上 下
114 / 125
第一章

112

しおりを挟む
「……。」
「……。」

 師範と僕は睨みあっていた。

「来ぬか。」
「……。」

 師範には一切の油断も隙もなかった。
 攻めに行っても確実に攻撃を流されてやられる。

「来ぬのなら、こちらから行くぞ。」

 そう言うと師範は一気に僕との距離を詰める。
 巨体に似合わないスピードに僕は舌打ちを打つ。
 真っすぐな攻撃が僕を襲う。
 師範の攻撃でなければ受け流し、反撃に出るのだが、この人の攻撃は受け流す事が出来ない。
 何度も何度もその攻撃を受け流す事に失敗している、今回は上手くいくなんてそんな過信はない。
 僕は身を逸らしてかわすが、師範はそれを呼んでいたのかノーマークだった反対の拳が僕のわき腹を抉る。

「ぐっ…。」
「甘いわ。」

 何とか態勢を整えようとするがそれよりも早く師範はもう攻撃を仕掛けてくる。


「く…。」

 一つ一つの攻撃は重く、僕は避ける事に専念するが、三回に一回は攻撃を食らう。
 致命的な攻撃ではないがそれでも、致命傷にはなりえない。

 いや、違う。

 師範が手加減をしてくれているから僕は避けられるんだ。

 僕は弱い。

「余計な事は考えるな。」

 その言葉と共に蹴りがもろに僕の腹にめり込む。

「ぐあっ!」

 吹っ飛ばされて、背中から壁に叩きつけられる。

「かはっ…。」

 内臓が飛び出るんじゃないかと思うくらいの衝撃だった。

「もう終わりか?」
「まだ、まだだっ!」

 口元を拭い僕は構える。

「そうでないとな。」

 師範も構えを取る。

「武器も可能にするか?」
「いや、いらない。」
「ふん、そんなボロボロでやれるのか?」
「やれる。」
「なら、証明してみろ。」
「絶対に一撃入れてやる。」

 床を蹴り師範に突進するがすぐに右に飛ぶ。
 そして、先ほど僕がいた場所に師範の攻撃が入る。

「ちっ。」

 すぐに師範は攻撃を僕に繰り出すが、僕はまた床を蹴り、師範の背後に回り込み攻撃を仕掛けるが、止められる。

「捨て身か。」
「……。」
「そんなんで勝てると思うか?」
「言っただろう。」

 師範はその体格通り重い攻撃重視の戦い方だ。
 一方、僕は攻撃が軽い。
 だけど、スピードならば彼に勝てる。
 だいぶ体力は消費してしまっているがそれでもあと少しくらいはもつだろう。

「僕は勝つんじゃなくて、一撃を入れるんだよ。」

 床を蹴る。

 蹴る。

 蹴る。

 師範は僕のスピードに追い付けないのか攻撃を仕掛けてこない。

 まだだ。

 まだ速さも何もかも足らない。

「はあっ!」

 蹴りを一発師範に入れるが、残念な事に止めらる。

「言っているだろう、お前の攻撃は軽い。」
「くっ。」
「それに切り札はあまり見せびらかすな。」
「しまっ!」

 師範の容赦ない攻撃が僕を襲う。
 そして、未熟な僕は勝てる事無く。
 意識を失った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役無双

四季
BL
 主人公は、神様の不注意によって命を落とし、異世界に転生する。  3歳の誕生日を迎えた時、前世のBLゲームの悪役令息であることに気づく。  しかし、ゲームをプレイしたこともなければ、当然のごとく悪役になるつもりもない主人公は、シナリオなど一切無視、異世界を精一杯楽しんでいく。  本人はただ楽しく生きてるだけなのに、周りはどんどん翻弄されていく。  兄も王子も、冒険者や従者まで、無自覚に愛されていきます。 いつかR-18が出てくるかもしれませんが、まだ未定なので、R指定はつけないでおきます。 ご意見ご要望お待ちしております。 最後に、第9回BL小説大賞に応募しております。応援よろしくお願いします。

攻略対象者に転生したので全力で悪役を口説いていこうと思います

りりぃ
BL
俺、百都 涼音は某歌舞伎町の人気№1ホストそして、、、隠れ腐男子である。 仕事から帰る途中で刺されてわりと呆気なく26年間の生涯に幕を閉じた、、、、、、、、、はずだったが! 転生して自分が最もやりこんでいたBLゲームの世界に転生することとなったw まあ転生したのは仕方ない!!仕方ないから俺の最推し 雅きゅん(悪役)を口説こうではないか(( ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーキリトリーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー タイトルどうりの内容になってます、、、 完全不定期更新でございます。暇つぶしに書き始めたものなので、いろいろゆるゆるです、、、 作者はリバが大好物です。基本的に主人公攻めですが、後々ifなどで出すかも知れません、、、 コメント下さると更新頑張ります。誤字脱字の報告でもいいので、、、 R18は保険です、、、 宜しくお願い致します、、、

嫌われ悪役令息に転生したけど手遅れでした。

ゆゆり
BL
俺、成海 流唯 (なるみ るい)は今流行りの異世界転生をするも転生先の悪役令息はもう断罪された後。せめて断罪中とかじゃない⁉︎  騎士団長×悪役令息 処女作で作者が学生なこともあり、投稿頻度が乏しいです。誤字脱字など等がたくさんあると思いますが、あたたかいめで見てくださればなと思います!物語はそんなに長くする予定ではないです。

悪役王子の幼少期が天使なのですが

しらはね
BL
何日にも渡る高熱で苦しめられている間に前世を思い出した主人公。前世では男子高校生をしていて、いつもの学校の帰り道に自動車が正面から向かってきたところで記憶が途切れている。記憶が戻ってからは今いる世界が前世で妹としていた乙女ゲームの世界に類似していることに気づく。一つだけ違うのは自分の名前がゲーム内になかったことだ。名前のないモブかもしれないと思ったが、自分の家は王族に次ぎ身分のある公爵家で幼馴染は第一王子である。そんな人物が描かれないことがあるのかと不思議に思っていたが・・・

風紀“副”委員長はギリギリモブです

柚実
BL
名家の子息ばかりが集まる全寮制の男子校、鳳凰学園。 俺、佐倉伊織はその学園で風紀“副”委員長をしている。 そう、“副”だ。あくまでも“副”。 だから、ここが王道学園だろうがなんだろうが俺はモブでしかない────はずなのに! BL王道学園に入ってしまった男子高校生がモブであろうとしているのに、主要キャラ達から逃げられない話。

生徒会長親衛隊長を辞めたい!

佳奈
BL
私立黎明学園という全寮制男子校に通っている鮎川頼は幼なじみの生徒会長の親衛隊長をしている。 その役職により頼は全校生徒から嫌われていたがなんだかんだ平和に過ごしていた。 しかし季節外れの転校生の出現により大混乱発生 面倒事には関わりたくないけどいろんなことに巻き込まれてしまう嫌われ親衛隊長の総愛され物語! 嫌われ要素は少なめです。タイトル回収まで気持ち長いかもしれません。 一旦考えているところまで不定期更新です。ちょくちょく手直ししながら更新したいと思います。 *王道学園の設定を使用してるため設定や名称などが被りますが他作品などとは関係ありません。全てフィクションです。 素人の文のため暖かい目で見ていただけると幸いです。よろしくお願いします。

残虐悪徳一族に転生した

白鳩 唯斗
BL
 前世で読んでいた小説の世界。  男主人公とヒロインを阻む、悪徳一族に転生してしまった。  第三皇子として新たな生を受けた主人公は、残虐な兄弟や、悪政を敷く皇帝から生き残る為に、残虐な人物を演じる。  そんな中、主人公は皇城に訪れた男主人公に遭遇する。  ガッツリBLでは無く、愛情よりも友情に近いかもしれません。 *残虐な描写があります。

目が覚めたらαのアイドルだった

アシタカ
BL
高校教師だった。 三十路も半ば、彼女はいなかったが平凡で良い人生を送っていた。 ある真夏の日、倒れてから俺の人生は平凡なんかじゃなくなった__ オメガバースの世界?! 俺がアイドル?! しかもメンバーからめちゃくちゃ構われるんだけど、 俺ら全員αだよな?! 「大好きだよ♡」 「お前のコーディネートは、俺が一生してやるよ。」 「ずっと俺が守ってあげるよ。リーダーだもん。」 ____ (※以下の内容は本編に関係あったりなかったり) ____ ドラマCD化もされた今話題のBL漫画! 『トップアイドル目指してます!』 主人公の成宮麟太郎(β)が所属するグループ"SCREAM(スクリーム)"。 そんな俺らの(社長が勝手に決めた)ライバルは、"2人組"のトップアイドルユニット"Opera(オペラ)"。 持ち前のポジティブで乗り切る麟太郎の前に、そんなトップアイドルの1人がレギュラーを務める番組に出させてもらい……? 「面白いね。本当にトップアイドルになれると思ってるの?」 憧れのトップアイドルからの厳しい言葉と現実…… だけどたまに優しくて? 「そんなに危なっかしくて…怪我でもしたらどうする。全く、ほっとけないな…」 先輩、その笑顔を俺に見せていいんですか?! ____ 『続!トップアイドル目指してます!』 憧れの人との仲が深まり、最近仕事も増えてきた! 言葉にはしてないけど、俺たち恋人ってことなのかな? なんて幸せ真っ只中!暗雲が立ち込める?! 「何で何で何で???何でお前らは笑ってられるの?あいつのこと忘れて?過去の話にして終わりってか?ふざけんじゃねぇぞ!!!こんなβなんかとつるんでるから!!」 誰?!え?先輩のグループの元メンバー? いやいやいや変わり過ぎでしょ!! ーーーーーーーーーー 亀更新中、頑張ります。

処理中です...