーン。
やばい!やばい!やばい!
確かに私の婚約者である王太子と親しすぎる男爵令嬢に物申したところで問題にはならないだろう。
だが!小説の中で悪役令嬢である私はここのままで行くと断罪されてしまう。
前世の記憶を思い出したことで冷静になると、私の努力も認めない、見向きもしない、笑顔も見せない、そして不貞を犯す⋯⋯そんな婚約者なら要らないよね!
うんうん!
要らない!要らない!
さっさと婚約解消して2人を応援するよ!
だから私に遠慮なく愛を貫いてくださいね。
※気を付けているのですが誤字脱字が多いです。長い目で見守ってください。
異世界転生 勝手やらせていただきます
仏白目
ファンタジー
天使の様な顔をしたアンジェラ
前世私は40歳の日本人主婦だった、そんな記憶がある
3歳の時 高熱を出して3日間寝込んだ時
夢うつつの中 物語をみるように思いだした。
熱が冷めて現実の世界が魔法ありのファンタジーな世界だとわかり ワクワクした。
よっしゃ!人生勝ったも同然!
と思ってたら・・・公爵家の次女ってポジションを舐めていたわ、行儀作法だけでも息が詰まるほどなのに、英才教育?ギフテッド?えっ?
公爵家は出来て当たり前なの?・・・
なーんだ、じゃあ 落ちこぼれでいいやー
この国は16歳で成人らしい それまでは親の庇護の下に置かれる。
じゃ16歳で家を出る為には魔法の腕と、世の中生きるには金だよねーって事で、勝手やらせていただきます!
* R18表現の時 *マーク付けてます
*ジャンル恋愛からファンタジーに変更しています
【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?
悪役令嬢に転生したけど記憶が戻るのが遅すぎた件〜必死にダイエットして生き延びます!〜
ニコ
恋愛
断罪中に記憶を思い出した悪役令嬢フレヤ。そのときにはすでに国外追放が決定しており手遅れだった。
「このままでは餓死して死ぬ……!」
自身の縦にも横にも広い肉付きの良い体を眺め、フレヤは決心した。
「痩せて綺麗になって楽しい国外追放生活を満喫してやる! (ついでに豚って言いやがったあのポンコツクソ王子も見返してやる‼︎)」
こうしてフレヤのダイエット企画は始まったのだった……
※注.フレヤは時々口が悪いです。お許しくださいm(_ _)m
【完結】魔法は使えるけど、話が違うんじゃね!?
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
「話が違う!!」
思わず叫んだオレはがくりと膝をついた。頭を抱えて呻く姿に、周囲はドン引きだ。
「確かに! 確かに『魔法』は使える。でもオレが望んだのと全っ然! 違うじゃないか!!」
全力で世界を否定する異世界人に、誰も口を挟めなかった。
異世界転移―――魔法が使え、皇帝や貴族、魔物、獣人もいる中世ヨーロッパ風の世界。簡易説明とカミサマ曰くのチート能力『魔法』『転生先基準の美形』を授かったオレの新たな人生が始まる!
と思ったが、違う! 説明と違う!!! オレが知ってるファンタジーな世界じゃない!?
放り込まれた戦場を絶叫しながら駆け抜けること数十回。
あれ? この話は詐欺じゃないのか? 絶対にオレ、騙されたよな?
これは、間違った意味で想像を超える『ファンタジーな魔法世界』を生き抜く青年の成長物語―――ではなく、苦労しながら足掻く青年の哀れな戦場記録である。
【注意事項】BLっぽい表現が一部ありますが、BLではありません
(ネタバレになるので詳細は伏せます)
【同時掲載】アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、小説家になろう
2019年7月 ※エブリスタ「特集 最強無敵の主人公~どんな逆境もイージーモード!~」掲載
2020年6月 ※ノベルアップ+ 第2回小説大賞「異世界ファンタジー」二次選考通過作品(24作品)
2021年5月 ※ノベルバ 第1回ノベルバノベル登竜門コンテスト、最終選考掲載作品
2021年9月 9/26完結、エブリスタ、ファンタジー4位
私は逃げます
恵葉
ファンタジー
ブラック企業で社畜なんてやっていたら、23歳で血反吐を吐いて、死んじゃった…と思ったら、異世界へ転生してしまったOLです。
そしてこれまたありがちな、貴族令嬢として転生してしまったのですが、運命から…ではなく、文字通り物理的に逃げます。
貴族のあれやこれやなんて、構っていられません!
今度こそ好きなように生きます!
転生錬金術師令嬢は全てを識るホムンクルスなので最強ですが、残念ながら竜にしか興味がございません。
忍丸
ファンタジー
ある日、目が覚めたらホムンクルスの美少女に転生していました――。
ホムンクルスは錬金術師が造り出した、すべてを識ると言われている存在。
世界の真理、究極の魔法、世界を滅ぼす方法――それらを図らずとも知識として得ることが出来た主人公は、最強――なのだが……。
「竜に関係すること以外の知識はクソだわ!!」
残念なことにこの令嬢、極度の竜フェチでした!
何をするにも、竜、竜、竜……。なんてこった、得た知識を活かすつもりがサラサラない!
でも、ひとたびその逆鱗に触れると、周囲を巻き込んで大変な事件を巻き起こす。
周囲の人間は、主人公に振り回されて大変……のはずなのだが。
父「娘たんハァハァ!」
メイド「可愛いは正義」
傭兵「筋肉があれば何でも出来る」
田中「邪眼がうずくぜ……」
恐ろしいことに、変態・変人しかいなかった。
これは、竜好きの錬金術師令嬢と、それを取り巻く変態・変人たちが紡ぎ出す、異世界ハイテンション・コメディー。最大の被害者は……竜だ!
異世界人生を楽しみたい そのためにも赤ん坊から努力する
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前は朝霧 雷斗(アサギリ ライト)
前世の記憶を持ったまま僕は別の世界に転生した
生まれてからすぐに両親の持っていた本を読み魔法があることを学ぶ
魔力は筋力と同じ、訓練をすれば上達する
ということで努力していくことにしました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる