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10-3.誠のチョコレートパフェ
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(む、むむむ……!)
何か、とても心地よいぬるま湯に浸かったような夢を見たのだが。
すぐに、セリカがいつものようにフライパンで叩き起こしてきたために、続きを見るのが叶わず。
仕方なく、まだ痛む腹回りをさすりながら起きることにした。
「早くしないと、パフェが溶ける」
「なに!」
「豆乳のクリームじゃなくて、ちゃんとした生クリームから作ったアイスだから」
「い、行く行く、すぐに行く!」
「ん」
せっかく、丹精込めて作ってくれたパフェを台無しにしてはいけない!
すぐさまベッドから出て、転がるように床に落ちたらすぐに平謝りしたら、仕方がないとばかりに肩を落としてから亜空間収納にフライパンなどを仕舞って腰に手を当てた。
「じゃ、早く行こう」
「うむ!」
腹回りは痛いが、これまでの努力のお陰で今日のパフェを食べられるのならば、安いことだ。
少し気分が良くなったので、鼻歌を歌いながらセリカとリビングに向かえば。
テーブルの上に神々しく置かれていたパフェの姿に大きく声を上げてしまった。
「お、おお! 美しい!」
「手製のチョコレートパフェ」
「すべてセリカが作ったのが!?」
「ん、頑張った」
「ありがたくいただこうではないか!」
チョコ色と真っ白なクリームの層の鮮やかさ。
様々なフルーツは綺麗にカットされて、飾りだけでなく食欲をかき立てるようで。
中央に飾られた、アイスクリームも艶々で美味そうで。
クリームも滑らかで美味そうだ、何というコントラスト!
今すぐにでも食べたい!
「ん、召し上がれ」
「うむ!」
二人でそれぞれの席につき、いただきますをしてからパフェ用の長いスプーンを手に取った。
チョコレートソースなどで、黒いラインが美しく彩られているホイップクリームをまずはひと口!
「う、うむ! 美味い!」
チョコは前回のビターチョコも少し混じってはいるようだが、定番のミルクを効かせたチョコレートもソースに使ったのだろう。
滑らかで口溶けが良く、程よい甘さとこちらも口溶けが良い滑らかさと生クリームの香りがするホイップとうまく調和していて。
ひと口食べたら、またひと口と止まらない!
次に口にしたアイスクリームも、久しく口にしていなかった豆乳クリームではない純粋なクリームで作られたアイスクリーム!
こちらも、冷たくて口溶けが良く、まだまだ暑いこの時期にはもってこいのデザートだ!
「ん。頑張って作った甲斐があった」
「美味い、美味いぞセリカ! 俺様が痩せ切ったあかつきには毎日」
「毎日はダメ。戻るよ?」
「く……手厳しい!」
ダメ元で提案してみたが、やはりすぐに却下されたので泣く泣く残りのパフェを食べたが、涙が混じったのが少し塩辛く感じた。
だが、これだけ美味いパフェは街にいた頃ですら、お目にかかったことがない。
やはり、俺様は完全にこのホムンクルスエルフに胃袋を掴まれてしまっているのだろう。
しかしながら、それが悪い気がしないのだ。
(何故、だ……?)
美醜を問わず、様々な種族の女どもから言い寄られてきた過去ばかりだったが。
俺様の醜悪な姿を、素直に口にして、なおかつ意見をしに来る奴など、昔からの馴染みであるマールやチェストくらいしかいなかったのに。
この半年近くで、俺様をここまで元に近いくらいにまで戻してくれた生命体は過去にいない。あの二人ですら諦めていたのに。
そして、今の俺様は、辛いながらも毎日を少しずつ楽しんでいる。
セリカがいなかったら、俺様はおそらく彼女が最初に口にしてように暴食に明け暮れて死に至っていたのだろう。
セリカは、俺様が生んだ娘のはずだが、もっとこう……違う気がした。
常に側でいて欲しいような……。
(ま、さか……!)
俺様は、この細身で美しいホムンクルスエルフに惚れているのか?
何が、というきっかけは思い当たらないが、結果的に答えに行き着くと何故かしっくりはきた。
が、すぐに気持ちが追いつくわけもなく!
「ご、ごちそうさま!」
「う、うん?」
気持ちを自覚すると、どう見ていいのか急にわからなくなり。
気恥ずかしさを覚えた俺様は、席を立ってから急いで……何故か地下室のシャインの下へと向かうのだった。
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