満腹マッドサイエンティストはガリガリホムンクルスを満足させたい!〜錬金術の食事を美味いと言わせたいだけのスローライフ〜

櫛田こころ

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11-3.美味しい和食(セリカ視点)

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 ★・☆・★(セリカ視点)







 嬉しい……嬉しいわ!

 マスターが、私のために。料理を作ってくれた!

 久しぶりに調理に携わったとは言え、どれもこれもが私のと遜色ないくらいに!

 たしかに、私も少しは手伝ったけど。ほとんど手本を見せた程度。あとは間違いなくマスター自身の腕前だわ!

 目の前に広がる、美味しそうな食事達。

 これを、マスターが私のために作ってくれた。

 嬉しくないわけがない!


「「いただきます」」


 食事の挨拶をしてから、スプーンを手に取って。まずは口の中を温めるために味噌汁から。これまた、マスターにお願いして召喚してもらった木製のお椀と言う器に入れた味噌汁。

 具沢山で、茶色の澄んだスープが美しい一品だ。

 ゆっくりと口に含めば、出汁と味噌の塩気が絶妙のスープが口いっぱいに広がっていった。


「……美味しい!」

「そ、そうか」


 具の野菜は程よく煮込まれて、歯で噛み切る必要がないほど、ほろほろと崩れていく感じが楽しい。

 次は色とりどりの生野菜のサラダ。ドレッシングは、シンプルに塩とレモン汁と粗挽きブラックペッパーとオリーブオイル。

 洗ってちぎって盛り付けただけだが、とてもみずみずしさが伝わってきて見るからに美味しそう。ポットから少量ドレッシングをかけ、フォークでカットされたトマトとレタスを刺した。


「ん、いい塩加減」


 適量加えた塩に、ピリッと効く粗挽きペッパーの刺激。オリーブオイルはしつこくなくて、レモンの爽やかさが後からやってくる。それらがかかった、新鮮なトマトとレタスが口の中で野菜本来の甘さを引き立たされた。


「うむ、美味いな!」


 マスターも自分のを食べていたが、自画自賛とも言える出来栄えに満足しているようだった。

 さて、次はメインとも言える豆腐ハンバーグ。

 醤油色が光り輝いて美しく、とても食欲をかき立てる出汁と醤油の匂い。

 優しい、豆腐のほのかな大豆の香りも加わり、鼻をくすぐるような感覚が心地よい。

 ナイフも手にして、スッと切り込みを入れるとすぐにナイフが入って難なく切れた。切れ目から見えるのは、細かく砕いて練り込んだ野菜達。今日使ったのは、レンコンとニンジン。

 薬味には、ネギをあしらって。

 ひと口大に切ってから口に運ぶと、これも歯で噛み切る必要がないくらい、優しくほろっと舌の上でほぐれた。


「……美味しい」


 豆腐と、混ぜた鶏肉の旨味がしっかり伝わってきて。

 にんじんの柔らかと、少し歯応えのあるレンコンの組み合わせが優しくて。

 あんかけ部分の、醤油と出汁の旨味がしっかりとハンバーグに合わさり。薬味の小ネギの香りもあとから、すっと鼻を通り抜けていく。

 これはもう、米が欲しくなる味わいだ!

 ここにさらに、ねばねばドロドロのメカブが加わると!


「……うん」


 今日は、解禁日に近い献立ではあるが。米はまだまだたくさん食べすぎては行けないので、こんにゃく米入りの米をマスターには炊いてもらった。

 普通の米よりももちもちした食感が楽しいこんにゃく米入り。

 しっかり噛めば、満腹感を胃に伝わせて、腸の動きも活発化させてくれる。と言っても、私には排泄機能が備わっていないから消化器官は普通にしか稼働はしていないが。


「ふむ。初めて食べるが、このあんかけとやらはいいな! 胃が温まる気がする!」

「……今日使った、片栗粉でスープも出来る」

「ほう。ポタージュとかとも違うのか?」

「コンソメ、よりは。日本で言うなら、『中華料理』が多い。和食でも出来るけど、そうすると醤油味が多いらしいから」

「ふむ。食べてみたいな?」

「任せて」


 体重も100キロと危険レベルから脱出はしたし、まだまだ痩せなくてはいけないけども。

 少しずつならば、マスターに異世界の美味しい料理を作ってあげよう。

 とにかく、マスターお手製の美味しい料理を堪能してから、二人で食器を片付けて。最後は軽くランニングマシーンでウォーキングをして、その後に二人でデザート代わりのこんにゃくゼリーを食べて。

 寝る前に、ここ最近は温かい白湯を飲ませて脂肪燃焼を高めさせてから。

 マスターが寝るのを確認してから、私はシャインのところへ行った。

 今度は、稼働してたのか魔石が光り輝いていた。


【セリカ、機嫌が良いようで?】

「マスターが、私に料理を作ってくれたの!」

【……創造主が?】

「私も少し手伝ったけど、ほとんどマスターが作ってくれたの! 美味しかったわ!」

【……ほう】


 魔石近くに立つと、シャインの魔石が少しチカチカ光ったような気がした。


「マスターはやっぱり天才よ! ちょっと俺様だけど、相手を気遣えるし。努力も惜しまないタイプだわ。今日の調理を見て思ったの」

【幼馴染み達を除けば、ここには我とあなたしかいませんしね?】

「そ、そうかもだけど。あんなにも美味しい料理を作れるだなんて思いもよらなかったわ!」

【セリカ、のためでは?】

「私?」

【我を除けば、ここにはあなたと創造主のみ。であれば、日頃の感謝を込めて作られたのでは?】

「……そんなようなことを言っていたわ」


 たまには、自分で作ろうじゃないかって。

 ちょっとびっくりしたけど、ちゃんと有言実行してくれたし、実際美味しかったし。


(私のため、私のため、私のため……)


 思わず、盛大に勘違いしそうになってきたけど、まだ自己判断で決めつけてはいけないと強く首を横に振った。


【まだ決めずとも良いですが、良い傾向です。少しずつ、お互いに歩み寄れば】

「……頑張るわ」


 明日から、またあの運動をマスターは頑張ってくれると言っているし、私も全力でサポートしなくてはいけない。

 目的は、単に綺麗に痩せる以外にも。まだこのシャインを満たしているエーテル培養液の、原材料の根源を突き止めるためにも。

 私もより一層、マスターに協力をしないと!

 とりあえず、シャインには明日の昼食に使う糖質ゼロ面ではなくこんにゃく麺を生成するのをお願いして。

 私は軽くお風呂に入ってから、部屋で休むことにした。

 マスターのいびきについては、100キロを切る少し前からもう聞こえてこなくなったのだ。
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