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17-2.真実を探る(チェスト視点)
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信じられなかった。
ギルマスに呼ばれて、クリスタルで見せられた記録を見た今でも信じられなかった。
「「「まさか評判の悪いルーイス王子が(ですか)」」」
「ええ。エーテル生成液を作り出す上で、秘密裏に動けるとなると王宮に伝手があってもおかしくはないと思いましたので」
「えー、ギルマスが陛下と仲が良いとは聞いてましたけどぉ。御子息様である王子ともご縁があったんですか~?」
「まあ、一応。正確には王太子であられる長子のガイウス殿下とですよ?」
「しかし、ギルマス。何故第二王子殿下が、クローム=アルケイディスを亡き者にしようとしてたとわかったのですか?」
「僕も同じ意見で~す」
この国の現国王陛下と生産ギルドのマスターであるアークさんとが仲が良いのは職員の間では有名な話である。
だけど、クロを殺したい人間の黒幕が、何故その息子である王子のうち一人だと言うのがわかっただなんて、少し信じがたい。
クリスタルに映された、ルーイス王子とディスケットの記録は嘘偽りない真実。
しかも、王子が命令して例のエーテル生成液を国が作ってただなんて信じられなかったし?
僕と副ギルマスが聞くと、ギルマスは新しいタバコに火をつけて煙をゆっくりと吐いた。
「いえね? 陛下からもですが、ガイウス殿下から弟の行動が少し目立ってきた、よしみとして少し調べてくれないかと言われまして」
「「それだけ??」」
「ガイウス殿下とルーイス殿下との兄弟仲は良好とも言い難いですしね? 最初は王太子殿下を亡き者にせんがための計画かと思われて、殿下に変装させていただいて近づきましたが」
「先に血の外部調査を行ってから、記録を取り、ガイウス殿下に変装なさってから探りを入れた結果。黒と判明されたと?」
「そう言うことです」
「「「はぁ~~~~」」」
改めて実感したが、クロ何やってんの?
以前とは言え、どう言う接点がなきゃ王族にまで敵を作らないでしょ!?
ディスケットだけならまだ納得いくけど、継承権第二位とは言え、評判はあんまりよくないとは言っても、王子を敵に回すだなんて。
いったい何したんだ、あいつは。
「ギルマス、これクロームにはすぐに伝えます?」
「そこが悩みどころなんですよね~? 今のクローム君なら謝罪はしそうですけど、殿下やディスケット君はおそらくそれを望んでいないでしょう」
「ですよねー。あいつったら、なんで王家の一部とは言え敵を作ったのかしら?」
「僕もまだそこは調査中ですので、まだ検討はついていないのですが。……ただ、先に幼馴染みの二人に聞いておきたいことがあります」
「「はい??」」
「ルーイス殿下がセリカさんとクローム君が想いあっているのを一番に消そうとされました。なら、かなり前。クローム君がまだこの街にいた頃……恋の類で絡まれた男の中に、殿下もいらっしゃった……のではないかと僕は思っています」
「「ん、ん~~??」」
「考えられないわけではないですね。王族とは言え、城下に来られないわけではありませんし」
「思考は単純ですが。ディスケット君の本命とは違えど、クローム君を殺そうという発想は王族とは関係なく、一人の人間としてあり得ますからね?」
「あ~」
「いたかな~?」
クロームをとっちめようとする奴らは、それこそ星の数ほどいたし。その中に、ルーイス殿下がいたとまでは流石に思い出せない。
思い返しても、似た連中がクロームを陥れようと躍起になってたのくらいしか思い出せない。
街を離れた理由は、自分だけの研究がしたいからってカッコ良く最初は言ってたけど。結果はあの醜い巨漢になるだけのだらけた生活だった。
そこに、セリカちゃんが生まれたおかげで、体も性格も変わってきてはいるけどね?
今のあいつなら、たしかにギルマスが言うように、相手に謝罪くらいはしそうだけど、向こうが求めているのはそんな可愛い解決法じゃない。
「あ、ねーねー、ギルマス。失礼ですけど、ルーイス殿下って昔太ってました?」
「「へ?」」
「ほう。思い出しましたか?」
「んー。すっごく小ちゃい頃ですけど。クロームは見た目あれじゃないですか。なんか、ちょっとぽっちゃりした綺麗な金髪の男の子が、あいつに歯向かってた時期があったなーって」
「あ」
金髪はまあまあ市井にもいるけど。
この国の場合、輝けるくらい艶のある金髪は王族の証だ。
第一王子のガイウス殿下もだが、ルーイス殿下もそうだ。
そして、マールが言ってた体型の子供がクロに絡んでた時期があったのを、僕もようやく思い出した。
服は庶民のと誤魔化していたけど、あの金髪はそうそういないはず。
「ってことは、逆にクロを太らせて死なせようとしてたのって」
「私は王子についてはそんなに知らないけど。やな奴相手にならクロームに同じ目に合わせて死なせようとするくらい。性格の悪い王子なら考えそうじゃない?」
「あり得ますね。ルーイス殿下からはいい噂はあまり聞きませんし」
「僕が知る範囲でも同じです。であれば、幼少期からの報復ということでしょう。ただし、実行犯はディスケット君達にお願いして」
「「発想が子供~~」」
「同感ですね。しかし、発端のとっかかりとはそういうものでしょう。恨みに化してもおかしくはありません」
「僕も、ガイウス殿下に報告しますね?」
「あれ、陛下にはいいんですか?」
「殿下のお情けで、決着がついてから陛下にお知らせされるようです。が、ちょっと変わりますね?」
「「了解で~す」」
「であれば。クローム=アルケイディスにはいつ真実を告げますか?」
「証拠を抑えておきたいので、例のエーテル生成液を手に入れてからですね? 捕物劇はそれからでいいでしょう」
「承知しました」
「ところで~、ミリアムやビーツ以外にも洗脳されている連中がいるんですよね~? 洗脳とかなくていいんですか~?」
「それは、私も気になるね?」
「「「で、ででで、殿下!?」」」
僕が質問しようとしたら、いつの間にか室内にはガイウス王太子殿下がいらっしゃったのだった。
「おや、お早いお着きで?」
「久しぶりに転移を使ったから、少々座標がズレたけれどね?」
ギルマスがなんてことのないように振る舞っているってことが、元から呼ぶつもりだった……。僕達にも心構えが必要なんですけどぉおおお!?
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