僕がサポーターになった理由

第一章

４６

　僕は家の庭に出ると、拳を突き出す。

　思い出すのは幼い頃の記憶。

『すごい、すごいよ、ひょうちゃんっ！』

　幼い僕はひょうちゃんが操る様々な能力にいつも感動していた。

　優しい彼はいつも僕の期待に応えてくれた。

　そして、僕はその頃の彼が操れる範囲を知っている。

　風の刃ならば六つは可能だ。

　だけど、今日出したのは五つ。

　セーブしたとしても、可笑しい。

　それに、コントロールだって、あの頃に比べたら甘かった。

　一体彼に何があったのか。

　それは僕を覚えていない事に繋がるのか。

　はじめは考えすぎなのではなのかと思った、でも、今日戦って見て、違和感は深まるばかりだ。

　でも、もし、記憶喪失が原因だとしたらどうするべきだ。

　思い出させる？

　いいのか？

　彼は忘れたかったのかもしれない。

　それはお節介にしかならない。

　でも、僕は思い出してほしい。

　あの頃の優しかったひょうちゃんに会いたい。

　でも、それは僕のエゴ。

　どうする。

　どうする。

「……取り敢えず、記憶喪失関連の資料を集めるか。」

　役に立つか、立たないかは分からないけど、僕の出来る事をしようと、考える。

　そして、気づいたら、また庭の土が抉れていた。

「うん、お母さんに怒られるな…。」

　前科持ちの僕はもう手遅れだと思っていながらも、一応は土を慣らしたのだった。

　案の定、翌朝僕の朝食と昼食には僕の苦手な食材ばかりが使われた料理が並んでいたのだった。