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第一章

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「……。」
「えっと…。」

 第一試合目先鋒は鈴蘭さんと彼女の婚約者さんだった。

「いくら貴方でも、容赦しませんから。」
「いや、ちょっと待て、その目本気だよね。」
「ええ、勿論よ。」

 舌なめずりをして獲物を見据える鈴蘭さんは完全にその眼が野生の獣そのものだった。

「……うむ。」

 審判をする師範は若干戸惑っているが、残念ながら表情には出ていない。

「そろそろいいか?」
「おじいさま、大丈夫ですよ。」
「は、はい。」
「両者、構え。」

 婚約者さんの得物は木刀、そして、鈴蘭さんは素手だった。

「……始めっ!」

 師範が手を振り下げた瞬間、先に動いたのは婚約者さんだった。
 彼は竹刀を振り下ろし、鈴蘭さんの真正面を狙うが、彼女は最低限の動きで避け、そしてーー。

「金剛流 三の型 小夜嵐っ!」

 鋭い拳が婚約者さんの腹に決まる。

 もし、これが普通の拳だったら、多少ふらつくだけで済んだだろう、しかし、これは列記とした師範が生み出した技だった。
 だから、婚約者さんは後ろに吹っ飛び、壁に激突した。

「ぐ……。」
「呆気なかったわね。」

 鈴蘭さんは髪を払い不敵に笑う。

「さ、流石…。」
「国光さんのお孫さん。」
「いや、小百合さんのお孫さん。」
「いやいや、蘭さんのお子さんだぞ。」
「……。」

 僕は今井さん、福井さん、桜井さん、土井さん通称、「四井」さんに冷めた目を向ける。

「まずは一勝、お母様頑張ってくださいね。」
「そうね、この子の出番はあるのかしらね。」

 蘭さんは挑発するように敵方を見た。

 男は動揺する事無く、ハイエナに似た男に対し顎で指示する。

 どうやら、次の相手は彼のようだった。
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