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11-1.何か勘違い?(セリカ視点)
しおりを挟む★・☆・★(セリカ視点)
何か。
何か、あったのかしら?
マスターは、とても嬉しそうに私が手作りしたチョコレートパフェを食べてくれてただけなのに。
ちらちらと私を見てから食べ終わった後、まるで逃げるようにしてリビングから出て行ってしまった。
追いかけようにも、理由を問い詰めていいものかわからず、パフェの食べる手を止めて呆然としてるしか出来なかった。
パフェの味は完璧。
マスターも完食はしてくれたのに、何かおかしなところがあったのだろうか?
だから、ひと口ひと口、吟味しながら食べてても味は美味しいチョコレートパフェだけだった。
「……パフェ、じゃないなら。私?」
私が何かした?
今日の強化させたトレーニングに問題が?
けど、それならマスターは自分の口から言うだろうし、あの態度はいったい……?
「わからない……わからないわ……!」
とにかく、勘違いで私が処分されるんじゃ! と思うくらい一瞬落ち込みかけたけども!
そうじゃない事を願って、マスターを探しにリビングを出たら、すぐ近くに、何故か清々しい顔で歩いてたマスターと遭遇した。
「お、セリカ。どうしたんだ?」
「い……いいえ。なんでも」
「その割には、慌てていたようだが?」
「あ、その……」
あなたの様子がおかしかったのが、自分を処分するんじゃないかと焦ったからだなんて言いにくい。
すると、マスターは何故か私の髪をぽんぽんと撫でてくれた。
「今日は、俺様のためにあれだけ素晴らしいパフェを作ってくれたのだ。少しくらい休め」
「け、けど、夕飯の準備もあるし」
なんだろう。
胸がぽかぽかするのと、なんだか少しむず痒い気がする。
念願の、マスターに触れられているのに、思考が定まらずに珍しく焦ってしまう。
さっきまでのマスターはいったいどこに!?
「……そうだ。俺様が久しぶりに料理してみようじゃないか!」
「え?」
「なに。この屋敷を購入する前は、チェストとかと街の食堂で給仕や調理の手伝いをしていた。お前ほどではないが、作れなくもない」
「け、けど。マスターには減量用の食事が作れないんじゃ」
「今日くらい、いいだろう? 明日からもあの運動を頑張るから。な?」
「きょ、今日だけなら……」
マスターの手料理?
昔は多少作っていた?
マスターの手料理を食べたことのある人間に、少しばかり嫉妬しそうになったが。
今日は私のため。
なら、昔のことを気にしてはいけない、と頷くことで了承した。
「だが、さすがに野菜が多い方がいいな。サラダとスープは野菜メインにするか」
「て、手伝おうか?」
「なに、今日くらいは俺様にさせてくれ」
なんだろう。
こんなにも相手を気遣うマスターを、今までに見たことがない。
ほんの少しの間に、いったい何があったのだろうが?
あの挙動不審だったマスターはいったい?
考えても全然わからないので、私はひとまず、パフェの食器を洗ってから洗濯物を畳むのに専念させてもらうことにした。
何かしてないと、考えているだけで落ち着かないからだ。
シャインのところに行って、相談に乗ってもらおうとしたが。今日使う予定だった食材を生成した後、こちらもまた何故か休眠状態になってしまい。
なので、一人で考えることしかできなかった。
せめて、夕飯の献立を考えていたマスターに、出来上がった食材を渡すことだけしか。
「お、それはなんだ?」
マスターは真剣に考えていたのか、紙に何かを書いているところだった。
「……ん。こんにゃくゼリーとメカブ」
「ゼリーはわかるが、メカブとは?」
「わかめに似た海藻の一種。味付けしたら、そのまま食べられる」
「ほう、サラダのようにか?」
「サラダもいいけど。醤油があれば、米にも合う」
「ふむ。調理方法を教えてくれ。しょうゆはまだ残っているのだろう?」
「うん」
マールドゥから、大豆を仕入れることが出来たので、醤油は無事に完成した。
他にも、味噌とかも出来たからスープは時々味噌汁を作るようにもなった。
マスターも好きになってくれたし、使い方を誤らなければとても美味しい料理が出来る。
なので、口だけのアドバイスをすることになり、マスターと献立を完成させるのだった。
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