28 / 125
第一章
26
しおりを挟む
「いてて……。」
脇腹を押さえ、若干涙目になっている婚約者さんに鈴蘭さんはニッコリと微笑んでいる。
「大丈夫?」
「……何とか。」
苦笑する婚約者さんに僕は意外だと思う。
てっきり僕はこの婚約者さんは鈴蘭さんのこういう一面を知らないものだと思っていた、でも、彼の反応を見ればそんな事はなさそうだ。
「ははは、お前の嫁さんつえーな。」
「ええ、鈴蘭は本当にすごいですよ。」
福井さんの言葉に婚約者さんは頷いた。その表情に嫉妬など負の感情はなかった。
「まあ、お前はあの腕っぷしに惚れたたまだからな。」
「ええ、やはり、彼女には勝てませんでした。」
桜井さんと婚約者さんの話を聞いていた今井さんは苦笑しながら話に割り込む。
「おれたちだって辛うじて勝てる程度だからね。」
「ああ、そうだな。」
今井さんの言葉に土井さんは静かに頷く。
「あのさ、次お母様の番なんだけど。」
ちょっと不機嫌そうな鈴蘭さんに四井さんはサッと非難する。
「えっと、鈴蘭?」
「ねえ、もう少し耐えてよ。」
「ご、ごめん。」
「やっと会得したワザとか試しかったし。」
「うーん…。」
僕はそっと彼らから離れる。
「頑丈そうな方で良かったわ。」
「んっ!」
後ろから聞こえた小百合さんの声に僕は思わず体を強張らせる。
「い、いつの間に。」
「今よ。」
「ははは…。」
僕もまだまだだな、と苦笑するしかない。
「それにしても、あのおてんばの鈴蘭さんにあのような方ができてよかったわ。」
「そうですね。」
「正直言えば、本性がばれて破局でもしたらどうしようかと本気で心配していたのだけど、良かったわ。」
「ははは。」
小百合さんの言葉に僕は乾いた笑いしか出来ない。
「まあ、次の試合は見なくても大丈夫ですし、お茶でも持ってきますか。」
「えっ?」
小百合さんの言葉に僕は目を丸くする。
「見ないんですか?」
「ええ、残念ながら蘭さんは負けるわ。」
「えっ…。」
小百合さんは不吉な言葉だけを残しその場から立ち去ってしまった。
「何で?」
僕は呆然としたが、すぐに二戦目が始まろうとしていた。
脇腹を押さえ、若干涙目になっている婚約者さんに鈴蘭さんはニッコリと微笑んでいる。
「大丈夫?」
「……何とか。」
苦笑する婚約者さんに僕は意外だと思う。
てっきり僕はこの婚約者さんは鈴蘭さんのこういう一面を知らないものだと思っていた、でも、彼の反応を見ればそんな事はなさそうだ。
「ははは、お前の嫁さんつえーな。」
「ええ、鈴蘭は本当にすごいですよ。」
福井さんの言葉に婚約者さんは頷いた。その表情に嫉妬など負の感情はなかった。
「まあ、お前はあの腕っぷしに惚れたたまだからな。」
「ええ、やはり、彼女には勝てませんでした。」
桜井さんと婚約者さんの話を聞いていた今井さんは苦笑しながら話に割り込む。
「おれたちだって辛うじて勝てる程度だからね。」
「ああ、そうだな。」
今井さんの言葉に土井さんは静かに頷く。
「あのさ、次お母様の番なんだけど。」
ちょっと不機嫌そうな鈴蘭さんに四井さんはサッと非難する。
「えっと、鈴蘭?」
「ねえ、もう少し耐えてよ。」
「ご、ごめん。」
「やっと会得したワザとか試しかったし。」
「うーん…。」
僕はそっと彼らから離れる。
「頑丈そうな方で良かったわ。」
「んっ!」
後ろから聞こえた小百合さんの声に僕は思わず体を強張らせる。
「い、いつの間に。」
「今よ。」
「ははは…。」
僕もまだまだだな、と苦笑するしかない。
「それにしても、あのおてんばの鈴蘭さんにあのような方ができてよかったわ。」
「そうですね。」
「正直言えば、本性がばれて破局でもしたらどうしようかと本気で心配していたのだけど、良かったわ。」
「ははは。」
小百合さんの言葉に僕は乾いた笑いしか出来ない。
「まあ、次の試合は見なくても大丈夫ですし、お茶でも持ってきますか。」
「えっ?」
小百合さんの言葉に僕は目を丸くする。
「見ないんですか?」
「ええ、残念ながら蘭さんは負けるわ。」
「えっ…。」
小百合さんは不吉な言葉だけを残しその場から立ち去ってしまった。
「何で?」
僕は呆然としたが、すぐに二戦目が始まろうとしていた。
0
お気に入りに追加
170
あなたにおすすめの小説
弟枠でも一番近くにいられるならまあいいか……なんて思っていた時期もありました
大森deばふ
BL
ユランは、幼馴染みのエイダールが小さい頃から大好き。 保護者気分のエイダール(六歳年上)に彼の恋心は届くのか。
基本は思い込み空回り系コメディ。
他の男にかっ攫われそうになったり、事件に巻き込まれたりしつつ、のろのろと愛を育んで……濃密なあれやこれやは、行間を読むしか。←
魔法ありのゆるゆる異世界、設定も勿論ゆるゆる。
長くなったので短編から長編に表示変更、R18は行方をくらましたのでR15に。
主人公の兄になったなんて知らない
さつき
BL
レインは知らない弟があるゲームの主人公だったという事を
レインは知らないゲームでは自分が登場しなかった事を
レインは知らない自分が神に愛されている事を
表紙イラストは マサキさんの「キミの世界メーカー」で作成してお借りしています⬇ https://picrew.me/image_maker/54346
王子妃だった記憶はもう消えました。
cyaru
恋愛
記憶を失った第二王子妃シルヴェーヌ。シルヴェーヌに寄り添う騎士クロヴィス。
元々は王太子であるセレスタンの婚約者だったにも関わらず、嫁いだのは第二王子ディオンの元だった。
実家の公爵家にも疎まれ、夫となった第二王子ディオンには愛する人がいる。
記憶が戻っても自分に居場所はあるのだろうかと悩むシルヴェーヌだった。
記憶を取り戻そうと動き始めたシルヴェーヌを支えるものと、邪魔するものが居る。
記憶が戻った時、それは、それまでの日常が崩れる時だった。
★1話目の文末に時間的流れの追記をしました(7月26日)
●ゆっくりめの更新です(ちょっと本業とダブルヘッダーなので)
●ルビ多め。鬱陶しく感じる方もいるかも知れませんがご了承ください。
敢えて常用漢字などの読み方を変えている部分もあります。
●作中の通貨単位はケラ。1ケラ=1円くらいの感じです。
♡注意事項~この話を読む前に~♡
※異世界の創作話です。時代設定、史実に基づいた話ではありません。リアルな世界の常識と混同されないようお願いします。
※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。
※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義です。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。登場人物、場所全て架空です。
※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
もう一度、貴方に出会えたなら。今度こそ、共に生きてもらえませんか。
天海みつき
BL
何気なく母が買ってきた、安物のペットボトルの紅茶。何故か湧き上がる嫌悪感に疑問を持ちつつもグラスに注がれる琥珀色の液体を眺め、安っぽい香りに違和感を覚えて、それでも抑えきれない好奇心に負けて口に含んで人工的な甘みを感じた瞬間。大量に流れ込んできた、人ひとり分の短くも壮絶な人生の記憶に押しつぶされて意識を失うなんて、思いもしなかった――。
自作「貴方の事を心から愛していました。ありがとう。」のIFストーリー、もしも二人が生まれ変わったらという設定。平和になった世界で、戸惑う僕と、それでも僕を求める彼の出会いから手を取り合うまでの穏やかなお話。
愛などもう求めない
白兪
BL
とある国の皇子、ヴェリテは長い長い夢を見た。夢ではヴェリテは偽物の皇子だと罪にかけられてしまう。情を交わした婚約者は真の皇子であるファクティスの側につき、兄は睨みつけてくる。そして、とうとう父親である皇帝は処刑を命じた。
「僕のことを1度でも愛してくれたことはありましたか?」
「お前のことを一度も息子だと思ったことはない。」
目が覚め、現実に戻ったヴェリテは安心するが、本当にただの夢だったのだろうか?もし予知夢だとしたら、今すぐここから逃げなくては。
本当に自分を愛してくれる人と生きたい。
ヴェリテの切実な願いが周りを変えていく。
ハッピーエンド大好きなので、絶対に主人公は幸せに終わらせたいです。
最後まで読んでいただけると嬉しいです。
【完結】キミの記憶が戻るまで
ゆあ
BL
付き合って2年、新店オープンの準備が終われば一緒に住もうって約束していた彼が、階段から転落したと連絡を受けた
慌てて戻って来て、病院に駆け付けたものの、彼から言われたのは「あの、どなた様ですか?」という他人行儀な言葉で…
しかも、彼の恋人は自分ではない知らない可愛い人だと言われてしまい…
※side-朝陽とside-琥太郎はどちらから読んで頂いても大丈夫です。
朝陽-1→琥太郎-1→朝陽-2
朝陽-1→2→3
など、お好きに読んでください。
おすすめは相互に読む方です
無自覚美少年のチート劇~ぼくってそんなにスゴいんですか??~
白ねこ
BL
ぼくはクラスメイトにも、先生にも、親にも嫌われていて、暴言や暴力は当たり前、ご飯もろくに与えられない日々を過ごしていた。
そんなぼくは気づいたら神さま(仮)の部屋にいて、呆気なく死んでしまったことを告げられる。そして、どういうわけかその神さま(仮)から異世界転生をしないかと提案をされて―――!?
前世は嫌われもの。今世は愛されもの。
自己評価が低すぎる無自覚チート美少年、爆誕!!!
****************
というようなものを書こうと思っています。
初めて書くので誤字脱字はもちろんのこと、文章構成ミスや設定崩壊など、至らぬ点がありすぎると思いますがその都度指摘していただけると幸いです。
暇なときにちょっと書く程度の不定期更新となりますので、更新速度は物凄く遅いと思います。予めご了承ください。
なんの予告もなしに突然連載休止になってしまうかもしれません。
この物語はBL作品となっておりますので、そういうことが苦手な方は本作はおすすめいたしません。
R15は保険です。
記憶の欠けたオメガがヤンデレ溺愛王子に堕ちるまで
橘 木葉
BL
ある日事故で一部記憶がかけてしまったミシェル。
婚約者はとても優しいのに体は怖がっているのは何故だろう、、
不思議に思いながらも婚約者の溺愛に溺れていく。
---
記憶喪失を機に愛が重すぎて失敗した関係を作り直そうとする婚約者フェルナンドが奮闘!
次は行き過ぎないぞ!と意気込み、ヤンデレバレを対策。
---
記憶は戻りますが、パッピーエンドです!
⚠︎固定カプです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる