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第一章
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僕は取り敢えず飲み物を頼んでから二人の待つ席に向かった。
「遅くなってごめんね。」
「ううん、タダで入れてくれた人がピンチだったらしょうがないよ。」
「ごめんなさいね、それなのに勝手に出てきて、ちゃんと展示とか見れた?」
「うん、凄かったよね。」
僕は嘘を吐いた。
展示なんて全く見ていない。
七割は僕の作品、研究内容などなどが展示されているし、二割はもうすでに見せてもらったり共同開発したものとかもある。
残り一割は正直僕の概念と外れてしまう。
固有の能力の底上げのアイテム開発だから。
僕は自分が使うのを重視しているのでどうしても万人向けに考えてしまう。
万人向けにするからそれを敵視する人がいなくはない。
睨まれ。
疎まれ。
それでも、僕は僕の為にやるしかないのだから。
そして、ふっと思った。
もしかして、林くんのバイオレット嫌いは固有の能力を生かすアイテムづくりをする人が身近にいたのかもしれない。
僕は一瞬にして林くんの身内で該当する人物を幾人かピックアップする。
「ええ、凄かったわ、特にシュウ兄さんの作品は一番ね。」
「シュウ兄さん?」
嫌な予感がした。
「あっ、空野くんは知らないのよね、宮野(みやの)秀太郎(しゅうたろう)さん『技術者』でシュウと名乗っているわ。」
やっぱりと、僕は頭を抱えたくなる。
固有の能力重視者代表、その人だった。
確かに身近に固有能力重視者が居れば僕のアイテムが受け入れられるはずがなかったのだ。
彼らにしたら僕、バイオレットは泥棒だから。
彼らにしたら僕は自分たちが必死で見つけた独自のコードを勝手に紐解き、そして、独自に作り替えた犯罪者。
決死って許されるべき存在じゃないと唱えているくらいだ。
僕としては色々話したいと思った時期もあったのだが、あんなにもあからさまに無視などをされれば関わりたくないと思うのは自然だと思いたい。
「でも、シュウ兄さんの作品が少なくて残念、何であんな人の作品ばっかりなのかしら。」
「あはは…。」
僕は乾いた笑いしか出ない。
「一平、そんなこと言ったらあんまりよくないよ。」
「でも。」
「……わたしもシュウさんの作品はすごいと思った、だけど、空野くんはシュウさんのアイテムはどうやっても使えないんだよね。」
「それは…。」
何とも言えない顔をする林くんに僕はこの話を止めようと思った。
だけど、それは少し遅かったのかもしれない。
「それに、一昨日、シュウさんに空野くんが使えるようなアイテムがないか聞いたの。」
「メグ?」
少しくらい顔をする藤井さんに林くんは訝しみ。
僕は彼がなんて言ったのか理解した。
「藤井さん、僕は自分で開発するから大丈夫だよ。」
「………ごめん…勝手だったよね。」
「ううん、藤井さんの気持ちは嬉しいよ。」
「…もしかして、シュウ兄さん断ったの?」
信じられないという顔をする林くんに藤井さんは唇を噛む。
「うん。」
「嘘よ、シュウ兄さんはそんな事を言うはずがないわっ!」
「でも…。」
「ちょっと待って、聞いてみるから。」
林くんの言葉に僕も藤井さんも慌てる。
「一平っ!」
「林くん、駄目だ。」
だけど、それは遅く、林くんは彼に電話をしてしまった。
僕はこれから林くんが言われる言葉も、藤井さんが言われた言葉もどちらも彼らの心に傷を残さないように祈る事しか出来なかった。
「遅くなってごめんね。」
「ううん、タダで入れてくれた人がピンチだったらしょうがないよ。」
「ごめんなさいね、それなのに勝手に出てきて、ちゃんと展示とか見れた?」
「うん、凄かったよね。」
僕は嘘を吐いた。
展示なんて全く見ていない。
七割は僕の作品、研究内容などなどが展示されているし、二割はもうすでに見せてもらったり共同開発したものとかもある。
残り一割は正直僕の概念と外れてしまう。
固有の能力の底上げのアイテム開発だから。
僕は自分が使うのを重視しているのでどうしても万人向けに考えてしまう。
万人向けにするからそれを敵視する人がいなくはない。
睨まれ。
疎まれ。
それでも、僕は僕の為にやるしかないのだから。
そして、ふっと思った。
もしかして、林くんのバイオレット嫌いは固有の能力を生かすアイテムづくりをする人が身近にいたのかもしれない。
僕は一瞬にして林くんの身内で該当する人物を幾人かピックアップする。
「ええ、凄かったわ、特にシュウ兄さんの作品は一番ね。」
「シュウ兄さん?」
嫌な予感がした。
「あっ、空野くんは知らないのよね、宮野(みやの)秀太郎(しゅうたろう)さん『技術者』でシュウと名乗っているわ。」
やっぱりと、僕は頭を抱えたくなる。
固有の能力重視者代表、その人だった。
確かに身近に固有能力重視者が居れば僕のアイテムが受け入れられるはずがなかったのだ。
彼らにしたら僕、バイオレットは泥棒だから。
彼らにしたら僕は自分たちが必死で見つけた独自のコードを勝手に紐解き、そして、独自に作り替えた犯罪者。
決死って許されるべき存在じゃないと唱えているくらいだ。
僕としては色々話したいと思った時期もあったのだが、あんなにもあからさまに無視などをされれば関わりたくないと思うのは自然だと思いたい。
「でも、シュウ兄さんの作品が少なくて残念、何であんな人の作品ばっかりなのかしら。」
「あはは…。」
僕は乾いた笑いしか出ない。
「一平、そんなこと言ったらあんまりよくないよ。」
「でも。」
「……わたしもシュウさんの作品はすごいと思った、だけど、空野くんはシュウさんのアイテムはどうやっても使えないんだよね。」
「それは…。」
何とも言えない顔をする林くんに僕はこの話を止めようと思った。
だけど、それは少し遅かったのかもしれない。
「それに、一昨日、シュウさんに空野くんが使えるようなアイテムがないか聞いたの。」
「メグ?」
少しくらい顔をする藤井さんに林くんは訝しみ。
僕は彼がなんて言ったのか理解した。
「藤井さん、僕は自分で開発するから大丈夫だよ。」
「………ごめん…勝手だったよね。」
「ううん、藤井さんの気持ちは嬉しいよ。」
「…もしかして、シュウ兄さん断ったの?」
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「うん。」
「嘘よ、シュウ兄さんはそんな事を言うはずがないわっ!」
「でも…。」
「ちょっと待って、聞いてみるから。」
林くんの言葉に僕も藤井さんも慌てる。
「一平っ!」
「林くん、駄目だ。」
だけど、それは遅く、林くんは彼に電話をしてしまった。
僕はこれから林くんが言われる言葉も、藤井さんが言われた言葉もどちらも彼らの心に傷を残さないように祈る事しか出来なかった。
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