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第一章

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「うーん。」
「……。」

 上の階から順に女性が好きそうなものを見ていたけれども、僕もひょうちゃんもピンとくるものがなくて、難航していた。

「御神くんは、いいのあった?」

 ゆるゆると首を振るひょうちゃんに僕は苦笑する。

「そっかー。」

 僕たちは今近くにあったカフェで一休みをしている。
 時間的にお昼にしてもよかったのだけども、どこのお店も人が多いうえに、何を食べたいかも決まっていなかったので、ひとまず、休憩する事にしたのだった。

「これからどうしようか?」
「……。」

 お昼にするか。
 まだ探すか。

「うーん。」

 案内図の書かれたパンフレットと睨めっこをしながら唸っていると、ひょうちゃんがポツリと言う。

「昼食が後でもいいのなら、先にお前の見たかったクラなんとかを見ればいいじゃないか?」
「クラフトショップ?」
「ああ。」

 ひょうちゃんは頷くと自分のコーヒーを飲む。

「御神くんさえよければそうしようかな?」
「それじゃ、これを飲み終わったら行くか。」
「そうだね。」

 僕は頼んでいたカフェオレを飲み干すために口を付ける。

「……なあ。」
「何かな?」
「その装飾品とかお前が作ったのか?」

 ひょうちゃんは僕の手首に巻かれた組みひもを指さす。

「ああ、うん、そうだよ。」

 母さんが一時期嵌っており、僕もいそいそと作った一つだった。

「ふーん。」
「もし、よかったら御神くんの分も作ろうか?」
「……。」

 興味があるのか、見た目では分からないけれども、雰囲気で読み取れた。
 もし、ひょうちゃんの頭に動物の耳が生えていたらピンと立っている事だろう。

「どんなのがいい?」
「……お前の好きな色でいい。」
「……。」

 ひょうちゃんの言葉に僕は頬を引きつらせる。

 うん、責任重大だ。

 組みひもの模様だって多様にあるし、色だって色んな糸があるので色んな風にできる。

 困ったな。

 それに、ひょうちゃんに合う色にしたい。

 ピンクとかは似合うかもしれないけど、ひょうちゃんらしくないからダメだし。

 かといって、渋すぎるのも駄目だ。

 僕は必死で自分の手持ちの糸とひょうちゃんに合う色を考えるが、難しかった。

「で、出来たら、今度持ってくるね。」
「ああ。」

 嗚呼、楽しみにしているのがヒシヒシと伝わる…。

 僕はこっそりとため息を零した。

 どうしよう、黒。

 いいかもしれない……。

 シックで行くか。

 でも、ちょっと責めた色合いでもいいよな。

 僕はこちらの事で頭がいっぱいになっていた為、いつの間にかカフェオレを全て飲み切っていたのだけど、ひょうちゃんに指摘されるまで気づかなかった。

 本当に情けない…。
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