6 / 94
4-1.セリカの胸中(セリカ視点)
しおりを挟む★・☆・★(セリカ視点)
ああ……ああ……ああ!
今日も、今日の糖質OFFデザートも喜んでいただけた!
どちらかと言えば、滑らかには程遠い仕上がりにはなったけれど、我が創造主はとても喜んで食べてくださった。
(シャインで作った豆乳ヨーグルトだけれど。臭みを抜けさせるのに、慎重に凍らせたし甘味料のラカントもいい仕事をしてくれたわ! マスターの排泄タイムは相変わらずだけれど、お陰で以前のような腐敗した臭いも少しずつ軽減出来ているし我慢はしなきゃ! しらたきも糖質ゼロ麺もいい具合だし、カルボナーラも気にいってくれるはず。だけどまずは、お掃除!)
上機嫌になった私は、このシャインも入れて三人には少し広い屋敷を毎日掃除している。
私が生まれた初日もだが、マスターは掃除が下手で貯蔵庫以外を、見るも無残な光景にしていたが。
食材の保管はまずまずだったのに、どうも体型を大幅に変えたせいか堕落した生活を送っていたようで。
運動もさることながら、働いて体を動かす行為を敬遠してたらしく。
だから、代わりに私が家事全般をうけおって、マスターには日課の散歩……ウォーキングを行ってもらってる。
今日で約二ヶ月半。
私は掃除をしながら、時々鼻歌。時々スキップしながら調理場をメインに掃除を進めていく!
「……減量は順調過ぎる程うまくは行っているけど、少し速度が早い」
おそらく、マスターの体内の老廃物を出す排泄行為が必要以上のカロリーを消費しているかもしれないからだ。
「急激な減量は精神的にも影響を及ぼす。マスターの舌が飽きてきたからこそ、メニュー変更もしなくては」
脂肪燃焼スープにも飽きてきたのなら、今日作った海藻を出汁にしてスープを作るのがいい。
キノコも少し調整して減らそう。
キノコ嫌い克服ももちろんだが、この世界のキノコはひょっとしたら効能が高過ぎるかもしれないから。
だから、マスターの排泄も週一単位で酷いのかもしれない。
けど、二日に一度出れば苦しくないはずなのに、あれは異常だ。たしかに私のせいかもしれないが、それはつまり。
「マスターに縋ってもらえる日が近いと言うこと! 頑張る……頑張るわ、私!」
なので、キノコも多少は調整しよう!
克服は出来てはいないが、今のところ残されていないのだから、私が……私の手料理を美味しいと言ってくれるのだ。
こんな嬉しいことはない!
ピンポーン
ピンポーン
悦に浸っていたら、玄関からアラームの魔導具が来訪を告げてくれた。
「……まさか」
この屋敷は街から離れているため、定期的に商人による食糧調達を依頼しているのだが。
訪れる人間はわずかに二名。
どちらも出会ったことがあるが、これまた一癖も二癖もある人間でしかなかった。
「…………はい」
けれど、マスターに用件があるのなら仕方がないので助手でもある私が応対しなくちゃいけない。
「きゃ! セリカちゃんヤッホー!」
「……マールドゥさん」
実に陽気な態度のまま、私に抱きついてきた女性はマールドゥ=エファンド。マスターの幼馴染みさんであり、商人の一人だ。
主に、生産ギルド御用達と言われているらしいが、その実は可愛いものと綺麗なものに目がない……いわば変態。
私の見た目はエルフを模しているので、彼女にとっては欲しい人材でしかないのだ。とは言っても、マスターが私を助手として必要だと言ってくださるお陰で彼女の住処には連れて行かれていない。
ひとまずは、彼女の定期便をあてにしないとマスターの減量生活もうまく進まない。
シャインは無から有を生み出すことは出来ない魔導具であるから、他は普通の人間の生活となんら変わりないのだ。我らがマスターと私は。
「今日も肌艶良し。良いもの食べてるんじゃないのぉ? ところでクロームは?」
「……日課の運動をしてます」
「あの堕落した男を奮い立たせているのは、ほかでもないあなたのお陰ね! 半年くらい前の激変のせいであたしも飽き飽きしそうだったけど、あなたが生まれたお陰であいつも変わりそうだわ!」
美しいもの、可愛いものには目がなくとも。我がマスターの美貌の激変については呆れはしていても、また目に出来るのなら協力は惜しまないと出会った当初から言ってくれている。
毎回のハグは嫌だが、食糧を持ってきてもらえてる分仕方ないと思うしかない。
健康的な肌と引き締まった手足に体格。
女性なら、引きつけやすいタイプではあるが、美貌は私の方が勝っている!
いくら幼馴染みさんだろうが、マスターに可愛がってもらうのは私だ!
あなたに可愛がってもらっても嬉しくない!
「ところで、どんくらい痩せたのー?」
「見た目だけだとわかりませんが、普通には」
「普通ねー? あの肉の塊が動いているとこ見に行ってもいーい?」
「まだ時間はあるので、先に食糧の方を」
「ホイホイ。今月はあれねー?」
荷馬車の中に積まれていた大量の食糧。
これがないと、マスターの減量も研究生活もできないからありがたい。
マスターの日々の生活の糧は、主に私が作る減量用の食事だが。
その料理を作るためのお金などは、錬金術師でもあるマスターの生み出すポーションから発生している。
自称と言わず、錬金術師としては天才であるマスターは冒険者達が必要とするありとあらゆるポーションを生み出せるのだ。それを定期的にもう一人来る人間に渡して換金している。
食事以外にも、日々の糧を得るために仕方なくやっているとぶつくさ言うが、実際その腕は本物。
ポーションで減量も可能では……と思いついてはいたが、減量は一過性で済ませてはいけない。
細胞にうまく組み込まさせねばならないので、私が作る食事でお願いしているのだ。
(だってだって、私が用済みにさせられるかもしれないもの!)
シャインのように協力してくれる魔導具がいても、私がマスターに尽くしてる日々を過ごすためには心を鬼にしなくては!
ちょっと……ちょーっと辛辣な態度になっちゃうけど、仕方ないんだもん!
「ほい。これで最後ね? さーて、あのバカはどこにいるのやら」
「……裏庭にいるかもしれないですが」
とりあえず、二人で食糧を貯蔵庫に運び込んだので、マスターを探すことにした。
私に組み込まれている細胞を通じて、位置確認は出来る。
なら何故、初日に彼の好き嫌いを把握していなかったのか?
(キノコは食物繊維も多くて、身体の老廃物を除去するには最適な食べ物。これを機に克服しないと、体型変化は求められないわ!)
マスターにねこっ可愛いがられたいのは本望でも、そこはそこ。生みの親に対してでも、細胞が教えてくれた元の美しい体型に戻すのに心を鬼神にせねばならない。つまり、無理矢理食べさせた初日には嘘をついたのだ。
だから、ウォーキングも日課に組み込んだのだが、果たして今日は倒れていないのか。
マールドゥさんと裏庭にこっそり行ってみると、苦しそうな表情でウォーキングを一応こなしているマスターがいた。
「へー。相変わらずだけど、あれでも一応動けてはいるんだ?」
「重さ的には、七歳の子供一人分は減りました」
「マジ? けど、まだまだあれって、あいつ大丈夫かしら?」
「年単位で痩せさせないと。急激に痩せたら身体が壊れるんです」
「ほーほー。まあ、お姉さんも気長に待つか? とりあえず、街にはいつでも遊びにおいでよん?」
「仕事があるので」
「んもう、つれないー」
「マスターが見苦しくなくなれば、考えます」
「そうね~? 頼んだわよ! おーい、クローム!」
「ぬ? マールか?」
マールドゥさんが呼びかけると、マスターは歩行はそのままにこっちにやってきた。
汗だくだが、少しすっきりした表情。やはり、定期的な運動は第一かもしれない。
「まだ全然だけど、痩せているんだって~?」
「む。セリカのお陰ではあるが、着実に痩せてはいるぞ!」
「……もう少し歩いたら、お風呂がいい」
「その通りだとも!」
マスターが私のお陰って言ってくれたくれたくれた!
うっかり、夜のカルボナーラを出そうと思ってしまったが。ここは我慢だ。
とりあえず、マールドゥさんはマスターのブヨブヨした肉を一通り触ってから帰っていき。
マスターは時間通り、ウォーキングをこなしたのでお風呂に行かれたのだった。
0
お気に入りに追加
64
あなたにおすすめの小説
エルティモエルフォ ―最後のエルフ―
ポリ 外丸
ファンタジー
普通の高校生、松田啓18歳が、夏休みに海で溺れていた少年を救って命を落としてしまう。
海の底に沈んで死んだはずの啓が、次に意識を取り戻した時には小さな少年に転生していた。
その少年の記憶を呼び起こすと、どうやらここは異世界のようだ。
もう一度もらった命。
啓は生き抜くことを第一に考え、今いる地で1人生活を始めた。
前世の知識を持った生き残りエルフの気まぐれ人生物語り。
※カクヨム、小説家になろう、ノベルバ、ツギクルにも載せています
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
最恐魔女の姉に溺愛されている追放令嬢はどん底から成り上がる
盛平
ファンタジー
幼い頃に、貴族である両親から、魔力が少ないとう理由で捨てられたプリシラ。召喚士養成学校を卒業し、霊獣と契約して晴れて召喚士になった。学業を終えたプリシラにはやらなければいけない事があった。それはひとり立ちだ。自分の手で仕事をし、働かなければいけない。さもないと、プリシラの事を溺愛してやまない姉のエスメラルダが現れてしまうからだ。エスメラルダは優秀な魔女だが、重度のシスコンで、プリシラの周りの人々に多大なる迷惑をかけてしまうのだ。姉のエスメラルダは美しい笑顔でプリシラに言うのだ。「プリシラ、誰かにいじめられたら、お姉ちゃんに言いなさい?そいつを攻撃魔法でギッタギッタにしてあげるから」プリシラは冷や汗をかきながら、決して危険な目にあってはいけないと心に誓うのだ。だがなぜかプリシラの行く先々で厄介ごとがふりかかる。プリシラは平穏な生活を送るため、唯一使える風魔法を駆使して、就職活動に奮闘する。ざまぁもあります。
パラノイア・アルケミスト〜逃走ホムンクルスの生存戦略〜
森樹
ファンタジー
元傭兵の青年ブレッドと、禁忌の錬金術で作られたホムンクルスの少年少女・アルフとフィーネが出会った時、運命の歯車が動き出す。
アルフとフィーネを巡る陰謀に巻き込まれたブレッドは、顔見知りの魔女カミラを道連れにアルフとフィーネの面倒をみることになる。
狂気をまとった禁忌の錬金術師イゴールが率いる組織から、ブレッドとカミラは二人を守る事が出来るのか。
蒸気機関車の走る大陸で起こる、若者達が生き残る為に戦いながらも幸せを探して生活をしていく物語。
※リハビリ作品です。長期連載停止中の『宰相夫人の異世界転移』も近々復活したいです。
元銀行員の俺が異世界で経営コンサルタントに転職しました
きゅちゃん
ファンタジー
元エリート (?)銀行員の高山左近が異世界に転生し、コンサルタントとしてがんばるお話です。武器屋の経営を改善したり、王国軍の人事制度を改定していったりして、異世界でビジネススキルを磨きつつ、まったり立身出世していく予定です。
元エリートではないものの銀行員、現小売で働く意識高い系の筆者が実体験や付け焼き刃の知識を元に書いていますので、ツッコミどころが多々あるかもしれません。
もしかしたらひょっとすると仕事で役に立つかもしれない…そんな気軽な気持ちで読んで頂ければと思います。
元勇者は魔力無限の闇属性使い ~世界の中心に理想郷を作り上げて無双します~
桜井正宗
ファンタジー
魔王を倒した(和解)した元勇者・ユメは、平和になった異世界を満喫していた。しかしある日、風の帝王に呼び出されるといきなり『追放』を言い渡された。絶望したユメは、魔法使い、聖女、超初心者の仲間と共に、理想郷を作ることを決意。
帝国に負けない【防衛値】を極めることにした。
信頼できる仲間と共に守備を固めていれば、どんなモンスターに襲われてもビクともしないほどに国は盤石となった。
そうしてある日、今度は魔神が復活。各地で暴れまわり、その魔の手は帝国にも襲い掛かった。すると、帝王から帝国防衛に戻れと言われた。だが、もう遅い。
すでに理想郷を築き上げたユメは、自分の国を守ることだけに全力を尽くしていく。
魔物の森のソフィア ~ある引きこもり少女の物語 - 彼女が世界を救うまで~
広野香盃
ファンタジー
魔物の森で精霊に育てられた少女ソフィア。生まれつき臆病な性格の彼女は、育ての親である精霊以外とは緊張して上手く話せない。しかし、人間であるソフィアはこのままでは幸せになれないと考えた精霊により、魔物の森を半ば強制的に追い出されることになる。気弱でコミュ障な少女ソフィアであるが精霊から教えられた精霊魔法は人間にとって驚異的なものであった。目立たず平穏に暮らしたいと願うソフィアだが、周りの誤解と思惑により騒ぎは大きくなって行く。
小説家になろう及びカクヨムにも投稿しています。
転生犬は陰陽師となって人間を助けます!
犬社護
ファンタジー
犬神 輝(いぬがみ あきら)は、アルバイトが終わり帰ろうとしたところ、交通事故に遭い死んでしまった。そして-------前世の記憶を持ったまま、犬に転生した。
暫くの間は、のほほんとした楽しい日常だった。しかし、とある幽霊と知り合ったことがきっかけで、彼は霊能力に目覚めた。様々な動物と話すことが可能となったが、月日を重ねていくうちに、自分だけが持つ力を理解し、その重要性に葛藤していくことになるとは、この時はわからなかった。
-------そして、関わった多くの人々や動物の運命を改変していくことも。
これは、楽しい日常とちょっと怖い非日常が織り成す物語となっています。
犬視点で物語をお楽しみ下さい。
感想をお待ちしています。
完結となっていますが、とりあえず休載とさせて頂きます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる