105 / 125
第一章
103
しおりを挟む
「空野、お前隠す気あんのか?」
「えっ?」
えっと、どれの事だろう…。
「分からないのか。」
「は、はい。」
放課後言われた通り僕は職員室に行けば、何故か防音となっている部屋に通された。
そして、扇先生はどしりと黒いソファに腰掛けた。
「お前のアイテム。」
「アイテムですか?」
「作ったにしたら、あまりにも実践的なものだな?」
「………ごく普通に売られている奴もありますけど?」
「ほお、新卒の月給よりも高いアイテムをごろごろ出しといてか?」
「……。」
「作ったと言い張るのならせめて高校生が作れるような性能に落とさないといけないだろう。」
「……。」
「なあ、正体不明のバイオレットさんよ?」
「なっ!」
先生の口から洩れたその名前に僕は思わず声を漏らす。
「安心しろよ、ここには監視カメラもないからな。」
「……。」
「んで、お前は隠したいのか、隠したくないのか教えろ。」
「隠したいに決まっているじゃないですか。」
「だったらもっとうまく隠せ。」
「……。」
「お前なら今まで使った武器で統一するとかできただろう。」
「ですが、皆全力で挑んでいるのに。」
「全力でつぶしにかかるのか。」
先生は額に手を当てて呆れたようにため息を零した。
「……。」
「お前は本当は阿呆なのか?」
「…確かに、御神くんに比べればバカですけど。」
「そうじゃない。」
ああ、こいつはマジで阿呆だ、阿呆で決まりだ。とそんな事を呟きながら扇先生は前髪を掻き上げる。
「本当に面倒ごとばかりだな。」
「申し訳ございません。」
「はあ、まあ、センコーになる時点である程度は覚悟していたが、今回のガキは大当たり過ぎてマジで泣きそうだ。」
「……。」
「まあ、いい、んで、てめえはどうする、今はまだ物珍しいアイテムにあいつらは目を輝かせているが、そのまま使っていけば確実にばれるぞ。」
「……親戚家にバイオレットがいるという事にします。」
「正体不明だろう。」
「不幸か幸いか、バイオレットを女性として表舞台に出す段取りが取られているので。」
「……。」
扇先生は何とも言えない顔で僕を見る。
「またあんな怪しげな薬を飲むのか?」
「女装という話です。」
「まあ、表舞台に姿を見せるのなら確かにお前と顔の作りが似ている事に誰かしら気づくだろうが、それはそれで面倒だと思うぞ。」
「……ここまで来てしまったので、これは自分がバイオレットして働くための対価だと思う事にします。」
「そうか。」
「はい。」
「……まあ、こちらもお前がいつかバイオレットだとばれる前提で色々しておくから、だが、だからと言って自粛だけは忘れるなよ。」
「はい。」
「……。」
僕は先生の目を見てはっきりと頷くが、先生は何故が何とも言えない顔をする。
「何ですか?」
「これからの事を思うと胃がな…。」
「えっと、いい胃薬探しておきましょうか?」
「いや、大丈夫だ。」
扇先生はゆるゆると首を振った。
「今日の所はここまでにしておく、さっさと帰れ。」
「分かりました、それでは失礼します。」
僕は大人しく部屋から出て行ったので、知らなかったが、僕が出た後先生はソファに深く腰掛け、頭を抱えていたという。
「えっ?」
えっと、どれの事だろう…。
「分からないのか。」
「は、はい。」
放課後言われた通り僕は職員室に行けば、何故か防音となっている部屋に通された。
そして、扇先生はどしりと黒いソファに腰掛けた。
「お前のアイテム。」
「アイテムですか?」
「作ったにしたら、あまりにも実践的なものだな?」
「………ごく普通に売られている奴もありますけど?」
「ほお、新卒の月給よりも高いアイテムをごろごろ出しといてか?」
「……。」
「作ったと言い張るのならせめて高校生が作れるような性能に落とさないといけないだろう。」
「……。」
「なあ、正体不明のバイオレットさんよ?」
「なっ!」
先生の口から洩れたその名前に僕は思わず声を漏らす。
「安心しろよ、ここには監視カメラもないからな。」
「……。」
「んで、お前は隠したいのか、隠したくないのか教えろ。」
「隠したいに決まっているじゃないですか。」
「だったらもっとうまく隠せ。」
「……。」
「お前なら今まで使った武器で統一するとかできただろう。」
「ですが、皆全力で挑んでいるのに。」
「全力でつぶしにかかるのか。」
先生は額に手を当てて呆れたようにため息を零した。
「……。」
「お前は本当は阿呆なのか?」
「…確かに、御神くんに比べればバカですけど。」
「そうじゃない。」
ああ、こいつはマジで阿呆だ、阿呆で決まりだ。とそんな事を呟きながら扇先生は前髪を掻き上げる。
「本当に面倒ごとばかりだな。」
「申し訳ございません。」
「はあ、まあ、センコーになる時点である程度は覚悟していたが、今回のガキは大当たり過ぎてマジで泣きそうだ。」
「……。」
「まあ、いい、んで、てめえはどうする、今はまだ物珍しいアイテムにあいつらは目を輝かせているが、そのまま使っていけば確実にばれるぞ。」
「……親戚家にバイオレットがいるという事にします。」
「正体不明だろう。」
「不幸か幸いか、バイオレットを女性として表舞台に出す段取りが取られているので。」
「……。」
扇先生は何とも言えない顔で僕を見る。
「またあんな怪しげな薬を飲むのか?」
「女装という話です。」
「まあ、表舞台に姿を見せるのなら確かにお前と顔の作りが似ている事に誰かしら気づくだろうが、それはそれで面倒だと思うぞ。」
「……ここまで来てしまったので、これは自分がバイオレットして働くための対価だと思う事にします。」
「そうか。」
「はい。」
「……まあ、こちらもお前がいつかバイオレットだとばれる前提で色々しておくから、だが、だからと言って自粛だけは忘れるなよ。」
「はい。」
「……。」
僕は先生の目を見てはっきりと頷くが、先生は何故が何とも言えない顔をする。
「何ですか?」
「これからの事を思うと胃がな…。」
「えっと、いい胃薬探しておきましょうか?」
「いや、大丈夫だ。」
扇先生はゆるゆると首を振った。
「今日の所はここまでにしておく、さっさと帰れ。」
「分かりました、それでは失礼します。」
僕は大人しく部屋から出て行ったので、知らなかったが、僕が出た後先生はソファに深く腰掛け、頭を抱えていたという。
0
お気に入りに追加
170
あなたにおすすめの小説
平凡顔のΩですが、何かご用でしょうか。
無糸
BL
Ωなのに顔は平凡、しかも表情の変化が乏しい俺。
そんな俺に番などできるわけ無いとそうそう諦めていたのだが、なんと超絶美系でお優しい旦那様と結婚できる事になった。
でも愛しては貰えて無いようなので、俺はこの気持ちを心に閉じ込めて置こうと思います。
___________________
異世界オメガバース、受け視点では異世界感ほとんど出ません(多分)
わりかし感想お待ちしてます。誰が好きとか
現在体調不良により休止中 2021/9月20日
最新話更新 2022/12月27日
侯爵令息セドリックの憂鬱な日
めちゅう
BL
第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける———
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。
俺は北国の王子の失脚を狙う悪の側近に転生したらしいが、寒いのは苦手なのでトンズラします
椿谷あずる
BL
ここはとある北の国。綺麗な金髪碧眼のイケメン王子様の側近に転生した俺は、どうやら彼を失脚させようと陰謀を張り巡らせていたらしい……。いやいや一切興味がないし!寒いところ嫌いだし!よし、やめよう!
こうして俺は逃亡することに決めた。
主人公は俺狙い?!
suzu
BL
生まれた時から前世の記憶が朧げにある公爵令息、アイオライト=オブシディアン。
容姿は美麗、頭脳も完璧、気遣いもできる、ただ人への態度が冷たい冷血なイメージだったため彼は「細雪な貴公子」そう呼ばれた。氷のように硬いイメージはないが水のように優しいイメージもない。
だが、アイオライトはそんなイメージとは反対に単純で鈍かったり焦ってきつい言葉を言ってしまう。
朧げであるがために時間が経つと記憶はほとんど無くなっていた。
15歳になると学園に通うのがこの世界の義務。
学園で「インカローズ」を見た時、主人公(?!)と直感で感じた。
彼は、白銀の髪に淡いピンク色の瞳を持つ愛らしい容姿をしており、BLゲームとかの主人公みたいだと、そう考える他なかった。
そして自分も攻略対象や悪役なのではないかと考えた。地位も高いし、色々凄いところがあるし、見た目も黒髪と青紫の瞳を持っていて整っているし、
面倒事、それもBL(多分)とか無理!!
そう考え近づかないようにしていた。
そんなアイオライトだったがインカローズや絶対攻略対象だろっ、という人と嫌でも鉢合わせしてしまう。
ハプニングだらけの学園生活!
BL作品中の可愛い主人公×ハチャメチャ悪役令息
※文章うるさいです
※背後注意
無自覚美少年のチート劇~ぼくってそんなにスゴいんですか??~
白ねこ
BL
ぼくはクラスメイトにも、先生にも、親にも嫌われていて、暴言や暴力は当たり前、ご飯もろくに与えられない日々を過ごしていた。
そんなぼくは気づいたら神さま(仮)の部屋にいて、呆気なく死んでしまったことを告げられる。そして、どういうわけかその神さま(仮)から異世界転生をしないかと提案をされて―――!?
前世は嫌われもの。今世は愛されもの。
自己評価が低すぎる無自覚チート美少年、爆誕!!!
****************
というようなものを書こうと思っています。
初めて書くので誤字脱字はもちろんのこと、文章構成ミスや設定崩壊など、至らぬ点がありすぎると思いますがその都度指摘していただけると幸いです。
暇なときにちょっと書く程度の不定期更新となりますので、更新速度は物凄く遅いと思います。予めご了承ください。
なんの予告もなしに突然連載休止になってしまうかもしれません。
この物語はBL作品となっておりますので、そういうことが苦手な方は本作はおすすめいたしません。
R15は保険です。
優等生の弟に引きこもりのダメ兄の俺が毎日レイプされている
匿名希望ショタ
BL
優等生の弟に引きこもりのダメ兄が毎日レイプされる。
いじめで引きこもりになってしまった兄は義父の海外出張により弟とマンションで二人暮しを始めることになる。中学1年生から3年外に触れてなかった兄は外の変化に驚きつつも弟との二人暮しが平和に進んでいく...はずだった。
悪役令息に転生したけど…俺…嫌われすぎ?
「ARIA」
BL
階段から落ちた衝撃であっけなく死んでしまった主人公はとある乙女ゲームの悪役令息に転生したが...主人公は乙女ゲームの家族から甘やかされて育ったというのを無視して存在を抹消されていた。
王道じゃないですけど王道です(何言ってんだ?)どちらかと言うとファンタジー寄り
更新頻度=適当
カランコエの咲く所で
mahiro
BL
先生から大事な一人息子を託されたイブは、何故出来損ないの俺に大切な子供を託したのかと考える。
しかし、考えたところで答えが出るわけがなく、兎に角子供を連れて逃げることにした。
次の瞬間、背中に衝撃を受けそのまま亡くなってしまう。
それから、五年が経過しまたこの地に生まれ変わることができた。
だが、生まれ変わってすぐに森の中に捨てられてしまった。
そんなとき、たまたま通りかかった人物があの時最後まで守ることの出来なかった子供だったのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる